芦花公園ホラー賞講評

「養殖」鳥居ぴぴき

　黒人：虫ホラーだ。皆さんは虫です。

　内容としてはモンスターパニックと異常者の豪華詰め合わせセットです。

　割と展開が予想できてしまうのですが、詳細な昆虫や昆虫食の描写が気持ち悪く、最後まで読み進めてしまいました。

　正直通し番号が付いている意味がよくわからなかったのですが、手記だから、という理由でやっているならやめた方が良いと思います。リアリティが逆になくなってしまっています。「潮風のせいで農作物が育たない〜」に始まる地域の説明は潮風を利用して農家をやってる地域結構あるよな、とか水温が高い海にはマグロとか沢山いるよな、とその他細かいところですが気になってしまいました。水温が高く潮風の吹き曝し、沖縄などを想像すれば特に食べ物が壊滅的になることはないというのが分かると思います。（沖縄は畜産もやってますし）そういうノイズがあってイマイチ入り込めなかった部分は残念でした。

　ただ、「森」という人物のキャラクターは大変よかったです。

人外：最後まで面白く読めたのだけど、すごい致命的な（しかもやりがちな）ミスがあるんですよねこれ。

　日記書いた人頑張りすぎでしょ。

　窓に！　窓に！　じゃないんだから現代怪奇でそれやっちゃうと読者冷めますよ。

　古典の面白さは学ぶべきなんだけどそれをそのまま運用してもメタが変化して通用しないとかマジありがちなミスです。

　僕も同じことやったことあります。仲間ですね。

　こういう場合どうすればいいかというと、読者に説得力をもたせる形で最後のメッセージを残させれば言い訳です。

　例えばこれ、ICレコーダーで音声吹き込んでも良いんじゃないですか？

　それだと最期まで声が収録されててもおかしくないですよね？

　こういう風に作品内のリアリティを高め、精度の高い幻覚を叩きつけてぜひもっと素晴らしい作品を書いてください。

巨乳：生き物系のパニックホラー。良いですね。

　この手記の番号の意味はなにかあったのでしょうか？ページ数かなにかかな？

　意図を読み取れていなかったらすみません。

　手記形式で話す場合、日付にしたり、物語としての展開…台詞のやり取りなどがないほうが手記っぽく見えるのですが、そうなると淡々としてしまって小説としてエモさがなくなるし、バランスが難しいですよね。

　今回の参加作品では、 味付きゾンビさんの「誕生日の贈り物」が手記形式として参考になると思うので読んでみるのも良いかもしれません。

　森くんに関してはもう完璧5000点の狂人でいいですね。己の信念があり、自己中心的な理由で犯罪行為をしてくる上にやたら上から目線で他人をジャッジする生き物はとても気持ち悪くてホラーとして最高だと思いました。

　登場人物の魅力は主人公や森くんなどすごく魅力的でした。これで記述方法や、物語の細部まで噛み合ってたら最強のホラーだと思うので次回作でまたホラーにチャレンジしてくれたらなと思います。