第30話 待望のシャワールーム

ep.5-7 May 9 /T0059





 前回のあらすじ。


 この土地、この街で暮らすことになりました。


 二階建ての素敵な木のお家を、ダンディなおじさまに借りました。


 それからお仕事だって見つけちゃって、学校にだって行くんだよ。


 あとはシャワーを作るのを、ゴッズさんと言う方にお願いするだけ。


 そ、そしたらと〜んでもない人が来ちゃったの!!





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 「……ゴッズさん? え?」


 「ん?どうした?」



 俺は夢を見ているのかと思った。

 緑色の豚が、立って、服着て喋ってやがる。


 妙に小奇麗で滑舌も良い。



 「えと、人間ですか?」


 「ああぁ、お前、獣族見んの初めてだか?」


 「…? じゅうぞくですか?」


 「おお! 獣族だ。オイラは獣族のピピン人だ。おめぇは人族の……? なに人だ? まぁええ。そんなだ」


 「はぁ」


 

 そんなってなんだ。



 『うぁぁぁぁ!!!? 豚立ってるぅぅぅぅぅ!?』



 ウウクが俺の横からゴッズさんを見て驚いている。



 「おんだ? おめぇもオイラのこと知らねーのか? まぁ、仕事の前に自己紹介すっかな」



 そう言うとゴッズさんは一歩後ろに下がり、自己紹介を始めた。



 「オイラは南の南の大陸から来たピピン人のゴッズだ。ギルドのベンリーとしてシャワーを作りに来ましただ」


 『喋ったぁぁぁぁぁぁぁ!!??』

 「あ、依頼したショウタです。よろしくお願いします」


 「その娘っ子はうるせぇな。アンタがショウタだな? 先に場所と見積もりの話をすんぞ?」


 「はい…。お願いします…」



 夢と魔法や冒険と想像の世界でもコレは無いな…あ、スター・ウォーズには居たかな? こんな奴。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 ウウクは今までの誰よりもゴッズさんに興味を持ち、ジロジロと見ている。


 一挙手一投足をつぶさに観察し、近くで見ている。

 ガン見だ。



 「なんだこの娘っ子は。デカイくせに肝っ玉のねぇー奴だな。初めてのピピン人がそんなに珍しいだか?」



 いやぁ、珍しいなぁ。



 「すいません、俺もウウクも島から出たこと無くて、この土地に来たばかりなんです。クリチャーの存在も知りませんでした」


 「ほおだか。んだら、しょーがねえな。で、どこでやるらー?」

 

 「えと、こっちの南側の井戸の直ぐ近くに」


 「ふんふん。なっほど。井戸に近いから水汲みも簡単だ。おし、大きさも前と変わんねーならすぐできるだ。それでええだか?」


 「構いませんが。どんなふうに使えばいいですか? 宿屋で用意して貰ってたのを使ってただけなんです」


 「更衣室とシャワー室に木と石で作った桶を乗っけて、その桶をクリーチャーの皮膚で覆うだ。

  後はヒモで引っ張れば水が出る仕掛けを仕込んで、階段で登って水を入れるらな?

  そったら、水の入った桶に焼いたアッツ熱の石をぶち込んで沸かすだ」


 「なるほど。桶の中に水を入れて、焼けた石でお湯を沸かすと?」


 「そうだぞ。毎回お湯を沸かして汲んだら大変だら? そんでオイラはお願いされてコレを考えただ」


 「一応前回と同じ額で依頼しましたがどうですか?」


 「それだよ。見積もりだがな、あれから同じのが欲しいってちょいちょい言われっからさ。

 オイラ材料は作って保管してただ。だから直ぐ出来っから130ディルでええぞ」


 「本当ですか? 助かります。何か手伝いますか?」


 「いやぁ、依頼人に手伝わせるなんて恥ずかしい真似はしねぇだ。こっちでやっから昼寝でもしててええだ」


 「分かりました。何かあれば言って下さい」


 「じゃぁよ、オイラの仕事中は悪りぃけど近づかねぇでくれろ? ちょいと危なくてな。家から出ねぇでくれ」


 「? はぁ。わかりました」

 


 俺はウウクに説明し、ウウクと一緒に部屋の中で待つことにした。


 ウウクはソファの近くの南側の窓からずっとゴッズさんの仕事を見ている。

 俺も一緒に見ていると、ゴッズさんは器用にガッハ達を引き連れて、荷車を三台運んできた。


 その後、ガッハ達を作業場から離れた木に括りつけると、鞄の中から作業服の様な黒い服を着始めた。


 着替えるとまっ平らな地面に、一つの荷台から取り出した四角い石を並べ始める。

 それは次第に綺麗な土台となり、水の流れる溝も掘られていた。


 さらに荷車に載せられ、半分くらい出来上がっている更衣室らしい木製の箱をヨッコイショと持ち上げ始めた。


 ……凄い筋力だ。信じられないパワーだ。

 工事現場の仮設トイレ二台分くらいの木箱を軽々と持ち上げた。

 これが獣族か。


 ウウクも横で「おおぉぉぉ!」と感嘆の声を上げている。

 

 ゴッズさんはその調子で木箱をヒョイヒョイと運び、土台に乗せ、階段を付け、釘を打ち、何かを敷き、桶を載せて、仕掛けを取り付け始めた。

 まさにあっという間に終わり、2時間も掛かっていなかった。


 物音がしなくなると、ゴッズさんは着替えて大工道具を片付け始める。


 周りのゴミや出来上がった更衣室とシャワー室、さらにその連結部分や周辺を綺麗にチェックしてくれていた。


 とても綺麗な仕事だ。下手な大工よりも丁寧だと素人目に分かる。



 「おぉ〜い! 出来ただ! 来てえぇーぞ!」

 

 「ウウク! 出来たって見に行こーぜ!」

 「うん♪」 



 外へ出てシャワー室へ向かうと、立派な木製の小屋が出来上がっていた。



 「「おおぉぉ!!」」 思わず二人揃って歓声を上げた。

 

 「んだら、中を説明すンぞ? ええか?」



 そう言いながらゴッズさんは中に入っていく。

 俺とウウクはそれに続く。とてもあの短時間で作ったとは思えない出来だ。



 「入って直ぐに更衣室だら。この棚に着替えを置けばええ。この端っこの煉瓦の場所はストーブ置き場だ。

  小型のストーブか、炭ツボを置けるから好きにしろ。危ないから柵も付いてる。

  ンで、こっちのドアがシャワー室だ。箱と桶の間にクリーチャーの皮を敷いて、桶も覆ってある。

  そんでこのヒモ引けばお湯が出る。止めたかったら離して、出しっぱならこのフックに引っ掛けろ。

  何かあっても上から落ちてくることはまず有りえねーが、壊れたりしたらオイラに言えよ?」

 

 「おぉ! ありがとうございます」

 

 「よし、ほだら、次は水と火だ。外に行くぞ」



 ゴッズさんが外に出ると小屋の裏手に回る。そこには木製の階段が付いていた。



 「普通にこの階段を登って桶に水を入れろ。ンで、いっぱいになったら竈(かまど)やら何やらで熱くした石ころ放り込めばええ。石ころもちょっとデカイ方がええな。

  ほんで石はちゃんと洗えよ? 使わない時は桶にこの蓋をして、葉っぱとか入んねーよーにしろ。掃除だけはしっかりやれ。どうだ? 大丈夫か?」


 「いや、大丈夫です。バッチリです。」



 思ったよりも簡単な仕掛けだ。これならバイオパックの道具で楽勝だ。



 「そだら130ディルだ。よろしくお願いします。ギルドで受け取るからこちらの書類にサインして、ギルドに金を渡しといてくれ」


 「分かりました。本当に助かりました」



 俺が書類にサインをすると、やはり漢字に興味を示し、尋ねられた。

 

 手続きが終るとゴッズさんはガッハ達を荷車に繋げ、別れを言って帰っていった。

 サッと来て、サッと終わらせて、サッと帰ってしまった。


 あれが、なんでも出来るゴッズさん。まさにベンリーだ。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 ウウクは出来たばかりの小屋に出たり入ったりして遊んでいた。

 秘密基地みたいな気分なのだろう。


 俺は早速シャワーの準備を始めた。

 

 もちろん井戸の水汲みなど面倒くさいことはしない。

 飲料水と同じように、ろ過ポンプの吸水口を伸ばしてポンプで汲み上げて桶に注ぐ。

 

 かなり大きな桶だ。風呂としても使えそうだ。


 お湯を温めるのも、石を焼くのは危ないのでバイオパックから道具を取り出した。


 【発電菌電熱機バイオサーモヒーター】という電熱機。

 発電菌が光合成とエーテル消費で電熱し、水を温める。

 見た感じはただの油用の温度計。

 熱帯魚の様な水棲型生物が水温を一定に保つ為に使うもの。


 これの設定温度43、4度にすれば良いが、表示される文字が読めないのでお湯を触って確認しながら温度を上げてそれを設定するだけ。

 

 道具で水を溜め、ヒーターを入れたら待つ。

 水はいいのだが、温度の設定がぬるいので、徐々に温度を上げながら様子を見る。

 この桶から下の小屋にシャワーとして流れるなら、冷めることを考えて、ちょっと熱めにすれば良いはず。


 試しに下で軽くヒモを引くと、少し熱め? くらいのお湯がちゃんと流れてきた。


 コレでいいや。



 「ウウク〜? シャワー出来たよ〜」


 「は〜い♪」



 ウウクは家の中から出てきた。昨日着替え用に買ったホームウェアの布の衣類と、その上にピチピチの俺のパーカーを着ている。


 

 「どうしたのウウク? パーカーなんか着ちゃって?」


 「だって今日はお出かけしないでしょ? 明日から学校で会えないなら、今日はいっぱいエッチしなきゃ♪」


 「…うんそうだね?」


 

 とにかく俺のパーカーはお気に入りらしい。


 念の為に家に鍵掛け、小屋に入ってからも中から鍵を掛ける。


 二人ではちょっと狭い室内で服を脱ぎ、備え付けの棚へ衣類やブラスターを置く。


 ウウクもペンダントとタグを外し、俺のブラスターの近くに置いた。

 

 明かり取りの小窓しか無い薄暗い小屋の中でウウクの裸と対面すると、いつもと違う情欲が湧いた。


 「それじゃ入ろう」


 「うん♪ 洗ってあげるね」



 そう言いながらウウクは手ぬぐいと石鹸を持って俺の背中を押してシャワー室へと入る。


_シャァァァァァ


 ヒモを軽く引くと少し弱い勢いでお湯が流れ始める。


 お互いの体を濡らし、手ぬぐいと石鹸を濡らして泡立たせる。


 一度お湯を止めるとウウクが俺の腋の下を洗い始めてくれた。


 少しくすぐったくてウウクに抱きつくと、ウウクは俺を抱いたまま洗い続ける。

 

 脇、胸、お腹にはチュッとキスをしてから、太腿や足を洗ってくれる。


 それに合わせて後ろを向いて足を上げ、裏を洗ってもらう。

 その流れで膝の裏やお尻、背中まで、ソープランドもビックリなご奉仕洗体をしてくれる。


 俺もお返しに用意してある桶に入ったお湯で手ぬぐいを新たに泡立て、ウウクを洗う。


 ウウクの腋の下は薄めだが金色の毛が生えており、次回剃ってあげようかと思案する


 その腋の下から脇腹へかけて洗うとウウクはキャッキャと、くすぐったそうに逃げるので、捕まえて洗ってあげる。

 同様に胸、お腹、太腿から足へと、ウウクと同じように洗い、後ろを向かせて足の裏も洗う。

 背中も全部洗うと、ウウクの長めの髪も洗ってあげると伝えた。


 石鹸はマルセイユのオリーブ石鹸そっくりで、宿屋でも散々使った。ウウクも髪の毛を定期的に洗うのを喜んだ。


 対面しながら石鹸を髪につけて泡立て、指の腹で美容師のように頭皮から洗ってあげる。

 目を瞑ったウウクもニコニコしながら俺自身を石鹸で洗い始めた。


 「痒い所ある?」


 「大丈夫。ショウタはどう?」


 「気持ち良い」


 「私も♪」



 そのまま洗い続けてから背中を向かせ、髪の全体や毛先も洗う。ウウクはその間も手を後ろに回して俺自身を洗いながらしごいた。


 「お湯流すよ?」


 「うん♪」



_シャァァァァァ


 ヒモを引いて流れるお湯の量を調節してフックにかけて固定する。

  

 流れに任せながらウウクの髪を濯ぎ、石鹸を綺麗に取りながら頭皮も洗う。


 一通り洗いシャワーを止めると、ウウクは腕にからませていた髪紐で器用に髪をまとめて結った。


 いつもと違うお団子の様な髪の毛は、俺に新鮮な気持ちを与えてくれた。


 

 「ウウク。その髪型も素敵だよ」


 「ほんと? じゃ、たまにこんな感じにもしてみるね♪」


 「いいね。もっといろんなウウクがみたいな」


 「うん♪ 見せてあげる♪」



 そう言うとウウクはキスしてくれる。


 口の中にウウクの優しく柔らかで長い舌を舌で抱きしめながら舐め合う。


 その行為を少し続けると、ウウクは俺を再び触り始めた。


 クニクニと先端を撫でて揉みほぐす。


 俺もウウクの胸を対面状態で揉み、正面からウウクの好きな乳搾りをしてあげる。


 するとウウクは空いた手で自分をいじり始めた。


 舌の絡み合いとウウクの音が木造のシャワールームに木霊し、足元の排水溝からはお湯がチョチョロと外へ流れる音が聞こえる。


 

 「ショウタの髪の毛も洗わなきゃ」


 「じゃぁ、お願いできる?」


 「任せて♪」



 ウウクは手に持っていた石鹸で俺の頭を洗い始めた。

 俺は目を瞑り、ウウクの胸を正面から搾り続ける。


 シャカャシャカと優しく、上から見下ろすように頭を洗ってくれる。

 それはとても心地の良い感触。

 

 そしてウウクは俺を抱きしめるように胸の中に挟み込み、大きな胸に挟んだまま頭を洗い続ける。


 俺はその行為と全身を包み込むウウクの感触に、頭も体も気持ちよくなり一部分が固くなり、ウウクの体に擦り付けるようになる。


 ウウクもそれを理解し、洗髪で手が使えないので触れ合う部分の体をこすり付けて慰めてくれる。


 もう体は十分で、お互いに違うことを求めあっていた。



 「ウウク…」


 「…うん。もう流しましょう」



 抱き合い、俺はウウクのお尻を片手で抱きながら、空いた片手でシャワーのヒモを引く。



_シャァァァァァ



 サーモ・ヒーターのおかげで熱いお湯は保温され、その湯が俺達の全身を包み込む泡を洗い流す。


 ウウクはお湯の雨の中で俺の頭をすすぎ、キスをしながら腰を優しく振ってくれる。


 その後、俺達は着替えるのももどかしく、引ったくるように荷物を持ち、適当に上着を羽織り、ウウクもパーカーだけ羽織った。

 

 出たら小屋を換気する為にドアを開けっ放しにして、さっさと家の中に入る。


 その後すぐ新品の絨毯が敷かれたソファの前で靴を脱ぎ、小上がりのサバイバルシートで続きを始めた。

 

 確かにウウクのパーカーは役に立った。

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