小説を見られてしまう

 印刷のアクシデントをもう一つ。

 職場のプリンターはフル稼働しているため、原稿印刷に使うのは困難でしたが、それでも時には小さな隙が生じるものです。最初はわざわざ早朝出勤していたわけですが、人間慣れてくると面倒臭がりになる生き物で、二回目からは日中印刷するようになりました。100枚も出力したらバレるので、10枚ずつ出力してはプリンターへ猛ダッシュするという、地味かつ卑怯な努力は忘れません。

 ところがある日、油断してゆっくりプリンターへ向かったところ、刷り上がった原稿を他部署の男性に見られてしまう事件が発生。

 いやああああ!

 それは見ないでええええ!

 思わず走って逃げ出したい衝動に駆られましたが、このまま原稿を放っておいたら、さらに多くの人に見られてしまうのは避けられません。

 下手くそな英語で弁解しつつ、冷や汗を流しながら、自分は彼に話しかけました。

「えーっと、すみません、それは私が出力したドキュメントで……」

「この論文は君が書いたのかい? わお、グレイトだね!」

「ろ、論文……?」

 シンガポール人である彼は、日本語の小説を仕事の論文と勘違いしたらしく、なんと尊敬の視線で見つめられてしまいました(実話)

 ごめん……!

 給料泥棒で本当にごめん……!

 しかし今書いている最中に気付きましたが、これは海外だから起きたハプニングではなく、海外だからこそ助かったハプニングですね。


 そんなこんなで、とっても危険な職場での原稿印刷。

 他にも印刷関係の失敗は多数あり、中でも両面印刷してしまうミスは、数えきれない回数やらかしました。片面だけの失敗ならメモ帳に使えますが、両面印刷してしまうとメモ帳にすらできないので、シュレッダーへ直行するしかありません。

 これは完全に紙の無駄です。インクやトナーの無駄でもあります。というかそもそも、常木らくだの小説投稿そのものが、無駄かもしれません。いや、もはや自分の人生こそが根本的に無駄なのでは……?

 それはともかく、印刷のミスは形になって残るので、失敗しないよう充分に気を付けたいところです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る