「神様だけが見ていない」綾繁

 黒人:怪しいサークル、新興宗教、怪しい先輩、怪しい集落……とホラーアイコンの使い方は満点ですし、シチュエーションの描写にも長けているので大変臨場感があってよかったです。

「目」が怖い作品で三津田信三先生の「のぞきめ」を思い出したのですが、それとはまた違ったテイストのホラーでした。お風呂場のシーンがかなり好きです。

 章の並び替えなどのギミックも働いていて良かったのですが、少し説明不足は否めません。主人公の親友がひとつひとつ怪しげな教義を読み解いていくところで(こちらの心の)盛り上がりが最高になるんですけど、そこから特に詳しい事象の解説がなく取り残されてしまいます。謎は謎のまま、も美しいは美しいんですけど……多分これ、5〜6万字使った中編だとかなり面白いと思います、そういう意味で惜しいです。続きどこなの?って感じなので。


人外:そのボックス席、僕も滅茶苦茶見覚えあるんですが! そのボックス席! 僕も大学の頃に使った記憶あるんですが! まったくカルトサークルに気をつけろって大学の掲示板にもあるのに!

 それはさておき作品としては少しあらさが目立ちましたが、筋は通っていて良いと思います。素直に1~6で話を並べてしまってよかったかと思います。それと、主人公自身の意識の変容を丁寧に書いてそれへの抵抗も交えながら解説担当霊能者なり実はオカルトに詳しい友人の詳細な解説パートを入れて#10くらいまで書いておくととてもいい作品になったと思います。今後も楽しみにしています。


巨乳:綾繁さんのカクヨム初投稿作品!

 わざと(でいいんですよね?)核心をついた内容の2話を後出しすることで情報を整理しつつ余韻を持たせようとする構成は個人的には面白いなーと思いました。

 謎の宗教、ちぐはぐな教義、村の人達の謎の風習…と謎が謎のままなのはホラーの醍醐味なのですが、示唆だけされて放り投げられてしまう感がちょっと強いのかもしれないな…と感じます。

 作者の思っていることの半分くらいしか読者には伝わらないと想定しながらもう少しどれか一つの要素を掘り下げるともっと物語への没入感が深くなって怖くて不気味さが際立つかもしれないなと思いました。

 サークルの前田さんと佐伯さんの不気味さや気持ち悪さ、選ばれた主人公の描写などに引き込まれたので、狂人が登場するどんどんお話を書いてほしいです

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