誰かの夢が叶う時

 小説投稿を続けていると、周囲の投稿仲間が先にデビューしてしまう瞬間が、割と頻繁にやって来ます。

 デビューしてしまう……と表現するのはよくないですが、第四章「消せない嫉妬心に苦しんだ場合」にも書いた通り、以前の自分は受賞者を妬んだり呪ったりしていました。

「くそー、悔しい!」

「あんな奴より自分の方が上なのに!」

 決して受賞者に非はないのですが、そうやって特定の相手に不満をぶつければ、日頃から蓄積された鬱憤が少しだけ晴れますからね。とはいえ、それ以上に自己嫌悪が襲ってくるので、結局のところラクになれるわけではないのですが。


 そんな未熟な自分ですが、最近は精神的に少しだけ成長したのか、他人のデビューを素直に祝福できるようになりました。

 具体的な例もあります。以前は悔しさが大きすぎて、受賞作は絶対に読まない主義だったのですが、最近は考えを改めて積極的に読むようになりました。その結果嫉妬してしまう場合もあるのですが、心の底から大好きな作品にも出会えたので、以前の考えを改めてよかったと感じています。

 それからもう一つ、以前は自分自身が落ちてしまうと、その賞の結果は確認しなかったのですが、最近は一次から最終までしっかり追うようになりました。自分の名前がない通過リストを見るのはツライですが、投稿ブログをしている以上、その辺の情報はしっかり追っておきたいですからね。おかげ様である程度は免疫もついて、この行動も苦にならなくなりました。


 こうして少しだけ大人になれたのは、「投稿者はみな苦しんでいる」という事実が、投稿ブログを通じてわかったからです。

 もちろん嫉妬心がゼロなわけではありませんが、実際に親しい投稿者さんが受賞した瞬間は、苦労のほどを知っている分喜びもひとしおでした。最終選考の結果発表を待っている時は、彼が受賞したら嫉妬するだろうなーと身構えていたのですが、いざ本当にそうなったら喜びの方が圧倒的に大きかったので、自分自身でもビックリしたくらいです。

 小説投稿は信号待ちのようですが、青になるタイミングは人それぞれ。だからこそ、先に旅立って行く人がいるのは当たり前で、長い信号待ちをしている間にたくさんの背中を見送ってきました。そもそも、夢が叶う瞬間に立ち会えるのは、本来とても素晴らしい経験ですからね。自分がいつも見送る側であることに、少々寂しさを感じなくはないですが、いつかはその番が来ると信じながら、今日も活動を続けている次第です。

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