万病に効く薬

「ついにやった。完成したぞ」

 都心から離れた古い研究所で、研究者である青年が叫んだ。その声を聞いた、青年の師匠である男が駆けつける。

「本当に完成させてしまったのか。恐ろしいやつだ」

 青年は誇らしげに言う。

「はい。ついに完成しました。ちょっとした風邪から、不治の病にも効く、素晴らしい薬です」

 そんな薬ができたことを信じきれない男は、青年に聞く。

「本当に不治の病にも効くのか」

「ええ。僕の親戚のおじさんが不治の病だったのですが、この薬を飲ませたところ、次の日には完治していました」

「それはすごい。どんな薬か見せてくれ」

「これです」

 青年は赤いカプセルを男に渡す。

「これがその薬か。これさえあれば、世界中の病気で苦しむ人の命を救うことができるな。よくやった」

「ありがとうございます。しかし、あなたの助言がなければ完成しませんでした。本当に感謝しています」

「そんなことないぞ。お前の努力あっての完成だ。誇りを持て」

 男は機嫌よく青年の肩を叩き、笑いあった。

 そんな時、男はあることが気になった。

「そういえばこの薬、何からできているんだ」

 青年は笑いながら答えた。

「この薬一錠につき、健康な人間の心臓一個です」

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