静寂(しじま)の闇に【休載】
由海(ゆうみ)
序章
世界を奏でる歌声が、教えてくれるだろう
……ああ、まただわ。
何を
また捨てられた。ただ、それだけのこと。
固く閉ざされた門の前に立ち尽くし、両の
「
人間など、勝手なものね。
だからこそ、己の欲望を
あの人も戻って来なかった。
……馬鹿ね、何を望んでいたの? 戸惑いがちに触れる大きな手が焦がれていたのは、私ではないのだと分かっていたくせに。
誰も、こんな私を愛したりしないもの。
足元に投げ捨てられた小さな革の袋を拾い上げ、手探りで中を確かめる。
金貨と銀貨が十数枚と、干した果物とチーズの塊が少しずつ。そして、それらに絡みつく、「慈悲」と言う名の
あの方らしいわね。
それとも、神官達の「
どちらにせよ、これだけあれば、王都を離れるまでは物乞いなどせずに済みそうね。
大丈夫よ。いつものように、この世界に息づくもの達が奏でる歌声に耳を澄ませればいい。
進むべき道は、彼らが教えてくれるわ……
はあっ、と一度だけ、うつ向き加減に小さなため息を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます