評価シートあるある

 続いては、評価シートあるある話を。

 落選後は評価シートが届きますが、実家に住んでいる場合、選評を死守するのは至難の業です。周囲の投稿者さんと交流していると、「小説投稿を親に応援されている」という素晴らしいケースもあるようですが、我が家の場合そうではありません。出版社の封筒を見られようものなら、「まだ投稿してるの?」「いくらやっても無駄だと思うけど……」等々、心ない言葉を浴びる羽目になります。そんな状況を回避するために、選評の死守は重要課題でした。

 我が家に選評が届くのは、これまでの経験から判断すると、関東地方の一日遅れのケースがほとんどです。したがって、東京在住の投稿者さんが「選評届いた!」と呟き出したら、翌日はXデー。郵便受けのチェックを入念にしなければなりません。仕事で遅くなるような日は、どうしようもないので諦めますが、たまたま自宅にいる日は気が気ではありませんでした。

「母さん、ちょっとコンビニ行ってくる」

「何しに?」

「ん、えっと、飲み物とか買いに」

 こうやってわざわざ外出の用事を作り、こっそり郵便受けをチェックするわけですが、一度で回収できるわけではありません。届いていない場合は素直に諦め、何度もこの行為を繰り返します。アリバイ工作のため、本当に飲み物を買っているので、その度にドリンクは増えていく一方。一時間おきに真顔でコカコーラを買い求める客の存在は、コンビニの店員にもさぞや不審に思われたことでしょう。

 そんな涙ぐましい努力を続けても、結局母に回収されてしまうケースが多々あり、自分自身の間の悪さを呪わずにはいられません。ところがその日は、変な皮肉を言われないどころか、封筒を渡してくれる母は妙に上機嫌な様子に見えました。

「はい、角川からよ。売れてるのねー」

「売れ……てる?」

「え? あんた、もうデビューしたんでしょ?」

 なんと母は、「らくだはもうデビューした」という壮絶な勘違いをした挙げ句、頻繁に届く封筒は印税の明細書だと勝手に信じ込んでいたのです(マジ話)

 いや、ごめん……。

 確かに誤解するくらい頻繁に届くけど、それはすべて落選作品の選評なんだ……。


 というわけで。

 投稿やめろ発言も充分にツライですが、いい方向への誤解も逆に精神的なダメージが大きいと、身をもって痛感した出来事でした。

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