芦花公園ホラー賞講評

「つぎは あなたの もとに」ももも

　黒人：ネットの怖い話ですね。

　洒落怖（旧2ch）の良作といった感じの作品です。

　作中にも出てくるけれど「リング」の媒体を現代的にしたという感じで、ツイッターを介して振りまかれる呪いの話です。呪い自体は言及されているようにちょっと陳腐であんまり怖くない。

　真に怖いのは顔の見えない相手に対して人間はどこまで残酷になれるのか、みたいな話ですね。

　今回は字数がシビアなので仕方ない部分もあるんでしょうけど、主人公とその友人、さらにフォロワーの人物描写をもう少し掘り下げて書ければより良くなったのではないかと思います。字数上限まで使ったドロドロ青春ストーリーが見たいです。

　余談ですが映画「アンフレンデッド」は媒体がFBなんですけど題材が似ているので、視聴をお勧めします。

人外：そうそうこういうのが見たかったんだ……俺の好きな奴ですよ。

　SNSとかで広まっていく怪異の話なんですが、起きる事象やギミックのシンプルさを活かして主人公の感じる恐怖を非常に丁寧に描いています。

　ホラーって読んでいる人に恐怖を感じていただかなくてはいけないので、その目的に合致した非常に良い構成だと感じました。

　個人的に好きなのがフォロワーたちの顔を思い浮かべながらリツイートかましちゃうシーンで、その後すぐに開き直るのも含めて完璧だなって感じました。

　ここまで見事に人間臭さを描いたんですから思いっきり怪異が暴れたり主人公がひどい目に遭うパートを作って華を添えたほうが読者は楽しく怖い思いができる気がします。

　怖い思いをしに来ているんですから、思いっきり怖くしちゃいましょう。

　Veilchenさんの「のりこさんによろしく」みたいに、SNS発の怪異が思いっきり現実を侵食して暴れるのは良いものですよ。

　貞子だってビデオから飛び出してくれるし、動画投稿サイトから世界を征服するんですから。

　それくらいヒャッハーすると多分充実した基礎だけじゃない一歩先の作品へすすめると思います。

巨乳：第十回本物川小説大賞では、じっくりとうんこと向き合う作品を出してくれていたもももさんだ！

　青い鳥さんのSNSに出てくるホラーいいですよね。

　一言でお前を呪うぞ！みたいな不気味な一言だけで押してくるサエコアカウントの圧も好きです。

　利己的に振る舞う主人公たちが、一瞬良心の呵責に苦しむのも「自分ならどうしようかなー」って考えられる余地があるのが好きです。