【縦読み】「わたしは妹じゃない」という13才の少女と俺の、ひと夏の物語
【縦読み推奨】
作家志望の孤独な大学生「タキ」は、「山の町」の花火大会にひとり出かけ、バイクに勝手に腰掛ける浴衣姿の女の子と出会う。
女の子の名は「リン」。タキが生きてきた中で一番美しい少女だった。
やっと「特別な夏」が始まったと喜ぶタキ。しかし、ふと飛び出したリンのひと言に、そんな期待はがらがらと崩れ落ちる。
「わたし? ……13歳」
いや、いくら可愛くても中学生はまずいだろ。
さっさと離脱しようとするが、バイクに乗りたがるリンは、送っていくよう強引に迫る。
「なんで俺が……」
仕方なく送っていくタキ。別れ際、リンは「またバイク乗せてよ」と言うが、年下に興味のないタキは「またどこかで会えたらな」とカッコつけてその場を去る。
そんなふたりが、ショッピングモールの本屋で再会したとき、そのひと夏の恋は始まった。
初恋の同級生との再会。
年上の元カノとの三角関係。
海と風と入道雲。
バイクで走った夏の島の情景。
美しすぎるリンへの劣等感から、ことさらリンを「妹」として扱おうとするタキ。
そんなタキへ、無邪気であけっぴろげな気持ちを向けるリン。
穏やかに、駆け足で過ぎていく、特別な夏の中、ふたりの想いは次第に近づいていく。
そして、初めてのふたりきりの夜。
リンのめいっぱいの告白により、ギリギリのバランスで保たれていた疑似兄妹という関係は、ついに崩れてしまう。
そのとき、タキがくだした決断は……。
【登場人物】
『タキ』
21歳。世間ずれした不器用な大学生。人付き合いがヘタで孤独だが、毎日それなりに楽しく暮らしている。「矜持」をもって生きたいと願う面倒くさい性格。
『リン』
13歳。大人びた美しさをもつ中学生。人見知りする性格のせいで冷たく見られがち。頭がよく潔癖で意固地という、面倒くさい性格。
『シノ』
22歳。タキと中学校で同級生だった教育実習生。当時はぜんぜん目立たない女の子だったが、自信を身に着け、見違えるように華やかになった。
『アリカ』
29歳。雑誌社に務めるOL。タキの元カノ。恋愛には積極的で、タキ以外にも40代の男と関係があった。
『カスヤ』
22歳。タキの数少ない友人。中・高・大と同じ。孤立するタキを心配しているが、恋人がタキを嫌っているため、疎遠になりがち。