装甲車

 装甲車が、俺たちに向かって、空から降って来た――


 言うまでもないことだが、装甲車は空を飛ぶものではない。

 だからきっと、あれは屋上に待機していた装甲車が、急発進して空中にダイブした結果なのだろう。

 理由はどうであれ、このままではヤバいわけで――


 ――逃げろ!


 そんな言葉を叫ぶ時間すらなかった。

 黒い影が俺たちに迫る。

 咄嗟に、俺とハヅキは左右に別れる。

 その刹那――

 大地が大きく揺れる。

 その振動と衝撃で、俺はバランスを崩す。

 地面に体が転がる。

 俺とハヅキの間には、激しく土埃が舞い上がっている。

 その中に、左右に4輪ずつの分厚いタイヤと、2挺の機関銃を備えた装甲車がいる。

 俺はすぐさま体を起こし、


「なあ、ハヅキ――」


 俺は妹に問いかける。「あれは、俺たちの仲間じゃないよな?」

 機関銃の照準が、俺とハヅキに向けられる。

「ねえ、お兄ちゃん。仲間だったら、私たちに銃口を向けると思う?」

「そうだな。お前の言う通だ」


 次の瞬間、機関銃が火を噴いた。

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