通過発表あるある

 小説投稿者にとってはごくごく普通の行為でも、一般人の目にはそうは映らず、悲しい誤解を生んでしまう場合が時にあります。

 今から紹介するこの小話も、まさにそんなケースでした。


 その日は某新人賞の通過発表。パソコンの前で待機したいものの、しかしながら、仕事があるとそうもいきません。以前は事務職だったので、取引先と電話中に結果確認するという荒技(※真似をしないでください)が可能でしたが、販売職ではそれも不可能。朝から非常に落ち着かない気分で過ごしました。

 こうなったら、携帯でチェックするしか!

 とはいえ売場ではできないため、一時間毎にトイレへ行って、更新がないかチェックしました。非常に忙しい店舗だったので、何度も持ち場を離れるのは申しわけない気分でしたが、そうはいっても結果が気になる。なにしろ通過発表は、小説投稿者にとって一番の関心事です。

 そうこうしているうちに、同僚に話しかけられました。

「常木さん、またトイレ? さっきも行ってなかった?」

「あ、ええ、まあ……」

 どうしよう?

 あまりに頻繁で怒ってる?

 っていうか携帯チェックがバレちゃった?

 なんとなく居心地の悪さを感じたまま、ソワソワしながら夕方まで働いていると、今度は別の同僚に声をかけられました。

「常木さん、お腹壊してるんでしょ? 大変だね~」

「は……?」

 その時初めて気付きましたが、何度もトイレへ行きまくったせいで、「常木は下痢だ」という噂が職場内に流れてしまったのです。

 ちょ、違いますってば!(汗)

 しかし冷静に考えてみると、朝からずっと落ち着かない態度で過ごし、人目を気にしつつ頻繁にトイレへ駆け込む自分は、周囲から見れば完全に下痢の人間そのものでした。真相を明かすわけにもいかないので、その誤解は甘んじて受け入れましたが、実にショッキングな事件ですよね。


 え、賞の結果?

 結局その日は発表がありませんでした。

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