概要
ボーイ・”ノー”ミーツ・ガール
ある古ぼけた家の中には誰も住んでいないと言われているが、暗澹たる恐るべき邪悪や怪物の類を信奉する一部の奔放な夢想家は、そこになんらかの生物が潜んでいることを紛れもなく信じ込んでいた。例えそれが実際にはひとりの小柄な少女であり、並大抵の小説家であると話したところで、夢想家たちは彼女の正体について人間を冒涜する邪な理想を含んだ推測に熱心になったことだろう。
もっとも、重要であるのはそれら夢想家たちによる失礼極まりないと思われる憶測――例えば彼女が小説に勤しむのは音声による言葉を持たぬ怪物でありながら、恐るべき邪悪の未来の予言をもたらすためであるだとか、外界に姿を現さぬのは光の差さぬ暗黒でこそ全てを見通す魔眼の持ち主であり、新月の夜には雲に混じって空を這いずっているに違いないだとか、そういった
もっとも、重要であるのはそれら夢想家たちによる失礼極まりないと思われる憶測――例えば彼女が小説に勤しむのは音声による言葉を持たぬ怪物でありながら、恐るべき邪悪の未来の予言をもたらすためであるだとか、外界に姿を現さぬのは光の差さぬ暗黒でこそ全てを見通す魔眼の持ち主であり、新月の夜には雲に混じって空を這いずっているに違いないだとか、そういった
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★ Very Good!!ひっそりと紡がれる暗く幻想的な世界を見よ。
魔法が飛び交うだとかそういった派手な要素はないが、だからこそファンタジーでありながら妙に地に足のついたリアリティを感じさせる世界観。少年や少女の息遣いが、文章を通じて伝わってくるようでもある。
薄っすらと流れる土や鉄、血の気配は暗い雰囲気と退廃的な喧騒を想起させるが、その一方で並行世界のように展開される表題の「屋根裏部屋の小説家」には、ひっそりと静かな闇を感じる。
これから何が起こるのか。手がかりは少しずつ提示されつつあるのかもしれないが、予測できないうねりの気配が闇となって、ページを先に進める手を掴んで離さない。
今後の更新も楽しみな作品である。