宇宙の果てには

 新惑星を見つけるべく、広大な宇宙を探索する宇宙船には、三人の乗組員が乗っていた。三人とも若く、優秀な人物だった。だからこそ、新惑星を見つけるという任務を背負っている。

 ふと、一番若い乗組員が言った。

「新惑星というのは中々見つからないものですね、隊長」

「そりゃあそうだ。新惑星なんてそう簡単に見つかるものではない。だからこそエリートである我々が選ばれたのだ」

 最年長であり、隊長でもある男は、太く自信満々の声で言った。実際この船には、頭がよく、運動もできるエリートしか乗っていない。だからキザな台詞もはっきり言えるのだ。

「しかし、宇宙船の運転は全て自動操縦で、何もかも機械が勝手にやってくれる。我々のようなエリートは、地球でもっとやるべきことがあるような気がしてなりません」

 隊長は呆れた様子で答えた。

「お前はなんて愚かな質問をするんだ。機械は万能ではない。壊れることだってあるし、柔軟な対応は人には敵わない。それに、ここは宇宙。助けを呼びたくても、誰も来てくれはしないんだ。自分たちで何とかしなければならない。つまり、エリートが必要なんだ」

「なるほど。よくわかりました」

 そんなキザな会話を終え、景色の変わらない宇宙空間をしばらく走っていると、計器が点滅を始めた。

「ついに新惑星を見つけたか」

「いえ、何か見つけたのは確かですが、星ではなさそうです」

「なんだって。しかし、レーダーには球体のように映っているぞ」

「私も惑星かと思いました。しかし、岩石や土など、惑星を構成するのに必要な成分がほとんどありません。そして、質量が驚くほど軽いと出ている。つまり、これは薄い膜です。不思議なものですね」

「ああ。不思議だ。これは新惑星以上の発見かもしれないぞ」

 宇宙船はレーダーに映された場所に向かった。しばらくして、二番目に若い乗組員が窓の外を指差して言った。

「あれではありませんか。とても綺麗に輝いています」

 レーダーとその光る球体とを見比べ、一番若い乗組員が言った。

「どうやらあれに間違いありません。一体なんでしょう……」

 その質問に答える声はなかった。三人ともその光る膜に目を奪われていたからだ。三人とも宇宙の様々な場所で何度も綺麗な眺めを見てきたが、それらを全てあわせてもそれの美しさにはまったく及ばなかった。そして、その光を見た三人は、なぜか本能的に、自分だけが最初にそこへ行きたいと思った。エリートであるため、そんな自分勝手な行動はしてはいけないと知っていたが、抑えきれない。抑えきれるはずがなかった。三人ともエリートらしくない必死な形相で、それぞれ緊急用ボートに乗り込み、その光へ向かって全速力で突っ込んでいく……。


 眩しさを感じるほど白い空間。照明がなくとも明るい教室。先生は頭から出ている触角からテレパシーを使って生徒に話しかける。

「……このように、私たちはそれぞれお腹の中に宇宙というものを持っていて、ある程度時間がたつと、地球という組織の中の何十億から選ばれた、優秀な子供の元になるものが出てきます。そして、光膜という組織に近づくと、子供の元になるものは三つほどに分裂し、一番速かった一体だけが入ることができます。それが成長すると、子供が生まれるのです」

 それを聞いた生徒たちは、人間であった頃の記憶を少しも思い出すことなく、面倒くさそうに触角を動かしてノートを作るのであった。

 そして、その世界のどこかにも、綺麗に光る何かが、誰か一人だけのために、今も輝き続けているのかもしれない。

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