真理
その集落は、食料危機に陥っていた。連日の異常なほどの暑さのせいで、畑の食べ物は全て駄目になってしまい、保管していた食料の全てが腐ってしまった。集落にすむ人々は、数日何も口にいれていない空腹感と、暑さのせいで、すでに限界を迎えていた。何人かは力尽きている。
誰もが絶望し、倒れこむなか、ひとりの男が地面に正座をしていた。そして、拝むように天にむかって、最後の力を振り絞り、こう叫んだ。
「どうか、神様、我々に食べ物を……」
その瞬間、ほんの一瞬、空全体が真っ白に輝き、その一瞬の光が消えると、空にはひとりの老人が現れていた。
人々はその老人を見つけると、直感的に神様と認識し、疲れと空腹を忘れ、歓声をあげながら手を叩いた。
その老人が地面にゆっくりと降りると、その老人は、なりやまぬ人々の歓声を静止した後、こう言った。
「私は、神です。地上が食料危機になっていることを知り、助けにきました。さあ、お食べなさい」
神は何もない空間から、沢山の食べ物を出現させた。
人々はその食べ物に我先にと食らいつき、大量に現れた食べ物を、すぐにたいらげてしまった。
人々が神に感謝の声をあげるなか、ひとりの学者の男がこう言った。
「神様。助けてもらった後で、質問するのは失礼と存じ上げております。しかし、この質問をせずにはいられません。この世界の果ては、どうなっているのですか」
人々は静まり返った。学者の男の質問の返答に対し、周りの人々も興味を持ったようだ。
神はひとつ咳払いをし、言った。
「いいでしょう。教えて差し上げます。まず、雲の上には空があり、空の上には宇宙という空間が果てしなく広がっているのです。宇宙とは、真っ黒で、冷たく、寂しい空間なのです」
人々からどよめきが起こった。さらに、学者の男は質問を重ねた。
「では、宇宙の果てには何があるのですか」
神は、その質問に対し、眉間にしわをよせ、少し唸った。その後、こう答えた。
「まあ、教えてあげてもいいでしょう。特別に教えます。ずばり、宇宙とは、一体の生き物なのです。いや、正確に言うと、この世界というものは、一体の生き物の体内なのです」
さっきよりも大きなどよめきが起きた。学者の男が、さらに質問を重ねる。
「その生き物とは」
「それは、とてつもなく大きなもので……」
その時、全ての空間が潰れ、全ての生き物、空間が消え去り、何もなくなった。
ある晴れた日の公園。母親がまだ幼い子供に向かって、こう注意する。
「こら。そんなに蟻を潰さないの。可哀想でしょう。やめなさい」
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