第32話 二人の私生活

ep.6-2 September / 23 / T0059 





 「ただいま」


 「おかえりショウタ♪」



 家に帰るとウウクが抱きついてくる。もはや日課だ。



 「ただいま。洗濯物洗ってくるね」


 「はぁ〜い♪ 今日はね、クスクスとお魚!」


 「ウウク、クスクス好きだね?」


 「うん♪ 簡単で美味しいもん♪」



 ウウクはクスクスをサラダと豆とドレッシングで和えたものが大好きだ。

 他にも良く学校で教わったのを作ってくれる。


 主食は簡単にこねるだけのナン、トルティーヤ、すいとんをよく食べる。

 スープはオートミールや、卵、根菜など。

 街の中でも色々買えるので困らない。


 出費も食費以外はそれほどしない。ガッハのリース代を差し引いて家賃は月に10ディル。約1万円だ。


 しかも上下水道代はミミズの餌になるため掛からない。


 ほとんど出費が無いのだ。安全な山の範囲内ならば林業も盛んで、一部の木こり達が森の管理をしているらしい。

 なので薪代も安い。人によってはクリーチャーやモンスターの体の一部を燃料にすると聞いた。


 残るのは住民税だが現在は年間一人120ディル。余裕だ。


 なので俺は週に三回仕事。空いた時間に週三回学習カリキュラム。後はウウクと遊ぶ。

 ウウクも週5日の学校以外は家事と俺との時間を満喫した。


 ほとんどイチャイチャしてるだけだけど。


 ただ、時間があるときはウウクもナイフで狩りに行き、見たこともない獲物を持ってくることが週に一回は最低でもある。


 じっとしているのは嫌いみたいだ。

 でも、学校や先生は大好きみたいで色んな事をいつも話してくれる。


 昨日も“鳥さん誰だ?”という遊びを説明していた。何かと思えば椅子取りゲームに近いらしい。


 それと、既に飛び級で三年生になったウウクの友達に【ジョー】という男性が居る。


 彼はスコットさん、スティーブさんのチームメイトで、ベンリーだった。

 スコットさんの調査結果を待っていたあの日、スティーブさんと一緒にテーブルで待っていたムキムキのプロレスラーみたいな人だ。


 日本と比較したら栄養の少ないこの世界で、ウウクを凌ぐ身長と体重、そして服に収まりきれないと感じるほどの筋肉を持つ長い赤毛の男性だ。

 

 一度ご挨拶したが、口数の多い方ではなかった。でも、誠実で、優しさと力強さを感じられた。ちょっと荒っぽいらしいが。 


 そんな毎日を堪能している。


 そして、いつもの様にシャワールームへ行く。


 先に帰った方がシャワーのお湯を用意するのだが、そのお湯で俺は土で汚れた衣類を洗濯する。

 仕事には専用の衣類を用意し、週末に洗っている。


 今日は金曜日に当たる日で、明日から二日間休みだ。本当はシフト制だが、今回はウウクと土日は休む。

 ウウクと久しぶりにガッハと遠乗りに行く予定だ。


 シャワールームの上に階段で登り、上に乗っている桶からお湯を汲み、地面に用意したタライへ、ジャーっと流す。

 そしたら食料品店で貰った米ぬかで作業着を洗う。


 適当に干してから、そのままシャワールームに入ると、ウウクが用意した着替えとタオルが既に更衣室に置かれていた。

 

 この土地は秋が短く、冬に雪が沢山降るらしいので、ゴッズさんが言っていたストーブをそろそろ調達しないと不味い。


 そんな事を考えながらシャワーを浴びる。


 紐を引くといつものお湯が流れてくる。これらの道具をウウクもマスターし、その道具の守秘義務が二人の唯一のルール。


 ウウクも元々は狩猟民族で、狩場、相手の事、自分の奥の手など、秘密は必ず守り、時には相手を殺すことも厭わない。


 それがこの世界での二人の豊かな生活環境を支えている。

 

 家電の無いこの世界では、ある程度裕福なら召使や雑用係、小間使い、奴隷を一人か二人は保有するのは珍しくはない。

 ティーゼルさんも事務所の裏で働かせ、宿屋の俺達が使ったシャワーも使用人である彼らが用意した。


 でも、俺達は道具があるから生きてこれた。それは多分間違いない。



_ガチャッ

 「入るねショウタ♪」


 「あれ? ご飯は良いの?」


 「もう出来たから一緒に入ろ!」


 

 ウウクはすっぽぽーんっと服を脱ぐとぎゅうぎゅう押し入りながら入ってくる。


 この新生活を開始して4ヶ月の中で、一番の変化は多分ウウクだ。


 学校に行き、言葉や文字を理解し始め、友達も増え、母星でのサバイバルと闘争の生活が激変。

 俺は正直ちょっと複雑な心境でここでの暮らしをしているが、ウウクは心底喜んでいる。

 

 それはまさに電気も水道も何もない生活、差別と貧困、社会思想的な弾圧と抑制から、自由を許された社会での生活を謳歌する人間特有の物だと感じた。


 まぁ、そこまででは無いにしろ、ウウクは今の俺との生活を人生の中で一番幸福だと言ってくれた。

 親や兄弟への寂しさを聞いたが、「しょうがないよね」 と一言で返された。

 

 そして、

 

 『私はウウク。運命の神様だから、次の運命でまた会えるわ』


 っと語り、俺との運命を今は楽しむと言ってくれた。



 そんなウウクなのだが…。



 「ウウク、ちょっと狭いよ」


 「え〜!? そんなこと言わないでよ!!」



 そんなに狭くないシャワールームなのだが、最近一緒に入ると少し狭い。

 なぜなら…



 「もぉ、こんなにぷにぷにでぇ」


 「お腹さわっちゃいや〜♪」


 

 ウウクはちょっとぽちゃりして、さらに胸が育った。


 出会った頃は野性的でスレンダーな巨乳だったが、今ではグラマーな爆乳になってしまった。

 もともと細いので、肉付きが良くなった体型は全く違和感は無いが、お腹が健康的に摘めるようになった。

 以前が減量したボクサーなら、今はまさにグラマラスなレディだ。


 何よりも、力を使うのが竈(かまど)の火起こし程度で、行き場のない超流動体エーテルがどんどん胸に集中し、育ていった。

 

 学校でも小さな男の子や女の子が、大きな体格も含めて興味津々らしい。

 なので、刺繍が入ったおしゃれな紺色のポンチョを新しく新調して普段着るようになった。



 「ウウクのおっぱいは気持ちいいけど、小屋の中が狭くて体が洗いにくいなぁ」


 「いいじゃん♪ 私が洗うんだから♪ ほらほら石鹸貸して!」



 ウウクはそう言いながら俺の手からオリーブ石鹸を取り上げると、いつものように胸や体につけながら手ぬぐいを泡立てる。


 そのまま俺を対面で胸を上下にこすり付け、サンドイッチの様に背中も洗ってくれる。

 必然的にウウクの胸の谷間やお腹にこすられ、以前にも増して気持ち良い。


 あの身長と体格でも、平気で開脚などの柔軟ができるので、屈伸運動も難なくこなす。

 それがまた心地良い。


 次第に俺の体全体からお尻や耳の裏、顎の下などの細かいところを洗い、最後に一番大事なところを入念にをしごくように洗う。


 ウウクは手でしごきながら太腿に足を絡ませて来る。俺は我慢できずにウウクの舌にむしゃぶりつく。



 「ちゅ、はぶ、ちゅぱっ…ウウクのエッチ」


 「んふふふ♪ 好きなくせに♪…っチュ♪」



 ウウクは俺の唇を味わうようにキスを繰り返す。


 

 「ん♪ じゃ今度は頭ね。ショウタ、お目目閉じててね♪」


 「お願いします。」



 ウウクは嬉しそうに体をこすり付けながら対面で洗髪をしてくれる。


 彼女はスキンシップがとにかく好きで、何かあればどこか体の一部を触りたがり、いつだって手を握りたがる。

 俺もウウクの体と触れ合えるのが大好きだが、あそこまで胸が大きくなると、触るのをちょっと遠慮してしまう。マッサージをしすぎるのだろうか?



 「見てみてショウタ! すごい髪型♪」


 「いや、見えないし。自分の髪だから。どんな感じ?」


 「ガッハの角みたい♪ モー♪」



 ウウクが俺の髪でさんざん遊んでからシャワーを一度流す。

 ウウクは甲斐甲斐しく俺の頭をすすぎ、全身の泡を取ってくれる。



 「今度はウウクだね」


 「ねぇ、ねぇ、先に胸でしよ」


 「これ以上大きくなったらどうするの?」


 「平気♪ そしたらどっかで雷いっぱ出すから♪」


 「そういうもんかな?」


 「いいの! 気持ちいいんだし、困ってないんだから。ショウタも好きでしょ? おっきなおっぱい♪」


 「まぁ、はい。大好きです」


 「ならしようよ。ずりりん、ぱいずりりん♪」


 「…なんじゃそりゃ?」



 ウウクは最近買った木製の小さな椅子を隣の更衣室から引き寄せて、その椅子の上に腰掛けた。

 この高さが一番洗いやすいと力説している。


 桶のお湯で手ぬぐいと石鹸を泡立てて、胸の中でさらに泡立てる。



 「はい♪いらっしゃい♪」


 「お邪魔します」



 俺は立ったまま正面の上方に構える乳肉の凱旋門にゆっくりと突き刺す。

 そのまま胸の谷間の斜め下から貫通させ、腰を前に突き出すと胸がひしゃげてウウクの顎先に、こんにちはをする。

 その状態でウウクが腕を寄せて、胸をギュッときつく締めながら体を上下に振り、大好きな胸洗いを始める。

 俺もそれに合わせて腰を振ると、部屋の中にギュッポギュッポと淫靡な音楽が奏でられる。



 にゅっぷにゅっぷにゅっぷにゅっぷ


 「ショウタ気持ち良い?」


 「あぁ、大きくなってからの良さが今まで以上に半端じゃ無いよ」


 「良かった♪ あ、もうちょっと右に角度向けて」


 「はい」


 「逆!」


 「あぁ、もぉ、はい」


 「いや〜ん♪」



 まさに読んで字のごとく乳繰り合うのを俺達は楽しむ。


 ちなみに街の雑貨屋さん曰く、俺達二人がこの街で一番頻繁に石鹸を買うお客さんらしい。

 




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 そのまま一回戦、ウウクの中にプレゼントしてから体を洗い、家の中に入る。


 夕食に用意されていたお魚とビーツのスープが冷めてしまったので、スープだけ温め直す。


 ほっこりした顔のウウクが、冷蔵庫から焼酎の空き瓶に注いだレモン水を取り出して、二人分カップに注いでくれる。


 自家製冷蔵庫はちゃんと冷えるが、冷媒の近くに置き過ぎると凍るのがこの冷蔵庫の難点だ。


 二人でスープの温まるの待ちながら食事を取ることにした。



 「「頂きます」」



 ウウクが作ってくれた食事を取りながら談笑し、今日あったことを話し合った。



 「でさ、結局当たらなかったんだ。やっぱり遠いと当てられないよ」


 「うーん。待ち構えるしか無いんじゃないの?」


 「そうだけど、銃は離れた的に当てられるのが長所だから、そもそも狙えないと話にならないんだ」


 「ブラスターじゃダメなの? 一応、力を抑えればいいんでしょ?」


 

 ウウクは道具の特徴を俺から見聞きしているので唯一の相談相手だ。



 「あれだと遠くは無理なんだ。しかも、そのままの威力で当たると黒焦げか、爆発しちゃって食べられなかったし」


 「なんで遠くが無理なの? 届いてたじゃん?」


 「いや、一応弾は届くけど、威力が低すぎるし、ハンドガンじゃ狙いが安定しないんだ。俺は訓練されてない素人だし、我流だから余計に不安定でさ…」


 「でも、ポンプガンじゃ強すぎるんでしょ? この前もちっちゃなイノシシ撃ったら木っ端微塵になって食べられなかったし」

 

 「う〜ん、だから水鉄砲にしたんだけど…」


 「当たらないんでしょ?」


 「そうなんだよ……やっぱ散弾銃かな…」


 「狩りなら私がやるから良いんじゃないの?」


 「う〜ん、いざという時の為に今のうちに生き物を撃つのに慣れたいんだよ…」


 「無理しなくても良いよ? 他のこといっぱい助けてくれてるから」


 「でもな〜。弾がな〜…」



 俺の思案に飽きたウウクはクスクスをパクパクと食べ始める。

 美味しそうに食べる姿は小憎らしいほど可愛らしい。


 ブラスターの射程は短い。それにそのままの威力で撃つと着弾して爆発するので、パワーを落とす必要がある。しかし、パワーを落とすと今度は対象を仕留められず、軽いショックを与えるだけで逃げられる。微調整も難しい。

 

 ポンプガンは拾った石を撃つのだが、弾が不安定なので狙い通りに飛ばないことが多い。

 威力を上げると弾道の精度は向上するが、発砲の衝撃で狙いはブレる。

 しかも威力が上がりすぎて対象を大きく破壊してしまう。3回ポンプを以前にも試したが、直撃した石が破裂し、対象をふっ飛ばしてしまい食べられる状態ではなかった。


 専用の弾でもライフルでもないので命中精度は低いし、自分の技量もまだ低い。

 そもそも近づくと逃げられることが多い。

 

 なのである程度離れたところからでも確実に当たり、相手をミンチにしないようにしたい。

 

 そうなると恐らく散弾銃だろうが、そんなものは無い。

 

 どうしたものかと考えながら食事を取る。


 目の前のウウクは食べこぼしたクスクスの粒を、指でつまんで食べ始めた。


 粒々を。


 そのときに閃いた。


 あ、そっか。弾、作ればいいんだ。




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