妖精
ある日の昼間。その男の子は母親とはぐれ、綺麗な花畑についた。しかし、男の子は寂しさから花畑には目もくれず、泣きじゃくりながら言う。
「ママはどこ。家に帰りたいよ」
「坊や。泣き止んで。僕たちがついてるよ」
足元から声がした。ふと視線を下に向けると、とても小さく、羽のついた人の形をした生き物。つまり、妖精が数匹いた。
「きみはだれ」
「安心して。君を襲ったりしたいよ。僕たちは妖精っていうんだ。君は人間だろ。仲良くしようよ」
男の子は優しそうな妖精に心を開いた。
「うん。仲良くしよう」
「ありがとう。じゃあ、早速遊ぼうよ」
男の子と妖精は時間を忘れて遊んだ。かくれんぼから、鬼ごっこ、だるまさんが転んだなど……。
夕方になり、男の子の母親がやっと見つけたといった様子でやって来た。
「こんなところにいたのね。すごく心配したんだから」
「僕ね、妖精と遊んでたんだ。ほら、見て。……あれ、いない」
「何を言っているの。早くお家に帰りましょう」
男の子は名残惜しそうに花畑を見つめながら、母親に手を引かれて去っていった。
妖精たちは花から顔を出して、母親と男の子が去ったのを確認する。すると、最近生まれたばかりの妖精が不思議そうに言う。
「どうして隠れるの。あの人間とも遊ぼうよ」
別の妖精が答えた。
「あいつは人間じゃない。見た目は似ているけど、大きさが違うだろ。あいつは悪魔なんだ。僕たちの住処を破壊し、自らの欲望を満たすためなら手段を選ばない、最低なやつさ」
妖精たちは、子供が大きくなることを知らない。
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