妹が人類を滅ぼしかけていて、ヤバい。

束冴噺 -つかさしん-

プロローグ

それは、妹が人類を滅ぼし始める数時間前のこと

 俺には妹がいる。

 背は小さいけれど、瞳は透き通ったガラス玉のように大きくて、ショートヘアーがとってもよく似合う。

 手足もスラッと長いから、どんな服でも完璧に着こなせる。

 そしていつも「お兄ちゃん」と言いながら俺になつき、ベタベタと密着して離れない。

 俺が風呂に入っているときだって、「一緒に入ろ」とか言っていきなり浴室に入ってくる。

 ……まあ、多少いきすぎたスキンシップはあるにせよ、かわいい妹だ。

 たまに生意気なことを言われても、ちょっとしたイタズラをされても、その笑顔を見れば、俺は許せてしまう。


 そんな妹が、もし人類を滅ぼすことになったら、みんなどうする?


「そんな馬鹿げたこと、あるわけない!」


 なんて言う奴もいるだろう。

 確かにそうだ。

 俺だってはじめはそう思った。

 でもだ。

 俺は実際、妹が人類を滅ぼす事態に遭遇したんだ。


 だがその前に、この話をしよう。

 それは、妹が人類を滅ぼし始める数時間前のこと――

 赤い月が、まるで人類に怒りの眼差しを向けるように地上を睨んでいた、不吉な夜。


 俺と妹は、絶体絶命の危機に瀕していた――

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