超強力接着剤

「博士。新しい発明品とはそれですか」

 助手の青年にそう言われ、博士と呼ばれた六十近くの男はうなずき言った。

「ああ、そうだ。これはとんでもない接着能力を持った接着剤だ。一度くっつけば離れない。科学的反応、特殊圧迫機能接着剤と名付けたいところだが、長すぎる。超強力接着剤としよう。分かりやすいしな」

「それがいいと思います。ところで、この接着剤の接着力はどれほどなんですか」

 博士は自信満々に言った。

「普通の接着剤とは比べ物にならないぞ。私の計算によると、この接着剤を使って鉄と鉄を組み合わせ、戦車を作れるほどのものだ」

「それはすごい。大発明をしましたね」

「いいや。全く使えない」

「なんでです」

 博士は髪のない頭をかきながら言った。

「強力すぎて、容器の中で固まってしまって出てこないんだ。一滴もな」

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