第7話 高原にて

ep.2-2 day / 1





 もみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみもみ


 ふにふに たぽたぽ


 スリスリ さすりさすり


 もにもにもにもにもにもにもにもに



 「なぁ、ウウク」


 「ん〜? なぁ〜に〜?」



 ウウクは俺の胸に寄りかかるように大きな体を預けているので、俺はウウクを抱きしめる体勢で背後から胸を揉んでいる。


 俺も気持ちいいが、ウウクもマッサージを受けているかのように気持ちよさそうに俺に身を委ねている。



 「ポッドの扉開いたから、外に出てみるか?」


 「でも、ショウタおっぱい吸わなくていいいの?」


 「うっ!」



 そうなのだ。おっぱいは赤ちゃんが吸うのが一般的だと話したら、ウウクは俺にも吸っていいと言ってくれたのだ。

 そしてウウクは俺に胸を揉まれていると、体感的に超流動体(エーテル)の吸収効率が上がっている気がすると言うのだ。

 

 お互いに気持ちよくって、超流動体(エーテル)が溜まるなら一石二鳥と胸を揉み続けていたのだ。



 「したいけど、このままって訳にも行かないからとりあえず出よう」


 「んっ…。 分かった」



 正直、ずっとこのままでというわけにも行かない。ちょっと辛い。

 微妙にポジションを直しながら揉んでいたのだが…バレてるよな?

 


 お互いの身なりを整え、脱出ポッドの外に出て、クレーターの中心部から斜面を登る。

 巨大なクレーターの坂をウウクと手を繋いで歩き、そのクレーターを登った先には霊峰とも呼べるような山々が眼前にそびえていた。


 俺達が到着したのは高原のような場所だった。巨大なクレーターが出来上がった高原をウウクと一緒に歩き、周囲の美しい緑豊かな自然環境を見渡す。


 囲むようにそびえ立つ遠くに見える山々。その下を彩る深い森。そして俺達がたたずむ高原を下った先には大きな湖が見える。


 正直、他の惑星というよりカナダとかスイスと言われたほうがピンとくる。

 地球と自然環境が似ているってのはこういう所だろうか?


 俺は自分の黒いバックパックを肩に掛け、イソギンチャク男からもらった深緑色のボストンバッグを手に持っている。

 ちなみに俺のバッグの中に俺のスマホが入ってたが、バッテリーは切れてた。

 貰ったバッグの中身は開けてもよく分からなかったのでとりあえず保留にした。


 ウウクは手ぶらだが、裸足なのが良くない。

 何か靴の代わりになる物が欲しい。



 「ウウク、歩けるか?」


 「平気だけど、砂利道は行きたくないな。足を切っちゃいそう」



 最初は俺の靴を履かせようとしたが、サイズが合わなかった。…小さかったのだ。


 そんな中、ウウクをじっと眺める。


 俺より大きな身長・手・足・胸。そして綺麗な横顔。

 なのに可愛いこのアンバランス。



 「なぁ、ウウクの変身ってどんな感じなの? 容器の中に入ってた仲間の竜って俺とおんなじ位の大きさだったぞ」


 「うーん、ここの超流動体(エーテル)はそこそこ濃いから、1週間位したら準備はできると思うよ?そしたら、季節が変わるくらいまで繭になるの」


 「繭?サナギみたいになるのか?」


 「そうそう。 一時的に卵に戻る感じなの」


 「そいつは大仕事だな…。でも、なんで俺とあった時には竜から人型になってたんだ?」


 「それは私にも分からないの。気が付いたらなってたから…。 あ、そうそう。私はね元の大きさなら今の倍くらいにはなるよ♪」


 「へ? 倍くらい?」



 約180cm×2=360cm



 「お、大きいね…。」

 

 「ね?良いでしょ? 私は仲間の中でもとびっきり強くて大きくて立派だったの。だからモテたのよ?」



 …厳ついマッチョなモテモテ♀ドラゴン…。



 「ははは…。もしかして、恋人とか居た?」


 「候補者は居たんだけど…ちょっと合わなくて…ね?」


 「性格の不一致ってやつ?」


 「………体格の不一致よ」



 つまり、立派すぎて釣り合わなかったのか。






 しばらく周りを歩き、俺は木の枝を拾った。薪が欲しかったのだ。


 正直見知らぬ土地での探検は不安だったが、ウウクが大丈夫だとハッキリと言ってくれた。

 彼女のその物言いと眼差しは、現代社会の人には醸し出せない魅力と逞しさがあった。

 きっと話してくれた故郷での狩猟生活が影響しているのだろう。

 しかし、彼女の狩猟方法は度肝を抜いた。



 俺とウウクはポッドの近くの大木を拠点にすることになった。


 薪を拾ってはそこに運ぶ作業を繰り返していると、側に居たウウクが何かに反応した。



 「ショウタ。ここで待ってて。」



 そう言ってウウクは着ている服を脱いで裸になり、林の中に入っていく。


 訳も分からずウウクの後ろ姿を見ていると、ウウクは自分の腕をいきなり噛み出した。


 (!?)


 面食らって見ていると、ウウクは自分の血を口に含み、木の根元や、草木に痰を吐くようにして掛けていく。

 そして、そのままウウクは林の奥に向かって行った。



 「何だ? あれは?」



 理解できなかった。マーキングの一種だろうか?

 

 こりゃ見に行ったほうが良いかな? そう思った次の瞬間。



_バチチチバチッッッッ!!



 林の奥でスパークするような音が轟いた。


 ビビって音のする方向をしばらく見ていると、ウウクが歩いて戻ってきた。


 右手では何かを引きずっている。



 「お、お帰り」


 「ただいま。獲物だよ。こいつを食べましょう」



 ソレはおそらくネコ科に近いであろう肉食動物らしき生き物だった。


 裸のままのウウクは仕留めた獲物と、その辺の石を砕いた石器を持って湖に向かった。


 湖のほとりで、石器を使って器用に内臓を摘出すると、ウウクは湖に流れる川へと移動し、首を切った獲物を沈めた。


 多分血抜きをしているのだろう。


 そのまま、水浴びをしたウウクは俺の方に向かって歩いてくる。

 丸裸で、大きな胸が歩調に合わせてリズミカルに跳ね、黄色い体毛からは水が滴っている。



 「大丈夫かウウク? 風引くぞ? なんで裸でやったの?」


 「私の服はあれしか無いから汚したくなかったの。水も最初から浴びるつもりだったからいいの」


 「にしてもその腕はどうしたんだよ? なんでわざわざ噛んだんだ?」


 「ここでの初めての獲物だからどんな奴か知らないし、逃げられてショウタを狙われても困るから私を狙わせたの」



 ウウクはそう言うと朗らかな笑みを浮かべた。


 それはとても綺麗だった。







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