ロシアとの秘密協定
故国であるロシア帝国と中国の戦争を、クセーニャはオストプロイセンのケーニッヒベルクで知りました。
帝国が中国の主要都市を先制核攻撃、報復に中国はシベリアの都市を、核を搭載した航空機で爆撃、満州及びシベリアで両国の戦争は激烈を極め、人の住めなくなったシベリアから、帝国は戦略的撤退を始めたのです。
大部分はウラルのヨーロッパ側へ、そして一部はカムチャッカへと。
クーデター後の後始末として、オストプロイセン譲渡のときに、秘密協定が結ばれており、ロシアとナーキッドはある程度のチャンネルがあるのです。
ロシアは献上品を出すことによって、要請することができるようになっています。
その最たるものが、エボラ出血熱に対するワクチンの提供です。
そのときの極上の十二名の献上品が、清女としてナスターシャ大公女に預けられており、その世話係りとして、クセーニャが指名されているのです。
十二名の妹分を預かったようなものです。
中露核戦争の結果、ヨーロッパに放射能汚染の危機が迫っていましたが、なんとかナーキッドが設置した、空気浄化システムがウラルあたりで、これを食い止めています。
ナーキッド・オーナーとニコライ四世の最後の会談による結果を踏まえて、オーナーの指示により、最低限の空気浄化システムが設置されたのです。
しかし他の協定国のように、国土全域に設置されているわけではありません。
ロシア帝国が、危機的状況にあるのは間違いないのです。
「クセーニャ様、ロシアはどうなるのでしょうか……」
新しい清女さんたちが、不安そうに聞いてきました。
極上の献上品とは、元スモーリヌイ女学院の生徒たち。
学費が払えなくなった貴族の子女が、毎年幾人か出ますが、その中から美貌を条件に選別し、本人承諾を確認して、帝国政府が負債を一切支払い、献上してきた娘さんたちなのです。
「そうね、私にも分からないわ、でもね、皆さんは今はロシア帝国の臣民ではないのよ、オストプロイセンの国民なのよ、これだけは間違えないでね」
「それは分かっておりますが、スモーリヌイは、お友達はどうなるのかと心配です」
そんな会話が交わされ、そして幾日かが過ぎていきます。
そしてある日、エカテリーナ皇后がマスコミのインタビューを受けました。
密かに噂になっていた、オーナーの我妹子(わぎもこ)になっていた事を、エカテリーナ皇后が認め、オーナー自身が報道陣の質問に答えたのです。
内容は衝撃的でした。
テラは五十六年後に巨大な小惑星がぶつかる……
それは確認され、さらにはオーナーの約束通り、九月最後の日に小惑星は消えたのです。
その後も、抗ボルバキア薬の配布受け入れ問題で、ロシア帝国は受け入れを表明、明らかにナーキッド協定国に、準ずる扱いを受けています。
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