求めていたもの

 都心のA国立研究所。そこでは、人類の夢とも言えるものの研究が行われていた。それは、永遠の命を手に入れることができるもの、すなわち、不死の薬の研究だった。

 A国は極秘裏に、そして莫大な予算をかけてこれに取り組んでいた。しかし、永遠の命は人類の夢ではあるが、それは普及したら困るものである。つまり、普通の国家がやることではない。A国は独裁国家だった。独裁者が永遠の命を手に入れたいという思いから研究が行われているのであった。

 中々完成せずにあった研究だったが、ついに、研究所から完成の報告があった。独裁者とその部下数人は、それを聞きつけ、一目散に研究所に向かった。

 独裁者が言う。

「ついに完成したのか。よくやった」

 研究者の男は答える。

「ええ。完成いたしました。この薬の研究にどれほどの努力をしたか……」

「その話は後で聞こう。ところで、効果は確かなんだろうな」

「もちろんです。しかもですね、この不死の薬を飲んだ者は、何をされても死ないのです。寿命はもちろん、病死はありませんし、体を粉々に切られても、燃やされても、銃弾で額を撃ち抜かれても、すぐに体組織の生成が始まり、決して死ぬことはありません」

「そうかそうか。すごいな。よくやった。早くその薬を渡せ」

「できません」

 独裁者は顔をしかめた。

「なに。どういうことだ」

「私がもう飲んでしまいましたから」

「勝手に飲んだのか。まあ、許してやろう。しかし、一回作れたのだから、もう一回作れるだろう。早く作れ」

「設計書は燃やしました」

 研究者の男は不気味な笑みを浮かべた。ぞっとするような笑み。よくよく考えると、研究所はすごく静かだ。そこで、やっと独裁者とその部下たちは、他の研究員がいないことに気づいた。独裁者の部下のひとりが拳銃を取り出し、研究者の男の額を撃ち抜いたが、研究者の男は怯まなかった。それをきっかけに、独裁者の部下全員が研究者の男に向かって容赦なく銃弾を発砲し始めたが、彼は痛くも痒くもない様子だった。

 研究者の男は、服の下から拳銃を取り出した。

 研究者の男は、求めていたものを手に入れた。

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