飲食店での出来事

 普段刑事として働いている男は、夕食を食べに、ある飲食店に来ていた。食べ物を注文し、それが来るのを待っていると、後ろの席からこそこそと話をしているのが聞こえる。三人の男の声だ。

「……お前はどう攻めるべきだと思う」

「俺は高望みせず、慎重に行くべきだと思うな」

「俺もだ」

 刑事である男は、聞こえてくる声から焦りや緊迫感を感じ、犯行計画をしているのだと悟った。それは、その男の刑事としての長年の勘だった。刑事である男は、こちらが聞いているのを悟られないよう、耳をすませる。

「……じゃあ、まず俺が目をひくから、それからお前らが俺をカバーしつつ、確実に成功させにいこう」

「それがいいな。前もそれで上手くいったし」

 こいつら、一回盗みを成功させているのか。今回は見逃さないぞ。

「よし。じゃあ、俺がわざと大袈裟な行動をする。それで目を引くから、後はお前らが上手くやってくれ」

「サポートはどうすればいい」

「……いらない」

「なんだって。それならお前はどうする」

「俺はいいんだ。そんなことより、お前らは早くこんなことから抜け出して、お袋さんを安心させてやってくれ……」

「お前っていうやつは……」

 鼻水をすする音が聞こえる。どうやら一人が犠牲になるらしい。お袋さんを安心させるとか聞こえてきたが、そんなこと関係ない。犯罪者は犯罪者。そこに情はいらない。

「……よし、そろそろ時間だ。気を引き締めろ」

 なに。もしかしてこの店で犯行を行うのか。そう思った刑事である男は勢いよく立ち上がり、後ろの席の男に向かって飛びかかった。そして、押さえつけながら、他の二人に言う。

「お前ら、動くなよ。俺は刑事だ。観念しろ」

 すると、押さえつけられた男と、他の二人は訳がわからない様子で刑事である男を見つめる。刑事である男はなにかおかしいものを感じた。

 そこに三人の女子がやってきた。そして、その様子を見ると、言った。

「どうして四人いるのよ。今日の合コンは、男三人、女三人の約束だったじゃない。人数が変わったなら連絡してよ」

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