クーデターの結果


 クセーニャが気がついたとき、辺りは瓦礫と化していて、侍従武官たちが、銃撃戦を行っているのがわかります。

 母は倒れた柱の下敷きになり、息絶えていました。


 ……クーデター?……

 そう思ったとき、初めてクセーニャを呼ぶ声に気がつきました。

 振り向くとエカテリーナ皇后です。

 腹部から血が流れています。


「クセーニャ!何をしているの!早く逃げなさい!これは陸軍のクーデターよ!」

 

「エカテリーナ様をおいてはいけません!母も死にました、ご一緒いたします!」


 ため息をついたエカテリーナ皇后でしたが、

「とにかくここにいてはいけない、手を貸して」

「動いてはお体に!」

「そんなに動けないわ、でもそこの倉庫ならいける……いいからいきますよ」


 クセーニャの手を借りて、はいずるように倉庫に隠れると、

「悪いけど、ここまでの床についている血をぬぐってきて」

 クセーニャがいわれたようにぬぐってくると、廊下で声がしました。


「ニコライ四世陛下の死亡を確認しました!抵抗していた皇太子も、侍従武官たちとともに射殺いたしました」

「後はエカテリーナ皇后とナスターシャ大公女だ、さがせ!射殺してもかまわぬ!」


「クセーニャ、こっちよ、この奥に隠し部屋があるのよ、このロッカーの左の下が通路なのよ」

 人が一人、はいずって通れるほどの大きさの扉が、五列五段に並んでいました。


 ロッカーを潜り抜けると、八平方メートルほどの空間があります。

 血を拭きながらクセーニャが入ってくると、

「まだよ!」


 エカテリーナ皇后は奥の壁を複雑にたたきますと、壁が後退し、側面に鋼鉄製のドアが現れ開かれました。

 中にはささやかな照明がついているようです。


「入るのよ!はやく!」

 中に入り、いわれるままに扉のスイッチを押しますと、扉が閉まっていきました。


「とにかくこれで一安心……」

 どうやらここは皇帝一家のシェルターのようです。

 このあと、クセーニャは必死にエカテリーナ皇后を看病しながら一日を過ごし、ミコに助けられたのです。

 

 とりあえず、生き残りの一行はアイスランド・レイキャネースのナーキッドタウンに案内され、ほっと落ち着いたころです。


 クセーニャは、ナスターシャ大公女より、抱きしめられながら、感謝の言葉を受けました。

 

「ありがとう、貴女も肉親をなくしたというのに、母を助けていただいて……アタエフ伯爵家の貢献に対して、何も差し上げられないけど、私たちは感謝しております、これからいろいろとありますが、時々は会ってくださいね」


「大公女殿下、私も天涯孤独となりました、できますればお側近くに仕えたいと思います」


「ねぇ、クセーニャさん、私は今晩、ミコ様の女奴隷になるの、裸でミコ様のおみ足を舐めるような身分の女なのよ、勿論、この体も捧げることになるわ、そんな女に仕えるなんて事はできないのよ」

 

「なら、私もミコ様の女奴隷になります、裸でミコ様のおみ足を舐めます、勿論、この体も捧げます、同じ境遇に落ちれば、お仕えすることも可能でしょう」


 案外に頑固で一途なクセーニャ、結局、エカテリーナ皇后がミコさんに抱いてやってくれと、お願いする始末となり、とりあえずナスターシャ大公女付の女官として、采女のリングを授かったのです。


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