ありきたりなラノベ展開かと思って読んでいたらとても懐古的な甘酸っぱい物語でした。情景がしっかり思い浮かべられるストーリーだったので映画やアニメを見ている気分でした。
ヒロインが13歳という設定で内心「ないな」と思ったのですが読み進めていくとなぜ主人公が13歳の少女と交流を交わしていくのか、また心の動きや葛藤がしっかり描かれていることによって13歳という設定があまり気になりませんでした。
大人になっていくと多忙になり子供の時のように純粋に何かに打ち込むことがなくなってくると思います。私は映画を見ていても明日の予定とか考えてしまいます。恋愛もしかりですね。
大人になって忘れててしまった何かが見つかる、そんな作品だと思いました。
ぜひ皆さんも一読してみてはいかがでしょうか。
この小説に対してのレビューは他の方が多々しているので、別の視点から紹介します。
この「ひと夏の妹」の時代には、LINEどころかEメールもありません。タキが作中に言っていた通り、この頃の「携帯」は特別な物でしかもお高い物でした。
その代わり、もう廃れてしまった「PHS」や「ポケットベル」がありましたが、それも持っているのは一部という1人1台スマホ狂時代の現在では想像しにくい世界です。
そういう世界では、新しく出来た他の学校の友だちとかには「また明日、この場所で」と約束します。ゲーセンなら「また明日、この台で対戦しようぜ」とかですね。ひょっとしたら、もう会えないかもしれない……細い糸みたいな約束なんですが、不思議なことにこの時代ではまた会えるのです。
そういう言葉が意味を色濃く持つ時代、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、今では考えられない時代とも言えます。
これらを念頭に置いて、この「ひと夏の妹」を見ると、また違った視点で楽しめると思います。
不便で、不安定で、不確かだけど、人との繋がりが深い時代を楽しんでください。