「結露した手」ラブテスター

 黒人:なんちゅうもんを、なんちゅうもんを書くんやあんたは……

 朝一で読んだんですがとても嫌な気分になりましたよ。

「うだつの上がらない」という表現がぴったりの中年男性のタクシー運転手。しかも霊感体質?霊タクシー体質?ですぐこの世ならざる客を乗せてしまう……

 この小説の巧妙な点は最初に二例怪奇現象を混ぜることによってlast but not leastの娘の話を際立たせている点ですね。非常に優れた構成だと思いました。

 最初の二例の怪奇現象は本当に恐怖で、それに比すると最後の怪奇現象は恐怖度は低い。それがなぜこうも読者を谷底に突き落とすのか。それはぜひ読んで確認してほしいですね(読者向けオススメコメント)

 恐らくラブテスターさんはこの中年男性と置かれている状況は違うと思うんですがそうは思えないほど真に迫る心理描写も見どころです。

「芦花公園後味の悪い小説賞」だったらブッチギリのNo.1です。



巨乳:おのれ午後王!もももも常連ラブテスさんです。 

 うわー。うわーーー。うわーーー。

 なんですかこの最悪な話は…めっちゃよかったです。

 ラブテスターさんの文体は個人的に大好きなのですが、最初の落語風の口調で始まっておじさんの視点に代わり、最後にキュッと締めてくる構成の美がよかったです。

 娘が出た時点で嫌な予感はしていたんですが、期待を飛び越えて最悪な方向に話が運んでくれて「うわあああああ」ってなりました。

 細かい推しポイントなんですけど、タピオカの不穏さ好きですね。

 なんなの…(めっちゃよかったです)



人外:むごい……。質の高い鬱だ……。朝からなんてものを……。あの、この、すくいはないんですか……? ちょっとこう、疲れてるところに読んだらきっっっついですね。褒めてます。

 エピソードが一つ一つ丁寧に不穏を示しながら致命的なところまではいかないと思っている間に最悪の事態が起きてしまった。シナリオに参加しなかった探索者の末路ですね。

 幅広く受ける訳ではないですが、短編集の中盤で一つあると全体の雰囲気がギュッと引き締まるいい作品だと思います。


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