第1章 残された戦争
月が赤い夜に
俺と妹は、絶体絶命の危機に瀕していた――
「どうしようか? お兄ちゃん」
俺の背中で、妹の
俺と妹はお互いの背中と背中を貼り合わせながら、アサルトライフルを構えている。
そしてアサルトライフルの銃口の先にあるのは、いくつもの黒い〈影〉――
――それは〈フーム〉と呼ばれる、人類を滅亡の危機に追い込んだ謎の生命体。
大きさは人間と同じくらいで、人間と同じように、手も、足も、二本ずつある。
だが人間と全く同じではない。
〈奴ら〉の“形”は人間に似ていても、皮膚が漆黒の闇に染まってしまっているかのように黒い。
しかも〈奴ら〉は〈奴ら〉なりに銃などの武器を手にしている。
だから夜になると完全に闇に溶け込み、夜な夜な俺たちを狙ってくる。そうやって人類を滅亡に追い込んできたんだ。
〈奴ら〉の正体を知っている者は、誰もいない。
宇宙人かもしれないし、異世界からの侵略者かもしれない。
とにかく〈奴ら〉の正体を確かめる余裕は、今までの人類にはなかった。
だから〈奴ら〉は〈
そんな〈フーム〉が、1体、2体……6体――全部で6体いる。
6体の〈フーム〉たちが、俺と妹を取り囲んでいる。
そして〈フーム〉たちは空に浮かぶ赤い月のように――いや、それ以上に、殺気を帯びた眼差しで、俺たちを睨みつけている。
張りつめた空気が、今にも引き裂かれそうなほどの緊張感。
次の瞬間には、〈奴ら〉が俺たちに襲い掛かってくるかもしれない。
考えている時間は、もうない。
「なあハヅキ。お前ならこの危機を切り抜ける策くらい、もう考えついてんだろ?」
俺はアサルトライフルのトリガーにかかる指に力をこめる。
だがハヅキの答えは、こんなものだった。
「は? そんなもん、あるわけないじゃない!」
言うまでもなく、俺の頭の中は真っ白だ。
「っていうか、お兄ちゃん! 本来、妹を守るのが、お兄ちゃんの役割でしょ? 妹に頼り過ぎないでよ!」
妹の言う通だ。
だが、ここで反省している暇なんてない。
だって〈フーム〉たちは既に、俺たちとの距離を一気に詰め、襲い掛かってきている最中なんだから――
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