飲食店での犯行

 三人の刑事が、ひとつの盗聴装置を真剣な様子で囲んでいる。そして今、その盗聴装置からは二人の男の会話が聞こえていた。

「……犯行計画について確認しよう」

「ああ。今夜の十二時、A飲食店に集合し、裏口をこじ開けて侵入する。そうだろう」

「いや、その前に、防犯装置を切らないといけない。まあ、これは俺の仕事だから、お前には関係ないが」

「よし。じゃあ、今夜の十二時にまた会おう……」

 そこで声が途絶えた。

 刑事たちは話し合う。

「やはり我々の睨んだ通りでしたね。マークしていた男は今日、盗みを働く。しかし、まさか自分の働いている店で盗みを働こうとするとは」

「俺も驚いたよ。しかし、普段働いている分、犯行がしやすいだろう。合理的かもしれないな」

「まあ、捕まえることに変わりはない。必ず捕まえよう」

「ああ」


 そして、その日の夜十二時。刑事たちはA飲食店の裏口に車で張り込みをしていた。しかし、人影は少しもない。念のため一時間前から張り込んでいたが、全く怪しい気配がない。

「おい。本当にここでいいんだよな」

「はい。A飲食店の裏口で間違いありません」

「しかしもうとっくに十二時を過ぎているぞ」

「おかしいな。ちょっと様子を見てくる」

 そう言って、ひとりが車から出て様子を見に行った。

 窓から店の中の様子を覗いた刑事は、すぐに駆けつけて戻ってきた。

「大変だ。すでに荒らされている」

「なに。誰も入って行った様子はなかったぞ」

「どういうことだ……」

 狐に包まれたようだった。状況がつかめない中、新人の刑事が言った。

「犯人は、この飲食店で働く男でしたよね」

「そうだが」

「もしかして、犯人にとって裏口とは、普段出入りしている従業員用ではなく、客が出入りする正面入り口なのでは」

「まさか」

 刑事たちが正面玄関に向かうと、そのドアはこじ開けられていた。

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