第11話 道具を使ってみた
ep.2-6 day / 2
目が覚めた。
背中でサバイバルシートの暖かさを感じる。
横からはウウクのぬくもりも感じる。
顔を向けるとウウクの寝顔が目に入る。
シートが俺達の汗でベトつく。
さらに体には体液と少量の血が付着している。お互いにあまり清潔とはいえない。
俺はTシャツだけ着てテントの外に出た。
“バイオパック”(貰ったサバイバルキットの入った深緑色のボストンバッグ)の中からタブレットで覚えた道具を取り出す。
小型の鍋と、【生体型水質ろ過装置】。
さらに例のポンプガン。そして、昨日使って干したタオル。
これらを持って湖に向かった。
まずは湖の浅瀬で軽く泳いで体を洗う。
ちょっと冷たすぎるくらいだが我慢した。
湖から上がってタオルで拭いたら、そのタオルをゆすいで絞る。
ウウクの体を拭いてあげたい。
次は小鍋に、“ろ過装置”で水を汲んで注ぐ。
使い方は灯油を汲むポンプとほとんど一緒。
吸水ノズルを川の水に伸ばし、排水ノズルを小鍋に入れてボタンを押すだけ。
昨日はそのまま真水を飲んだが、やはり心配だ。ろ過装置があって本当に良かった。
そしてこのろ過装置も生物素材でできている。
イソギンチャク男は水棲生物なので、地球の科学のような機械的な作動機能は一般的では無いようだ。
水の中で活動するから当然かも知れない。
ろ過生物は浄水して取り除いた物質をエネルギーに活用し、不要な物は廃棄される。
つまり糞を出す。これを利用して綺麗な海水を飲ませれば、塩が廃棄されて出てくるので、食塩が手に入るらしい。
鍋いっぱいに水を満たすと、排出口から出続ける水を直接飲む。
すごく美味い。精製水などではなく、不純物や有害物質を取り除いたミネラルウォーターだ。
水分なら海水でも、泥水でも、尿でもろ過できる。
ただ、塩はバイオバッグの中に用意さていたのでしばらくは平気だ。
そして本題はコレだ。
ポンプガン。 【
弾の挿入口に入る物なら、何でも超高圧力で射出する。
凄いのが、それとは別に生体部分が水を吸収して、それを打ち出す事ができるウォーターガンにもなる。
試しに装弾口を引いて石ころを入れてみる。直径5cmくらいまでの物ならなんでも入りそうだ。
入れると生体がゴクリっと飲み込み、本体の中に消えていく。
セレクターのレバーは ←【安全】↑【物体】→【水】 で切り替えられる。
物体にレバー合わせ、まずはポンピングしないで湖の真ん中を狙った。
引き金を引くと、排出され、ゲロリと吐き出すように石ころが銃口から出てきた。
次も同じくらいの石をもう一度装填し、一回ポンピングする。
同じように湖の真ん中を狙って引き金を引く。
_ボシュンっ!!
ドシャーーーーーーーン!!!!!!!
……。 凄い水柱が起こり、水鳥が逃げていった。
ダーティー・ハリーで、44マグナムで車を撃つシーンがあるけど、多分、あれより威力が有ると思う。
「ショウタァァァァァァァ!!」
振り返るとウウクが裸でこっちに走ってくる。
「ショウタ大丈夫!? 今の音は何!?」
ウウクは慌てながらも俺の前に立って俺を庇うように周囲を警戒する。
「いや、ごめんウウク。 昨日説明した武器を試しに使ったんだ。驚かせてごめん」
「…はぁ、そう。びっくりした。飛び起きたらショウタが居ないから…」
そう言ってウウクは俺を抱きしめてくる。
初夜を終えたばかりに、こんな事になるなんて、可哀想なことをしちゃったな…。
俺も抱き返し、背中を擦り、頬にキスをする。
「ねぇねぇ♪ 早く早く♪」
「ちょっとまってよ」
しかし、あの後すぐにウウクは撃つ所が見たいとせがんで来た。
俺はTシャツ一枚。ウウクは裸。せめてパンツくらいは穿いてくれ。
服を取りに行く間にウウクに水浴びをするように伝えて、俺は二人の衣類を取りに行く。
本当はウウクが起きたら、甘いひとときを過ごしたかったのだが…。
気を取り直して持ってきた服でお互いの身を整え、ウウクに鍋に汲んで用意した水をあげると喜んで飲んでくれた。
その間に石を拾い、ポンプガンに水も入れる。
装弾数を確認するために石を入れ続けると、5個入った。
水はよく分からないので湖の水の中に沈めて、生体が吸わなくなるまで浸した。
ポンプガンは引く回数が増えるごとに威力が上がった。限度は3回まで。でも、1回で十分だ。
ウォーターガンも3回の制限まで圧力が加えられた。
引き金を引いている間は水が発射され続けるので、引き金の引き方を調整して水を出し続けたり、小出しにしたり出来た。
ただ、すぐに圧力が落ちるのでこまめにポンプしなければならない。
使ってみると本当にただの水鉄砲みたいな感じだったが、石に向かって撃ったら真っ二つに切れた。
ウォーターカッターだ。恐ろしい。
ウウクはそんな様子を見て大はしゃぎしていた。
すごい、とか。きゃー、とか。かっこいい、とか。
自分でも撃ちたがり、触って引き金を引いてみたが、やはり出なかった。ランプが赤く切り替わってしまう。
そこで、二人羽織みたいに俺が後ろからグリップと銃身を握り、引き金を触れる俺の指をウウクが握る。
するとランプは緑のままだ。そのままポンプし、石をぶっ放すと射出音とともに水面に着弾して大きな水しぶきが上がる。
ウウクはキャッキャと今日一番の笑顔を俺に向けた。
テントに戻ると食事を取った。
昨日切った肉を焼き、さらに残りを干し肉にするために塩水につける。
さらに、バイオパックの中にはレーションがあったので食べてみた。海藻のペーストみたいで、水に溶いて飲むらしい。
磯臭い様な独特な香りで、味は良くなかったが、無害だ。でも口にしたウウクは泣きそうな顔をした。
その後はテントの中に戻り、床を掃除して休憩することにした。
当面はこの辺を巡回し、近隣を調べ、保存食等を作ることを相談した。
そしてウウクには幾つか渡すものがあった。
バイオパックの中にウウクに最適なものがあったのだ。
まずナイフだ。【スイッチブレード】。
硬質ゴムのハンドグリップみたいな、四角い物体を取り出す。
護拳(ナックルガード)が付いており、そこに指を入れる。
正しく持ち、力を入れて握ると刃が出てきた。
材質は鉄ではなく、植物製で、特に研いだりする必要は無いらしい。
石ではない刃物が珍しいウウクはこれにもはしゃいだ。
柄の部分のアナクロな歯車のようなダイヤルをくるくる回すと刃が引っ込む。
面倒くさいので鞘を作ったほうが良いかもしれない。
あとはペンダント。【ペンダント型緊急用ビーコン】。
ターコイズブルーに輝く綺麗なペンダントだ。
このペンダントを強く押すと、マザーシップへの緊急ビーコンを発信できるのだが、船はもう無い。ただ、そのビーコンはタブレットでも送受信できるし、ペンダントも検知する。
つまり、タブレットとペンダントはお互いに信号で繋がっているので、見失ったら信号を頼りに探すことが出来るのだ。
本来はバイオパックなどに付けて持ち物の紛失を防ぐのだろうが、もしもの時の為にウウクに渡す。
使い方を教えて、ウウクの首に掛けてあげる。
大きな胸の間にキラキラと輝く青い光は神秘的な美しさで、ウウクをより一層魅力的にした。
彼女は潤んだ眼差しで見つめてくる。
俺はそのまま彼女にキスすると、彼女の唇は歓迎してくれた。
歓迎を受けて舌を差し入れると、彼女の舌がより情熱的に出迎えてくれる。
昨夜の続きが始まった。
あれからずっと続けている。
4回目くらいからウウクは痛がらなくなってきた。
そして日が暮れた頃には、ウウクも慣れてきたのが見て取れる。
俺は正直ずっと我慢し続けて、やっと出来たのが昨夜の1回だけだから溜まりまくっていた。
それにウウク相手だと興奮の度合いも半端ではなく、いくらでも出来た。
いつの間にか日が沈んでいた。
深夜も過ぎた。
今が何時なのか見当もつかない。
ウウクから全身の力が抜るのを感じたが、ウウクは俺に絡めた足を解こうとする気配がまるで無かった。
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