未来の太陽

 その青年は、天体観測が好きだった。自分の大きな望遠鏡を持ち、暇さえあれば覗きこんでいた。星に対して専門家顔負けの知識を持つ青年だったが、彼が一番好きな惑星はマニアックな星ではなく、『月』だった。理由は特になかったが、好きなのだった。

 ある日、青年は、時間旅行の存在を知った。初めはそこまで興味はなかったが、ふと、未来に行けば、発達した技術で今の技術では見ることのできない惑星も見ることができるのでは、と思ったのだ。

 しかし、時間旅行の料金はかなり高かった。貯金を全部くずしても足りない。料金を準備するには、持っている望遠鏡を売るしかなかった。

 青年は一日中悩みに悩んだ結果、それを売ることにした。苦しい決断だったが、まだ見ぬ惑星を見たいという気持ちに負けたのだった。

 夜中。早速青年は大金を持ち、時間旅行会社に行った。そして、タイムカプセルに乗り込み、千年後の未来へと飛び立った。


 青年は体を起こす。そこは、千年後の世界だった。銀色の高層ビルが、眩しく輝く太陽の光を反射していた。

 その時、青年は違和感を感じる。ビルに取りつけられた電工掲示板の時計に、二十一時と表示されていたのだ。

 青年はどういうことかと、タイムカプセルから降りると、近くを歩く人に尋ねた。

「私は千年前から来たものです。時刻は二十一時となっていますが、何かの間違いでは」

 その通行人の男は、首を傾げた。そして、はっと気づいたように言った。

「間違ってなんかいませんよ。あなたは知らないのですね。太陽が滅んでしまったせいで、昼夜が逆転したんです」

 青年は首を傾げる。

「それは一体どういうことです。太陽なら、今、確かにあるじゃありませんか」

 通行人の男は、青年が太陽と呼んだ星を指差し、言った。

「あの星は、かつて『月』と呼ばれた惑星でした。しかし、太陽が滅んでしまった今、人類は解決策として『月』を燃やし、新しい太陽としたのです」

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