第13話 ウウクは弓を使わない
ep.2-8 day / 3
チーチチチチチチチっっ
見知らぬ可愛らしい鳥が空を飛んでいる。
太陽は真上にあるのだろうか? 今は多分昼間だ。
星の一周が24時間なのかなんて分からないが。
そもそもテレビや学校でかろうじて記憶した知識がこの星で役に立つのか分からない。
でも、感覚的に地球とほぼ変わらないと思う。
イソギンチャク男はその辺も含めた共通点で俺たちを選んだんだろう。
あの後もしばらく愛し合ってから、少し休んだ。
そして水を飲み、水を入れた鍋を二人で作った石のかまどを使ってお湯を沸かし、お互いの体を拭きあった。
その時にはウウクの胸からは甘い蜜が出なくなり、先端も隠れてしまっていた。
とりあえずレーションは残して、食べ物を探しに行く準備を始めた。
ウウクにはあのレーションは口に合わない。俺も食べ続けたいとは思わなかった。
ウウクは新しいナイフで毛皮を切って靴を作ると言う。
縫い物も出来るらしいので、バイオパックの中から裁縫道具を渡した。
コンパクトカメラくらいの大きさの【生体紡績機】という裁縫道具。
弾力のあるたんばく質繊維と、強靭な植物性繊維の2種類の糸が出せる。材料として有機物を入れるだけ。
草むらから葉っぱや昆虫を捕まえ、それらを石で潰して容器に入れる。すると糸が紡ぎだされ、ボビンに巻かれていく。釣り針と縫い針が複数種類あるので大変便利だ。糸切りも付いてる。
ウウクはその全てに、相変わらずのはしゃぎっぷりと大げさなボディランゲージで驚きを示してくれる。
知識として覚えても実際に見た俺もかなり驚いた。
全てがオーバーテクノロジーだ。
靴作りに勤しむウウクの隣で、俺も準備をする為に道具を出す。
もう一つの銃と、コンパス。
コンパスはファイアスターターも付いてたが、地球のと変わらない。
本題はこの拳銃だ。こいつは、ブラスターだ。
大気中の
前回は起動前と直後で
今は自動吸収されていて、ランプの部分にアナログなメーターの針が表示されている。
これがデジタル表示だとしたら、文字が読めずに苦労したのではないか? と想像できる。
なんとなくユニバーサルデザインな設計になっている気がする。
右に振りっ切っている針を確かめ、グリップを握る。
するとアナログメーターのランプが薄っすらと緑色に光る。登録者の確認が取れたのだ。
左側の安全装置を解除し、しゃがみ込み、誰もいない湖に目がけて両手でしっかり持って狙う。
引き金を引くと、黄色っぽい粒子のような光弾が発射された。
ジョンッ!と湖面に光弾が着弾し、激しい水飛沫と水蒸気が立ち昇る
それを見ていたウウクは、目をキラキラさせながら近づいてきた。
「…やってみる?」
「うん♪」
靴作りを一時中断して、前回と同じように二人羽織りで撃ってみる。
ジャンジャン撃つと、ウウクは子供のように「ひゃーっ!」と雄叫びを上げる。
弾は全部で20発撃てた。
エネルギーが切れると、俺はアナログメーターを撃鉄のように手前に引く。
すると機構内の
5秒程度でカチャンッ、と音を立ててメーターが閉まる。
次にブラスターの右側面のスイッチを切り替えて発射する。
発射されたのは細く赤い光線で、レーザービームだ。
ブシーーーッっと甲高い音を立てて照射され、きっちり5秒でエネルギー切れになった。
着弾した水面は水蒸気で温泉のようになり、ウウクはその光景に驚いて目を丸くして黙ってしまった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「じゃぁ、行こうか。」
「うん。私の後を付いてきてね。」
バイオパックを俺が背負い、ウウクには俺のバックパックを背負わせる。バックパックの中は空っぽだ。中身はタブレットと一緒にテントにおいてきた。
テントがもし盗まれても、タブレットが一緒ならペンダントのビーコンで探せるかも知れないことを想定した。
今回は干し肉も作りかけで、しばらくはここに留まるので今回は周囲を散策し食べられそうな物を探して戻ってくることをウウクと決めた。
この湖の近くという立地や、あのサバイバルキットやテントがなければ途方に暮れていただろう。想像したくはない。
ウウクは作ったばかりの毛皮の靴を履いて俺を先導する。
そんなウウクを見ると縄文時代の人はこんな感じだったのかな?と考えた。
石器を使い、狩猟採集で生活をする。
弓矢とかも使うのだろうか?
「なぁ、ウウク。いつも狩りはどんな感じなの? 弓矢とか使うのか?」
「ゆみや? それはどんなの? いつもは探して集めたりするよ?」
「う~んと、ウウクが使ってる石のナイフを遠くに飛ばす道具とか」
「そんなことしないよ。大体は竜の仲間が獲物を仕留めるし、この姿でも雷出せるからそれでみんな動けなくさせるの」
…そうだよな、電気ショックをいつでも使えるなら必要性がないよな。
「なら、お肉以外は何を食べるの?」
「お魚と、木の実と、お野菜とか~、きのこは私はあんまりわからないな。狩りの方を担当してたから」
「それは本当に心強いよ」
俺もハイキングで野山を登ったりしことはあるが、有名な山菜くらいしか分からない。キノコは絶対に手を出すなと言われた。
それでもアケビやビワ、ヤマグワなどを見つけると喜んで食べた。タケノコもこの星にあると嬉しい。
森の中へと分け入り、先導するウウクは歩きながらナイフを片手に周囲を警戒し、木々や草花を確認する。
ポンプガンを片手に俺も周りを見るが、日本の雑木林とは違った自然環境だ。
鬱蒼とし森は針葉樹の木々で、足元に木の実などはあまり見えない。日本よりも映画で見たロシアやアメリカの森に近い。
すると足元に、濃い緑色のズッキーニのような物が実っているのが見えた。
「なぁ、ウウク。コレどうかな?」
俺の声にウウクは引き返し、それをじっと見る。すぐには触ろうとしない。
ナイフの刃先で実を突っつき、茎から切る。
くんくん、と臭いを嗅いでから、茎から滴り落ちる水分を触って確かめる。
「とりあえず持って帰ってみよう。指がかぶれたりしないなら、また確かめるよ」
ウウクの指示にしたがって、バックパックに緑の実を十本ほどしまい、また歩き出す。
しばらく歩き、適当なところで目印になりそうな巨木にウウクがナイフで☓印をつける。
今度はコンパスを頼りに別の方角へ向かう。それを俺たちは繰り返した。
そうして歩き続けると、先導していたウウクが立ち止まった。
俺に話しかけず、手で俺に止まれと合図をする。
何かあったら黙ってしゃがむ様にと言われていたので、俺は静かにその場にしゃがみ、ポンプガンを構える。
しばらく待っていると、ウウクが10時の方向にゆっくりと進む。
するとその先の木の上から何かが落ちてきた。
大きなイタチみたいな姿に羽毛が生えた動物だ。
そいつは落下しながら手足を広げるとムササビみたいな膜を広げて滑空する。
ウウクの頭上を滑って逃げようとするその動物に、ウウクは左手を伸ばして指を三本立てた。
3メートルくらいの距離はあった。バチッバリ!!とスパークする音が周囲に轟くと、羽毛の生えたムササビは地面に落ちた。
ピクピクと動き、感電したが、まだ生きているようだ。
ウウクはソイツを拾い、生きた羽ムササビの首をナイフで切った。
途端に血が滴る。
ちょっと衝撃的な光景だ。
俺はバイオパックの中からロープを出して渡すと、ウウクはソイツの足にロープを掛けて吊るし手で持った。
ウウクは俺に「やったね」と優しい声を掛けてくれた。
その後も、帰りにウサギや、ネズミに似た動物を同じやり方でウウクは仕留めた。
本人曰く、普段はもっと大型を狙うらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
戻って来たのは夕方だ。
夕日が湖に映り、幻想的な美しさを感じた。
あのズッキーニに似た実も大丈夫そうだ。
キャンプに戻ってくる前に捕まえたネズミを一匹だけ生かしておいて、ロープで括り、毒味させた。
ネズミは迷わずに食べ、戻ってからも元気にしていたので、茹でた実をウウクが口に含んだりして様子を見ていた。
夜になってもなんとも無く、バイオパックの中に薬もあるので大丈夫と判断した。
食べた感じも見た目の通りズッキーニだった。
ただ、ちょっと苦かった。
食事は塩があることが分かったので、美味しく食べられた。
お肉が多いのでもう少しミネラルや野菜、果物が欲しいと思い始めた。
明日はウウクに魚釣りを提案しよう
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ちゅぱっ「だからね、明日は湖で魚を取ろうと思うんだ。それなら干物が簡単に作れるし」
俺はウウクのおっぱいを吸いながら提案する。まだ先っちょは出てこない。
「そうだね。でも、それならすぐに終わるよ。雷を流せばみんな浮いてくるから」
っちゅっちゅっちゅっちゅぷ
ちゅ ぷ「…・・え? そんなのあり?」
「うん。みんなそうやるよ。」
あやすように撫でてくれる手に手を重ねて握り返し、手のぬくもりを感じる。
「それなら無理に森で探さないほうが良いかな…?」
「ソレはダメ。 やり過ぎると湖のお魚みんな居なくなっちゃうから。必要以上に獲り過ぎちゃうから加減が難しいの。決まり事なの」
優しくも頑なで厳しい教えを受けた。でも、今この空間と行われている行為は甘くただれていた。
「なら、明日だけやって、干物作りをしよう。干してる間にまた散策して、人のいる所を探してみよう」
「うん♪」
微笑みながら押し付けられる胸を口で味わう。
ウウクも気持ちよさそうにしていた。
ウウクは愛し合うことに対して遠慮や羞恥心が薄く、楽しみながら快感を与え合う事を大事にしていた。
きっと生活の中でも大事なコミュニケーションとして性行為が認知されていたのだろう。
だから自分が気持ちよくなることも、俺を気持ちよくすることにも積極的だ。
体が感じる快楽が地球人と微妙に違うのも原因かもしれない。
地球の女性で胸を揉まれて気持ちいいからもっとやって欲しいとせがむ人は聞いたことがない。
でもそのことが俺にとてつもないほどの幸福と快楽に導いてくれる。
そしてこの日の夜もウウクと愛し合った。
新しく覚えたことを自分から喜んでやりたがった。
俺も彼女に尽くすが、彼女も俺に尽くす。
彼女は想像以上に貪欲だった。
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