第17話 尋問か拷問か

ep.3-4 day / 5





 仕切り直しだ。


 脅すときは緩急を付けてやるものだ。そう覚えた。映画のワンシーンを再現するつもりでやろう。

 西部のガンマンだ



 「なぁ、こっちは今も生きてる。無事だ。なんともない。襲ってきたあんたらは気に入らないが、それでも被害が出たのはあんた達だ。言う通りにすれば殺さない様にする。良いか?」


 「わかった だから ころさないでくれ」


 「じゃ、良いか? まず、一度ここまでの確認をするぞ?

お前の名前は“アシフ”。

ここは、【陸の孤島のツンクラト】。

ここはその【東側】で、寒い所。【ウーベント】って、街が近い。

それで? お前たちはそこの組合の【ベンリー】という何でも屋さん。

ここには仕事で【クリーチャー】を狩りに来た。

…合ってるか?」


 「そうだよ それでいいんだ」



 怯えるような目で男:アシフが答える。



 「っで、クリーチャーは大きい動物なのか? 動物じゃないのか?」


 「どうぶつは がっはとかだ くりーちゃーは そいつみたいに なんかちからをつかう おおきないきものだ」


 「動物は【ガッハ】? ガッハってのはなんだ?」


 「がっは は おれたちがのってきたのだ そこのけむくじゃらのだよ」



 どうやらこのバッファローのような牛は【ガッハ】というらしい。今は大人しくしている。



 「ガッハか…。 っで、“ソイツ”ってのは、もしかして後ろの女の子か?」


 「そうだよ にんげんがつかうのは きいたことがないが…でかい いきものでつかうのがいる  それがくりーちゃーだ」


 「人間や動物は使えないが、大型の火を吐いたりする生物がクリーチャーなんだな?」


 「そうだ ぜんぶがつかえるわけじゃないし ちいさいのもいるが、ただなんとなく そんなかんじで わけてる」


 「ふーん…。 っで、ここには火を吐く大型生物のクリーチャーがいるのか?」


 「ちがう ここにはぷくてぃす ってくりーちゃーがでるから そいつをしとめにきた」


 「【プクティス】ってのはどんなのだ?」


 「でっかいとかげだよ ただあしがはやくて きょうぼうだけど そいつのかわがほしかった だけだ」

 

 「足が早くて凶暴な大型のトカゲ…。 会いたくないな。 っで、なんで俺たちを襲った? 女の子か?」


 「…………」



 分かりやすいくらいに男の目が泳ぐ。



 「いや、答えろよ。」


 「きんいろい かみのおんなは このへんじゃめずらしいし たかくうれるのさ。 それがこんなところにいればね… とんでもないやつだったが…」


 「人さらいが目的か。人を襲うのは違法じゃないのか?」


 「……」


 「俺は、お前に、それは、悪い事かどうか、聞いてるんだよ」


 「……だめにきまってんだろ。 はぁ… だが、どれいになればわかりゃしねーよ」


 「ここには奴隷が居るのか?」


 「あたりまえだろ…みうりなんか、めずらしくもない…」


 「人身売買はよくあるのか?」


 「しゃっきんのかたにとられるな あとはかねほしさにうるかだ」


 「でも勝手に襲って、殺したり無理やり売ったら犯罪だろ?」


 「…そうだよ」


 「警察はウーベントに居るのか?」


 「けいさつ?」


 「公安とか、保安官とか、なんか治安維持とか風紀委員みたいな犯罪を取り締まるやつだよ」


 「…うーべんとしゅびたいと、くみあいの ぎるどがやってるよ」


 「ウーベント守備隊と、組合のギルドね…。組合のギルドってのはなんだ?」


 「…………」


 「まぁ、予想はつくけどよ、お前の職安のベンリーってのは、そのギルドなんだろ?」


 「………………………………」


 「てめぇ、取り締まる側の組織に居るくせに襲ってきたのか? 救いようがねぇな」


 「……」


 「オイ、なんとか言えよ。 テメェのやったことは、許されてることなんですか?」


 「……」



 拉致があかない。ただひたすらムカつく。汚職警官とか、戦争犯罪ってのはこんな感じなのかね?

 コウモリ男が夜な夜な街の治安維持に乗り出すのが分かるよ。


 俺はやるときはやる。



 「なぁ、ウウク。俺が手を挙げたらコイツにさっきみたいに電気を流して、手を下げたら止めてくれ」


 「うん。まかせて」



 険悪な雰囲気を察して緊張の面持ちのウウクがスタンバる。



 「なぁ、もう一回聞くぞ。お前の仕事は悪い奴を捕まえるのも、仕事なのか?」


 「………」


 俺は手を挙げる。


_ビリビリビリッ!!

 「!ひゃぁぁぁ!!」そして、手を下げた。


 「なぁ、言えよ。」



 「そうです まちと ぎるどには きそくがあって いはんしゃはほうこくしたり つかまえたりします」


 「じゃぁ、なんでやったんだよ?」


 「………」


 俺は手を挙げる。


_ビリビリビリッ!!

 「!ひゃぁぁぁ!!」そして、手を下げた。


 「なぁ、言えよ。」



 「おんなと おかねが ほしかったんです」


 「それは悪いことじゃないのかよ?」


 「………」


俺は手を挙げる。


_ビリビリビリッ!!

 「!ひゃぁぁぁ!!」そして、手を下げた。


 「なぁ、言えよ。」



 「わるいことです」


 「じゃぁ、やっても良いのかよ?」


 「………」


 俺は手を挙げる。


_ビリビリビリッ!!

 「!ひゃぁぁぁ!!」そして、手を下げた。


 「なぁ、言えよ。」





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 男達は街とギルドの規則を違反して、ひと目の無い所で旅人や民間人を襲撃し、強盗・暴漢・違法人身売買・密輸などをやっていたそうです。


 俺達が身柄を拘束したこの犯罪者:アシフは、この後ウーベントという街に行き、ベンリー達を束ねるギルドで自白させ、身柄を引き渡して罰せられるでしょう。


 以上。報告を終わります。



 「ねぇ、ショウタはなんで人は殺せないのにあんなに酷い事はできるの?」



 ウウクが神妙な面持ちで尋ねて来た。


 それは多分、日本人だからでしょうか?







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