巡回

「すいません。ちょっとお話いいですか」

 真夜中。巡回中と思われる一人の警察官が、薄暗い夜道をひとり歩いていた男に話しかけた。

「はい、なんでしょう」

 警察官は男の目を見つめながら、話し始めた。

「近頃、このあたりで空き巣が多くなってきているのです。こんな真夜中に何をしていたか、お話願えますか」

 男は唾を大きく飲んだ。その様子から緊張がひしひしと伝わってくる。男は感づかれないよう、そして誤解を解くように、声を少し大きくして言う。

「僕は小腹がすいたので、ちょっと近所のコンビニに寄っただけです。今はその帰り道でした」

 警察官は男を怪しんだのか、目つきが少し変わった。

「申し訳ないのですが、鞄の中を見せてもらってよろしいでしょうか」

「もちろんです」

 警察官は男から鞄を受け取り、中を一通り確認し始めた。しばらくするとそれは終わり、男に笑顔を見せ、言った。

「怪しいものはないですね。ご協力ありがとうございました」

 警察官は鞄を男に返し、背を見せて歩いていった。

 その時、男は突然警察官に飛びかかり、勢いよく地面に倒した。そして手錠をかける。

「何をするのです。公務執行妨害で逮捕しますよ」

 男は確信を持った様子で言った。

「その心配はない。俺は警察官だ。最近、この辺りで警察官を装い、鞄の中身を確認する振りをして財布を盗むやつが出てきた。そこで私服をきて巡回していたら、まんまとお前が声をかけてきてくれた。早めに捕まえられてよかったよ」

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