第5話 無法の宇宙

 ep.1-5 day / 1



 前回までのあらすじ。


 翔太くんは会社からの帰宅途中にUFOに連れ攫われました。


 UFOには同じように連れ去られた巨乳美女が居ました。


 連れ去ったイソギンチャク男(自称:タコ型金星人)は他にも400人位連れ去ってました。


 宇宙では一般的な要素が、地球人と女の子の種族には該当しないので、実験の為に捕獲されました。


 今は次の捕獲対象の星まで移動中です。


 以上。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇl!?」


 「まあぁ、そう興奮するな。未知との遭遇はいつだって刺激的だ。すぐに慣れる」


 「いや、ふざけんなよ、犯罪じゃんよ! もはや信じるしか無いにしても、帰してくれよ!!」


 「君たちの文化にもペットを飼ったり、実験動物の捕獲や、絶滅動物の保護と養殖は一般的だろ? 大丈夫だ。法律なんかないし、虐待もしない。資本主義のしがらみから開放されて自由の身だ」


 「いやいやいや!!! そんな理屈はないよ!? 俺は嫌なんだ、帰りたいんだ! 必要なことならなんでもするから勘弁してくれ!」



 俺達がギャーギャー言い合ってると、ウウクがこちらに顔を出した。

 恐らく口論の内容が気になるのだろう。



 「だいたい、害を与えないって言って、何だよあの機械。頭が割れるかと思うくらい痛かったぞ!!」


 「あれは君に施した処置から、言語能力機能を強制学習するためのアプリだよ。おかげで彼女と話せるだろ?」


 「ほ、施した処置ってなんだよ!?」

 

 「君の体内の細胞とDNAと脳へ、超流動体エーテルの摂取と変換が出来るようにしたんだ。凄いだろ?」


 「凄いけど訳分かんねーし、勝手にやるなよ!!」



 その時だった。


【ブー!】【ブー!】【ブー!】【ブー!】


 部屋の中に非常警報の様な、赤いランプとサイレンが大音量で流れ始めた。

 

一目で分かる緊急事態警報だ。


 イソギンチャク男が腕の端末を操作すると部屋の重力が一気に無くなった。

 フラフラと浮き始めて慌てる俺とウウク。

 イソギンチャク男は宇宙服の推進剤で無重力空間を高速で移動して部屋から出て行った。



 「ねぇ、ショウタ。これは何なのかな?」


 「分かんない。何か事故かもしれないけど…。」


 「ジコって?」


 「……ガス欠とか?」


 「??」


 もちろんウウクにそんな意味は通じなかった。言葉が通じても文化と文明的な違いが多すぎてまいる。


 捕まることが出来ずに浮いていた俺達は、不安からかお互いに無意識に手を繋いだ。

 彼女の手は思ったよりもデカかった。

 窓の外で光を感じ、壁を蹴って窓の近くまで寄ると、ちょうどワープから抜け出たようだった。


 そこには地球のような青い星に緑色の大地が見える。



 「ウウクの故郷はあんな感じか?」


 「知らないよ。こんなふうに見たのは初めて」


 「そうか。少なくとも地球とは大地の形が違うから目的の惑星だろうな」



_ズズズズンッ!!!!


 無重力でも分かるくらいのすごい振動が船を襲った。

 なんだか分からずに、お互いに身を寄せ合うことしか出来なかった。



 「あっ!!」



ウウクが何かに反応した次の瞬間。


_ギャギャギャギャギャギャッッッッッッッ


 形容しがたい、何かがひしゃげる様な怪音が響き、鼓膜が破れるような感覚に襲われる。

 両手で耳を覆い被し、逃げようとするが逃げられない。


 空中で藻掻いていると、そんな俺の体をウウクが抱きしめた。お姫様抱っこで。



 「ショウタ。私に掴まってて。 超流動体エーテルが流れてきた。」



 ? 何を言ってるんだ?


 するとウウクは壁を蹴って、開かずのドアの前に行く。その頭上には亀裂が走り、船体の内部が露出していた。


 それは機械ではなく、生命体の様な有機物で、まるでエイリアンの体のようだ。

 つまり、生物を機械と白い壁で覆っているのがこのUFOなのか?



 「ショウタ。ここから超流動体エーテルがドンドン漏れて流れてきてる。 ここを壊して外に出よう」


 「悪くないアイディアだけど、前に言ってた炎を出すのか? 火事になったらみんな死んじまうぞ」


 「じゃぁ、どうすれば良いかな?」



 思案していると扉が開いた。あのイソギンチャク男だ。



 「やぁ、悪いニュースだ。ルーラーに補足されてしまったよ。今攻撃を受けてる」


 「そ、それはなんだ?警察みたいなのか?」


 「いや、どちらかと言うと海賊の方が近いな。私も死ぬが、君たちも殺される。他の被験体もな」


 「どうすんだよ!!」


 「残念だがこちらの武装じゃ歯がたたない。お手上げだ。

 だが、良いニュースもある。君たちは超流動体(エーテル)活性値が極端に少ないから補足されにくい。脱出ポッドで下の惑星に逃げれるだろう。 他の被験体は残念ながら安楽死だがね」


 「マジかよ…。なんで俺達だけ逃がしてくれるんだよ」


 「自己満足だよ。君だって飼いはじめたペットがむざむざ死ぬのは見たくないだろ?

殺すぐらいなら適当に解き放つ。後は野となれ山となれ。外来種の繁殖原因の一般的な例だよ」



 その後は、冷凍睡眠している黒人やアジア人、体のでかい白人やドラゴンが入ったカプセルの通路を走り抜けた。


 こんなに居たのかと思えるくらいの人間や動物が居た。

 最初は仲間を助けようとするウウクだったが、船体が軋み、襲い来る衝撃から、逃げることをひたすら説明した。


 ウウクは泣きながら付いてきた。


 案内されたサイヤ人が乗るような小さなポッドには、人が二人も入ったらギュウギュウだった。

 最後にイソギンチャク男は、俺が攫われた時に持ってた手荷物と、見知らぬ深緑色をしたボストンバッグを手渡してきた。



 「君の私物と、惑星用のサバイバルキットだよ。自然環境は君の惑星に非常に近い。文明レベルは彼女の惑星の方が近いだろう。協力したまえ」



 そういう男は凄く楽しそうだ。顔が見えなくてもニヤニヤしているのが伝わってくる。

 一方のウウクは俺の胸に顔を埋めて泣いていた。俺の顔も怒りで歪んでるだろう。



 「礼は言わねーよ」


 「結構だよ。 調査と研究ばかりの退屈な日々がこうやって終わるのも刺激的だ。ハリウッド映画みたいだろ?」


 「ETや、インディペンデンス・デイを見ろよ。加害者が被害者を適当に見知らぬ星に捨てるSF映画なんて見たことねーよ!!」


 「ハッハッハ。2016年宇宙の旅を楽しんでくれたまえ」


 「死ね!! 猿の惑星じゃないことだけを祈ってるよ!」



 扉が閉まると同時に射出され、強い重力を感じた。


 黒い宇宙の空間で遠ざかっていくのは典型的な白いアダムスキー型の円盤だった。


 そこに赤い閃光が走ると。円盤は爆発した。





 強い憤りを感じつつも、妙に愛嬌のあるやつだった。不思議な寂しさが込み上げてくる。


 そして俺は、あいつの名前を聞いてなかったことを思い出した。

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