火星移住計画

 今から何百年とたった未来。環境汚染は日に日に悪化していき、人々はガスマスクなしでは外を歩けなくなった。もはや後戻りできなくなるまで進んだ環境汚染は、どうすることもできなかった。そんな状態を打開するべく、長い間話し合われてきた計画が実行される。それは、『火星移住計画』だった。

 地球の汚くなった水を少しでも多くろ過し、火星に宇宙船で運んでいく。これを何十年と繰り返した。水の量がある程度までいくと、次は汚染されていない土を火星に運んでいく。これも何十年と繰り返し、ついに火星全体を土で覆うことができた。

 次は、苗木を大量に運んだ。これは運ぶのはすぐ終わったが、水や木同様、育てるのに何十年もかかった。

 そして、草木が育つと、後はそれらが光合成を行い、火星に空気ができるのを待った。


『火星移住計画』が始まって二百年。ついに、その計画は終わりを迎えようとしていた。火星はすっかり青々とした緑色になり、空気も新鮮で快適なものになっていた。見た目も地球と同じくらい綺麗な星になった。

 人々は歓声をあげ、パレードを行った。そして、二度と同じ誤ちは起こすまいと、楽しげに話し合いながら大型宇船に乗り込んだ。ゼロからの出発だ。大型宇宙船はたくさんの人々をのせて、地球の遥か上空、大気圏を突破した。


 その時、誰かが宇宙船の窓から、汚染されきった地球を見た。土や水、森林を奪われた地球。それは、かつての荒涼とした火星そっくりだったという。

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