「雨やどり」山本アヒコ

 黒人:ああーこういうの待ってました。好きです。

 時代劇と言うか、民話と言うかそういったテイストのホラー。

 かといってまったく牧歌的でもノスタルジックでもなく、ネムキ(怪奇幻想漫画専門誌)のような雰囲気の怪しくておぞましくてどこか美しい話です。

 私は山本さんの他の作品も読ませていただいているのですが、情景描写が異様に上手いですよね。今回も雨がじっとり肌にまとわりついて重苦しい、みたいな不快感がありありと伝わってきました。

 助丸という男が講釈を垂れていて聴衆(我々読者)がそれを聞いている、という設定のはずなのですが、ラストでこっちとあっちの境界が溶けて混ざるんですよね。それが本当に不気味で良かったです。いいものを読ませていただきました。


人外:好きですねぇ~!

 時代劇風味のテイストで他とちょっと違った雰囲気が出ているのが美味しいです。

 あと淫美な雰囲気も実に良い。

 僕のツボだったので更に褒めていくんですけど、主人公が嫌がるのが良いですよね。ここで「ぎゃはは! こういうのもわるかねえな!」ってなる主人公じゃホラーにならないじゃないですか。

 視点人物次第で同じ物語でも様々に変化するということが分かる好例だと思います。主人公が鬼畜王ランスだったらふっつうに女の子の顔が治りいい感じになりウヤムヤのうちに全員抱くし雨は降るんですが、この話の主人公は普通の人間。

 その普通の人間がこらえきれない状況の中で必死にもがくその命の煌き!

 輝いている命って良いですよねえ~~~~~~~! よく頑張ってくれました!

 これシリーズものにできそうですよね? この辻講釈師さんを狂言回しにして!

そういうのもいいと思うなあ。いや、書籍とかポイントって意味ではニッチオブニッチなので無理におすすめはできないのですがいいですよこれ。

 良いと思うんだよなあこういう世界。


巨乳:歌舞伎の語りや落語のような軽快な口調から始まる和風ホラー!怪綺談とかそういう系が近いんでしょうか?

 主人公が語り手として、反物を探していた佐吉が体験した逸話を話して聞かせるというものですが、しらずしらずの内に話に引き込んでいく語り口や、視点の変え方がおもしろかったです。

 最後の結末も、この先更に不穏なことが起こりそうですごく好きです。

 夏の夜に聞いてぞわっとする怖い話でした。

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