ドキドキ通過発表

 大小さまざまな苦難を乗り越えて、電撃大賞へ小説を応募したものの、そこは投稿経験が一切ない初心者。

 当時の自分は、一次発表が7月10日(通例)という情報はおろか、途中経過が公表されるという事実を知りませんでした。そう、結果発表は11月だと信じて疑わず、毎日のんきに過ごしていたのです。

 そんなある日の出来事でした。具体的には、2009年7月24日です。結果発表が11月の何日なのか気になって、公式サイトをチェックしたところ、一次通過作品のリストが視界の中へ飛び込んできました。いやもう、心臓が止まるかと思いましたね。

 しかしながら、動揺を顔に出すわけにはいきません。なにしろその瞬間は勤務中で、しかも取引先と電話中でした。そんなタイミングで見るなよと思いますが、一次発表という存在自体をまったく知らず、通話を保留されている最中に何気なく閲覧しただけだったのです。

 さて、電話が終わりました。まず背後に誰もいないのを確認し、それからブラウザを最大化し、通過リストを徐々にスクロール。思わず鼻息が荒くなり、心臓もバクバク鳴って、両手が汗だくの状態です。電撃は応募者数が多いため、通過リストの確認も一苦労。残念ながらPC音痴だったので、Ctrl+Fで文字を検索できると知ったのは、だいぶ後になってからの話です。


・『南国サンクチュアリ』常木らくだ


 作品名とペンネームを見つけた瞬間、椅子から転げ落ちそうになりました。

 あれから一次通過は何度か経験しているものの、この時ほど感動した通過体験は、後にも先にもおそらく存在しないと断言できます。

 それから色々チェックしたところ、7月10日発売の電撃文庫の最新刊の中に、通過リストが挟まっているという情報をキャッチ。今はその慣習がなくなって、雑誌の中で発表されるようになりましたが、当時は文庫本に挟み込みのあった最後の年でした。

 これは是非ともゲットしなくては!

 その頃はシンガポール在住でしたが、現地には紀伊國屋が三軒ありました。そこでは日本の書籍を取り扱っており、その日の夜には電撃の新刊を難なく購入。定価そのままの値段で買えるわけではなく、雑誌も文庫本も全体的に三割増し程度の価格でしたが、手に入ること自体がありがたい話です。

 そんなこんなの、一次通過・初体験。

 この時点で完全に舞い上がって、翌月の二次落選で深く落ち込むわけですが、その日は最高にハッピーでした。

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