「ちるだ」狐

黒人:現在流行りのジャンルである事故物件もの。

 霊能者が出て来たので嫌な予感がしたんですけど杞憂でした。(というのも霊能者が出てくる現代が舞台のホラーって、相当うまく処理しないと妖怪絵巻てきな、アクションアドベンチャー色が強くなってしまいがちなので)

 文体がポップなのと霊能者の関西弁も相まって「これ怖くないのでは」と先入観持って読んでしまったんですけど、ちゃんと怖かったです。

 怪異の原因分かった!強い霊能者が解決して終わり!ではなく、かなり後味が悪いし結局どうなったのか、主人公の頭がおかしいだけなのか、とか様々な解釈ができるラストで良かったです。


人外:おっいいねえ! 霊能力者! やっぱ霊能力者出てからが勝負だよね! オチも良い! 拡散する怪異! 名付けによってどんどこ増えている!

 これあれですね。SNSによる拡散でちるだ様軍団ができちゃったせいで霊能者がやられちゃったのでは? そう考えると電子戦への霊能者の対応が急務ですよね。

 これは完成度高いホラーでした。あえて難しいこと言うと、何か一つ独自色を出したり、深めたりできるとさらに輝くと思います。

 どれが自分の独自色になるかはわからないのですが、試しにやってみてほしいです。


巨乳:都市伝説的なお話。

 第十回本物川小説大賞のときのポストアポカリプス探索ものを読んだときも思ったのですが、話の盛り上げ方がとてもうまい作者さんですよね。

 今回はホラー!ということで、やはり一筋縄はいきません。

 自殺した友達と自分にだけ見える謎の神様…。なんとかならないかと不安になっていた時に出会えた胡散臭い霊能力者…エンタメ度は抜群で「このまま助かってくれるのもいいのでは」と思いました。

 僕はとても単純なので作者さんがほった穴にわかっていてもハマりに行く癖があるのですが(わかってないでハマることがほとんどです)、やっぱりねー!(褒めてる)

 わかっていても、怖いとか、わかっていても盛り上がれるという展開が上手だと思います。

 最後の不穏な終わり方もホラー映画や世にも奇妙な物語にありそうですごく好きでした。

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