芦花公園ホラー賞講評

「変身／錯覚」ささやか

　黒人:ささやかワールドだ。ちょっと脳内がどうなってるか検査したい。

　体調が悪い時に見る夢のような意味不明で理不尽な世界観なんですけど、起こっていることはリアルでコンビニ強盗とか牛丼屋ジャックとか、行動原理も小学生女子っぽい。

　鬼から虫になったのも本当に意味不明で、交尾もしてるし本当に頭がおかしくなりそうです。この子本当に順応性が高すぎる。ラストも納得のいく展開でした。完璧。

　つげ義春の絵柄で脳内再生をしました。映像媒体になったらカルト的な人気が出そう。

　デヴィットリンチのイレイザーヘッドみたいですごく好きなんですが、ただ、本当にひとつだけ難点があって、怖くないです。

　これはホラーと言うよりミッドナイトカルトですね。

人外：カフカの変身的なあれだなーってなるけど、それだけだと弱いと思うんですよね。いや、こう、好きな人は好きなんだろうけど俺はちょっとこう、ね？

　こういうのじゃなくてなんというか……これだけだとホラーっぽくないと思うんですよね。ごめんなさい。俺はちょっと上手く評価できません。

巨乳：本物川小説大賞で謎の酔っぱらい賞を受賞したささやかさんがホラーも書いてくれた！

　本物川の方にあった「素晴らしき結婚」でもある通り、文体がつよつよでなにを書いてもささやかさんワールドになるすごい作者さん。

　これはナンセンスホラーとかコメディみたいなノリだと思います(ちょっと違うけどアダムスファミリーとか、シェアハウスwithヴァンパイア的な)ポンポン人が死ぬし、最後も悲惨なんですが、文体のお陰で怖くないというところが怖い。

　カフカや山月記がキャプションに書いてあるので変身要素がそこからのオマージュなのかな…。

　ホラーとしてどうなのかはちょっとよくわからないんですが、様々な名作の悪魔合体オマージュとしては非常に面白かったです。