二人の夜

「レイス! 支度しろ。街に出掛けるぞ」 


 天幕の中で騒いでいた子供達が、ようやく寝付いたばかりだと言うのに……


 聴き慣れた声に静寂を破られて、レイスヴァーンは小さく舌打ちすると、焚き火の向こうの薄闇から姿を現したギイに向かって、大声を出すな、と合図を送った。しまった、とばかりに肩をすくめて、わざとらしくゆっくり忍び足で歩み寄る男の姿に、思わず苦笑いを浮かべる。


「久しぶりに花街に繰り出すぞ。なあに、支払いは俺が持ってやるから心配するな」

 幾分、声の調子は落としたものの、ギイがいつも以上に陽気なのは、きっと誰かに酒でも勧められて、相手が酔いつぶれるまで浴びるように飲んでいたからだろう。野営とは言え、身を守る自然の防壁さえない街道のはたとは違い、堅固な砦に囲まれている安心感に、傭兵達の心がゆるむのは仕方がない。問題は、この男が底なしの酒豪だということだ。

「どうせ、駆け出しの傭兵から巻き上げた金だろう、ギイ?」

「自分から飲み比べに誘っておいて、勝手に酔いつぶれる奴が悪いんだよ。痛い目に遭えば少しは懲りるってもんさ。『相手の技量も図らずに、戦いを挑むな』ってな」

 からからと高笑いするギイの顔に毛布を投げつけると、レイスヴァーンは声を出さずに、静かにしろ、と口を動かして顔をしかめた。毛布を投げ返したギイが、おどけた様子で、わかったよ、と口を動かすと、地面にしゃがみ込んで、暖を取ろうと焚き火の炎に手をかざした。


「結局、あの『巫女見習い』の嬢ちゃんは、『箱』の天幕に行ったのか?」

 レイスヴァーンは首を横に振って、背後の天幕をあごで指した。

「なるほどな。『箱』とは関わり合いたくないって訳か。一体、何に怯えているんだろうなあ、あの嬢ちゃんは」

「俺にも分からん。何にせよ、あの金の髪の……ウィアと言うんだが、あの娘と一緒なら落ち着くようだから、好きにさせておいた」

 金の髪の娘と聞いて、ギイは一瞬、片眉を吊り上げると、ぽりぽりと頬の傷を掻いた。

「レイスよ、そのウィアって娘だがな。『西の砦』の領主の側妾そばめだったらしい」

 どこからそんな情報を手に入れたんだ、とでも言いたげに目を丸くする若者をよそに、ギイは炎を見つめたまま、独り言のように言葉を続ける。

「大人びて見えるが、まだ十四、五ってところか。かなり幼い頃に『捧げもの』にされたんだろうなあ。あの、妙に男を誘うような気配も、男を品定めするような視線も、生き延びるために自然と身につけたんだろうが……若い奴らにゃあ目の毒ってもんだ」

 炎にかざしていた両手をゆっくりとこすり合わせながら、ギイは不意に神妙な声を出した。

「今はあの嬢ちゃんの世話にかまけているようだから良いが……あの娘、相当な闇を抱え込んでいるぞ。用心しろよ、レイス」


 レイスヴァーンはわずらわしそうに目をすがめると、大きなため息を吐いた。

「……参ったな。『巫女見習い』だけでも面倒だってのに」

「まあ、そう言うな。さて、無駄話は終わりだ。そろそろ行くぞ」

 待ってましたとばかりに立ち上がったギイが、にやりと笑う。

「俺はいい。夜番を頼まれた」

「はあ? おいおい……お前、また誰かに寝ずの番を押し付けられたな? 砦に泊まる度、お前が文句も言わずに代わってやるもんだから、図に乗る奴がいるんだぞ」

「構わんよ。女の肌が恋しいと言うから、代わってやっただけのことさ」

「そう言うお前はどうなんだ? あんまり我慢し過ぎると、使い物にならなくなっちまうぞ」

 何かを思い出したように、ギイが含み笑いを浮かべた。

「……なあ、ギイ。俺も色々と必要に迫られて、女を抱くこともある。けど、こんな緊張感の欠片かけらもない旅なら、その必要もない。分かっているくせに、面白がってあおるのは止めてくれ」

 素っ気無く答えながらも、レイスヴァーンの唇の端に薄っすらと笑みが浮かぶ。年上の男の遠慮ない言葉の裏に、遠回しな気遣いが潜んでいるのを知っているからだ。

「それより、王都軍の奴らと何を話し込んでいたんだ?」

「ん? ああ……昼間の顛末てんまつを、な。あの嬢ちゃんの怯え方は尋常じゃあなかったんでな。明日の朝一番で砦の領主に願い出て、大神殿に言伝ことづてを頼むことになった。こういう時、王都軍の術師の一人でも居りゃあ助かるんだがなあ」

 面倒ごとが嫌いなくせに、困窮する仲間に頼まれれば渋々ながらも助けの手を差し伸べる。この男が多くの傭兵から慕われているのも、そんな面倒見の良さがあってのことだろうと感心しながら、レイスヴァーンは自分自身もそんな男に救われたことを思い出して、静かにうなずいた。

「仕方ないさ。異国を旅する術師はスェヴェリスの手先だと決めつけられて、弁明する機会も与えられずに処刑される時代だ。大陸を横断する旅に同行したがる奴などいないよ」

「全く、面倒なこった。その辺に隠れていやがる巫女姫様の『使い魔』が、伝令がわりに一働きしてくれりゃあ良いものを……」


 巫女姫の放った使い魔が大陸中で目を光らせている、とは、小さな子供達をしつけるために親が語って聞かせるお伽話だ。

『悪いことをすると、巫女姫様の使い魔に食べられてしまうのよ』

 幼馴染の少女がそう言って震えていたのを、レイスヴァーンは今でもはっきりと覚えている。


 急に黙り込んでしまった若者を前に、無言で頰の傷に指を滑らせていたギイが、呆れたように口を開いた。

「レイスよ。もう少し要領よく、気楽に生きろと教えてやったはずなんだがなあ」

「……要領が悪いのは生まれつきさ。以前と比べれば、これでも十分、気楽に生きているつもりなんだが」

「どうだかなあ……黒髪の女が関わると、いまだに、お前の理性は吹っ飛ぶようだしなあ」

 にやにやと意味ありげな笑いを浮かべる年上の男に、レイスヴァーンがいぶかし気な視線を向けた。

「ギイ、言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれ」

「あの黒髪の嬢ちゃんのことだよ。まさか、いつも冷静なお前が、アシャムの野郎を殴り倒すとは思わなかったんでな。正直、驚いた」

 思いがけぬ言葉に、若者の瞳が大きく見開かれた。が、それも束の間、レイスヴァーンはギイから視線をらして顔をしかめた。

「嫌がる女に無理強いする奴は気に食わない。それだけだ」

「お前を裏切った幼馴染の姫君も、確か黒髪だったよなあ……まさか、まだその女を想い続けているなんぞと言い出すんじゃあるまいな?」

「ない。断じて、それはない。彼女とのことは、とっくの昔に終わっている。頼むから、もう十年近くも前の話を持ち出さないでくれ」

 苛立ちを含んだ自分の声に驚いて、レイスヴァーンは大きく息を呑んだ。その様子に満足したように、ギイがうなずきながら立ち上がった。

餓鬼ガキの頃の初恋を忘れられんなどとほざいた時点で殴ってやるつもりだったが……その必要もなさそうだな」

 若者の肩にぽんと手を置いたギイが、にやりと口許を吊り上げ、片目をつぶってみせた。

「レイス、次は必ず付き合えよ。悲しいかな、お前のような男前が隣にいなけりゃ、若い女が寄って来てくれんのさ」

「気立ての良い女をめとるって話はどうしたんだ?」

「傭兵をやってる限り、これくらいの憂さ晴らしは必要なんだよ。じゃあな、レイス。あの嬢ちゃんのこと、ちゃんと見張っておけよ」

 そう言い放って、さっさとその場を立ち去ろうとする年上の男の後ろ姿がやけに寂し気に見えて、レイスヴァーンは咄嗟に声を上げた。

「ギイ! いい歳なんだから、女遊びは程々にしておけよ。腰が抜けても、夜明けまでは迎えに行ってやれないぞ」

「余計なお世話だよ」


 からからと大きな笑い声を立てながら片手を大きく振ったギイの姿が、来た時と同じ薄闇の中へと消えて行った。


 

***



 夜の静寂しじまに野営地が優しく包まれる頃。


 皆が寝静まった天幕の下で、シルルースは夜風の精霊達のささやき声に耳を傾けていた。一つの毛布にくるまって抱き合って眠っていたはずのウィアは、いつのまにかシルルースに背を向けて身体を丸め、子猫のようにすやすやと寝息を立てている。

 軽やかな笑い声を上げては、そよそよと天幕を揺らして「愛し子」の気を引こうとする精霊達に根負こんまけして、シルルースはウィアを起こさないようにそっと毛布から抜け出すと、天幕の外へと足を運んだ。

 冷たい夜風に頰を撫でられて、思わず小さな悲鳴がこぼれ出る。


 

 レイスヴァーンは声が聞こえた方に視線を向け、膝に立てかけていた長剣を握りしめると、音も無く立ち上がった。そのまま、天幕の入り口にたたずむ影に目を凝らす。が、しばらくして、安堵の溜息ためいきを吐いてゆっくりと身体を傾け、手にしていた剣を地面の上に横たえると、ありったけの優しさを掻き集めて声を出した。

「おいで、シルルース。そこは冷えるだろう?」


 寝癖のついた黒髪を揺らしながら、少し上目遣いに唇をきゅっと結んで、おずおずと近付いてくる少女の姿に、レイスヴァーンは思わず口元をほころばせた。

「どうした? 怖い夢でも見たのか?」

 シルルースの肩に手を置いて、怖がらせないように出来るだけ穏やかに語り掛けながら焚き火の前に座らせると、小さな身体を毛布で包み込む。薄紫色の瞳がこちらを不思議そうに見つめていることに気づいていながらも、レイスヴァーンは素知らぬ顔で少女の隣に腰を下ろした。


「精霊達が、『火竜ひりゅう』がいるって騒いでいたから……」

 焚き木のぜる音と重なるように少女がぽつりとつぶやいた。その言葉に、レイスヴァーンはいぶかしげに目を細める。

「何だって?」

「天幕の外に火竜が居るから、出ておいでって」

 少女の声に応えるかのように、夜風が焚き火の炎を大きく揺らす。刹那、レイスヴァーンの緑色の瞳が大きく見開かれた。


 炎に照らし出された少女の周りを、星屑を散りばめたように輝く美しいはねを持つ生きものが、ひらり、ひらりと飛び交っている。翅を動かすたびに、銀粉のような光がこぼれ落ち、少女の黒髪に舞い降りては消えていく。



「ただの『火とかげ』かと思ったら……あなたのことだったのね」

 はっと我に返って、レイスヴァーンは目をまたたかせた。少女を包み込んでいるのは、使い古した毛布だけだ。あれは幻だったのか……そう思いながら、少女の言葉に何と応えるべきか考えあぐねて、押し黙ってしまった。

 気まずい沈黙を破ったのはシルルースの方だった。

「手……痛くない? あの人のこと、二度も殴ったでしょう?」 

 気遣うような声が、耳元をくすぐる。レイスヴァーンは少し驚きながら少女に視線をやると、アシャムを殴った利き手から手袋を外して目の前にかざしてみせた。

「素手ではなかったし、あれぐらい、どうってことない」

 心配そうに眉間にしわを寄せたまま、シルルースがふるふると首を横に振る。

「そうは言っても気になるか……ほら、触ってごらん」

 一瞬、はじかれるように顔を上げたシルルースが、おずおずと手を伸ばした。少女には何も見えていないのだと思い出して、レイスヴァーンは腕を伸ばすと、驚かさないようにそっと少女の手を取った。ぴくり、と震えた手は思った以上に小さく、白い指は握りしめれば壊れそうなほどに華奢だ。

 大きくごつごつした手に重ねられた少女の指が、傷の有無を確かめるように皮膚の上をゆっくりと這うように動いていく。その感触に、身体の奥底がぞくりと震えるのを感じて、レイスヴァーンは思わずもう一方のこぶしをぎゅっと握りしめた。


 しばらくの間、細い指先で円を描くように男の手を優しくさすっていたシルルースが、祈るように静かにささやいた。

「ねえ、名前を教えて」

 夢から覚めたかのように、大きな手がぴくりと震える。

「言ってなかったか? レイスヴァーンだ」

「そうじゃなくて……」

「ああ、長ったらしいな。レイスでいい」

 ふと動きを止めた小さな手が、そろりと離れていくのを、レイスヴァーンは名残惜しそうに見つめ続けた。が、突如、怒りをはらんだような少女の声に心を貫かれて、ごくりと息を呑んだ。

「そんな空っぽな名前、あなたじゃない」


 にじり寄る少女の声が、形を持たぬかせとなって重くのしかかるような、何とも奇妙で不快な感覚を覚えて、レイスヴァーンは無意識に長剣の柄に手を掛けた。

「……シルルース? 何のことだ?」

「これから先もずっと、そんな意味もない名前に心を縛られたまま、大陸を彷徨さまよい続けるつもり?」 

 先程までの少女のものとは全く違う、低く研ぎ澄まされた声が、夜の静寂しじまの中に響き渡る。と、それは「何か」に触れようとするかの如くレイスヴァーンの中に容赦なく入り込み、きりきりと魂を縛り上げていく。

「あなたの中にある、もう一つの名前。今は心の奥底で、じっと息を潜めているけれど……解き放ってあげて。それが、本当のあなたなのでしょう?」

 少女の声に捕らわれまいと足掻きながら苦しそうに胸元に手を当てた男を、薄紫色の瞳が悲しげに覗き込む。

めろ……シルルース!」

 唇を噛み締めてうなるような声で少女の名を呼んだ瞬間、レイスヴァーンは今まで締め付けられていた重圧感から不意に解放された。



 気づけば、今にも泣き出しそうな表情で、シルルースがこちらを見つめている。

「……どうして? 偽りの名に縛られたまま生きていくなんて、そんなの駄目。悲し過ぎる」


 ああ、まただ…… 


 レイスヴァーンは長剣の柄から手を離すと、はあっと大きく溜息をついた。どうやら、あの少女の不思議な瞳は、心の奥底にしまい込んでいるものを覗き見てしまうらしい。



 困惑するレイスヴァーンの気配を感じ取って、シルルースは眉根を寄せたまま目の前の暖かな温もりに顔を向けると、燃え上がる炎へと手を伸ばした。が、突然、大きな手に腕を掴まれて、驚きのあまり悲鳴を上げた。

「ああ、すまない。驚かせてしまったか……あまり近づくと危ない。火傷をする」

 遠慮がちな声が、耳元で優しく響く。シルルースは力強い手が腕から離れていくのを何故だか寂しく感じながら、消え入るような小さな声で「大丈夫」とつぶやいた。


 少し癖のある黒髪が焚き火の炎に照らされて、きらきらと輝いている。人の子というより、お伽話にうたわれる精霊のようだ……知らぬ間に、少女の横顔を見つめている自分に気づいて、レイスヴァーンは少し居心地悪そうに咳払いをした。 

「ねえ、浄化の炎が青いのはどうしてなのか、分かる?」

 またも思いがけぬ問い掛けに、困り果てた顔で少女を見つめたまま、レイスヴァーンは肩を竦めた。

「聞く相手を間違っていやしないか? 俺はただの傭兵だぞ」

 ほおっと残念そうに吐息をつくと、シルルースは言葉の糸を紡ぎ始めた。心を束縛する『巫女の声』ではなく、癒やしを与える『祈りの声』で、目の前の男を優しく包み込むために。

「術師の呪詛にからめ捕られて自由を奪われた精霊は、炎に投げ込まれて、その身を燃やすの。ただ、人の魂をすくうためだけに……苦しみに耐え切れず、悲鳴を上げながら」

 それまで、表情も乏しくうつむいてばかりいた少女が、夢見るような顔を炎に向けると、何かを掬い上げようとするかのように両手を差し出して、静かに、歌うように、『声』を紡ぎ始めた。

「精霊達の悲しみの声が、炎を悲しい色に染めていく。それはやがて、魂を癒す青い光となって燃え上がる……それが、『浄化の炎』」


 焚き火の中でうごめいていた不思議な輝きが、ふわりと炎から離れ出て、赤い輝きをまとう小さな生きものの姿に変わると、シルルースのてのひらの上で戯れるように舞い始めた。初めて目にした少女の柔らかな表情に魅せられて、レイスヴァーンはその姿から眼をらせずにいた。

「呪詛から逃れるためには燃え尽きるしかないと分かっていて、それでも、この世界から消えてしまうのは悲しくて……しまいには、空っぽの抜け殻になって燃え尽きて、この世界に別れを告げる」

 少女の頰に、するりと一筋、涙がこぼれ落ちた。

「……青い炎のそばで燃え上がる赤い炎は、呪詛に縛られた仲間を燃してしまった炎の精霊達が、仲間の記憶を精霊の世界へと送り出すためにともしたとむらいの炎なの」

 ゆっくりと掲げられた少女の両手から赤い輝きが宙に解き放たれた瞬間、つい今しがたまで目の前にいたはずの不思議なものの姿は忽然と消えた。



 一瞬とは言え、こんな幼い子供に魅入られてしまったことに戸惑いながらも、レイスヴァーンはなんとか平静さを取り繕ろうとしていた。その隣で、たった今まで不思議な生きものと戯れていた少女が眠たそうに欠伸あくびをすると、瞳をゆっくりと瞬かせた。

「『声』を紡ぎ出すのは、とても疲れるの。精霊達があなたに悪戯いたずらしないように言い含めるのも、とても大変で……」

 微睡まどろむ少女の身体がゆらゆらと揺れ始めたことに気づいて、レイスヴァーンは咄嗟に両腕を伸ばすと、毛布ごと自分のそばに引き寄せた。

 


 傭兵なのに、この人からは甘い香りがする……どうしてかしら。


 力強い腕の温もりに抱かれて夢の中を漂い始めたシルルースは、男のまとう香りと大きな胸の鼓動を心地良く感じながら、唇をそっと動かした。

「ねえ、レイスヴァーン。あなたの中にある空っぽな炎は……本当のあなたを弔うために燃えているの?」



***



 いつのまにか、自分の胸に顔をうずめるようにして眠り込んでしまった少女の重みと温もりを心地良く感じながら、レイスヴァーンは小さな身体を夜気にさらすまいと外衣の中に引き寄せて、両腕でしっかりと抱きしめた。


「空っぽ、か。確かにな……」

 かすれた声が、静寂の闇に溶け込んで消える。

「なあ、シルルース。もう一つの名で俺を呼んでくれた人は、この世界にはもう居ないんだ」


 星の輝きを宿すはねをさわりと羽ばたかせながら、夜風の精霊が炎の色の髪を優しく揺らした。

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