概要
かつて大神殿に仕えたシルルースは、幼い頃に出逢った愛しい人への想いを心に秘めたまま、庇護者で妖魔のザルティスと共に人里離れた森の中で暮らしていた。ある日、傷を負って森に迷い込んだ貴族の青年を救ったことから、知らず知らずのうちに大陸の創世神話を覆すほどの陰謀に巻き込まれていく──
「天竜の花嫁」と呼ばれる大神殿の巫女と、彼女を守護するために全てを捧げる戦士の、切なくも甘い恋を軸に、彼らを取り巻く人々の想いが錯綜する荘厳なハイファンタジー。
✴️長編ファンタジー『最果ての、その先に』と同じ世界観ですが、登場人物と時代背景が異なります。続編ではありません。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!心の闇を照らしてくれるのは、誰ですか?
人間と妖魔や妖獣が共存する「大陸」と呼ばれる世界の物語です。
あたかも実在するかのように、緻密に練り上げられた世界観は、圧巻のひとことです。
積み上げられた歴史があり、文化があってこその価値観があり、この世界で、人々は確かに生きています。
海外ファンタジー作品がお好きな方なら、この世界観を感じた瞬間に、物語の虜になると思います。
しかし、実は私、海外ファンタジー作品を殆ど読んだことがないのです。
なのに、この物語の虜です。
それは何故か。――この物語世界の人々が、「生きている」からです。
登場人物は、皆、心に闇を抱えています。
ヒロインのシルルースは、精霊の声を聴くこと…続きを読む - ★★★ Excellent!!!緻密に練り上げられた世界、心に闇を抱えた者達。美しく重厚なファンタジー
人と妖魔の共存する世界。盲目の薬師シルルースは、彼女を庇護する妖魔と共に、森の中でひっそりと暮らしています。
心の中に、ある人への想いを抱きながら。
しかしある日、彼女の前に現れたのは……。
重厚でありながらしなやかな文章で語られる物語は濃密で、読者を作品の世界に深くいざないます。
その独特の世界は、おそらく作者様の膨大な知識を背景に紡ぎ出されたもので、人や妖魔、精霊達の息遣い、国々の歴史や関係など、実に緻密に、そして自然に織り上げられ、広がっています。
そして登場人物達の、心の闇と、複雑できめ細やかな想い。それらが時に切なく胸に迫ります。
彼らがこの後、何を想い、どうなる…続きを読む - ★★★ Excellent!!!仄暗き世界で、人と妖魔と精霊たちの言葉に酔う
生まれつきこの世の光を見ることが叶わぬ代わりに、精霊たちの声を聴き、かれらの目を通じて世界を視ることのできる娘・シルルース。かつて大神殿で『夜闇の巫女』と畏敬され、巫女姫キシルリリに仕えていた彼女だったが、今は一介の薬師として、昏(くら)き森の中に建つ小さな水車小屋で暮らしていた。心優しき妖魔・ザルティスとともに……。
ある日、ザルティスとシルルースは、大神殿の護衛でありながら殺人の嫌疑で追われる貴族の青年・キリアンに出会った。傷ついた青年を介抱するふたりの許へ、巫女姫の命を受けた術師と騎士、妖獣狩人がやって来る。水の精霊たち、風の精霊たちをも交えた攻防の果てに、妖獣狩人に相対したシルルー…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読むべき本格ファンタジー!周到に用意された物語世界を覗いていく感動!
『ロード・オブ・ザ・リング』のような、重厚なファンタジー世界に夢中になりたい方にオススメの物語です。
「聖なる天竜(ラスエル)」「天竜の統べる王国(ラスエルクラティア)」「罪戯れ」など、冒頭から次々登場する物語オリジナルのキーワードたち。
もちろん、はじめて聞く言葉ばかりです。
でも、物語世界のエッセンスをこれでもか!と凝縮した、知的で濃密な語りに導かれて、読み進めるうちに、あれよあれよと脳内の公用語になっていきます。
「第1部:昏きに沈む」で描かれるダイナミックな攻防戦や、盲目の巫女シルルースや妖魔ザルティス、ネタバレになってしまうから書けないあの方やこの方など、魅力的な登場人物が繰り…続きを読む