つかの間の休息②
ミチルとシャーロットが教官となって新しい兵士たちを
「おらぁ!走れ!走れ!そんなんでへばってんじゃねえよ!」
「相変わらずスパルタねミチル」
「あたしさぁ、おバカだから勉強は教えられねぇけど。
体使う系は大好きよ!勉強はってか学問はシャーロットが教えてね!」
魔王軍の中から槍使い、弓使い、魔法使い、回復士など派遣されてきた。
「じゃあ、今日からは彼ら彼女に槍とか弓、魔法、回復魔法など教えてもらうよ!」
新しい兵士たちは教官たちからの指導によって一人前の兵士に成長していった。
郊外へ出ての模擬戦闘訓練を何度も繰り返し、いろいろな状況でも対応できるように
その都度状況を変え、昼も夜も時間に関係なく、悪天候下でも訓練は行われた。
「ずいぶん、逞しくなったよね」
「だね。これならすぐにでも前線へ行けると思うんだな」
そんなある日
「ミチル。元気でやってる?」
魔王リコがミリアとメレイといっしょにやってきた。
「リコ!!元気だよ!シャーロットも!」
「新人教育はどう?」
「もう、いつでも前線に出せる!絶対よ」
「そうなのね。ではミチルとシャーロットに任務を命ずる
二人はこの新人たちを率いて州都アバンツオ攻略戦に参戦せよ!
出発と具体的な作戦行動は追ってメレイから連絡する。それまで待機するのだ!」
いよいよ戦場へ赴くことが決まった。身が引き締まる思いのミチルとシャーロット。
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そのころランブランズ砦に駐屯していたリナ。
「もう間もなく州都アバンツオ攻略が始まる。諸君はそれまで訓練と武器防具の
準備を怠らないことを要求する!」
(城内の雰囲気が少したるんできたな。何か手を打たねば)
「隊長!大変です!」
「どうしたヘルマンド」
「南門の前で衛兵と盗賊団の小競り合いが」
隊長室から外を見ると確かに、盗賊団と衛兵たちが揉めている。
「第1,3,5小隊で対処させよ!私もすぐに行く!」
「はっ!」
にわかに慌ただしくなる城内。
「いそげ!第3小隊はこっちだ!」
「第1小隊、5小隊は南門で待機せよ!」「心得た!」
準備が整った。
「盗賊団を一掃し魔王軍の威信を高める絶好のチャンスだ!頼むぞみんな!」
「おおおおおお!!!!!!!」
南門が開けられた。
どっと押し出される様に砦から出ていく第3小隊
後詰の第1,5小隊が見守る中、盗賊団と激しい戦いが繰り広げられる。
だが小隊と言えども魔王軍最強のリナ隊だ。
盗賊団をじょじょに圧迫し、一人、また一人と斃していく。
そして最後に残った盗賊団の首領と思われる男と
小隊長のマリアンヌが一騎打ちに持ち込んだ。「姉ちゃんやるな!」と
ビッグアックスを振り下ろそうとした瞬間、背後にいたカリヌに斬られ
狼狽する男の心臓めがけて剣を突きだすマリアンヌ
グサッ!
口から多量の血を吐き男は倒れた。
そして背後を”止めだ!”とマリアンヌが剣を突きたてる。
「リナ隊長、お騒がせしました。盗賊団はこれで壊滅しました」
「ご苦労だった。戻って休むがよい」
「はっ!ありがたき幸せ!」
盗賊団の死体を砦の外の小高い丘に埋葬し、襲撃事件は終了した。
「また同じようなことが有るかもしれない。警備警戒を怠るな!」「はっ!」
盗賊団レベルの襲撃はあったものの大きな損害はなく。
その後ものんびりした空気に包まれるランブランズ砦の兵は
近所の街へ買い物や遊びに行くなど、戦いの間の少ない自由な時間を過ごしていた。
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魔王軍の大半を休ませ、英気を養わせている間にも
魔王リコは今後の戦略をメレイや参謀たちと考えていた。
「州都アバンツオは強固な壁で囲まれている。
突入口は3か所。北側、東、南の3か所だが、念のため西も警戒しておく」
「ではどのように攻めますか?」
「力攻めだけではリスクが高い。ニンジャたちの報告では1万程度の騎士団が
数カ所に分かれて駐屯しているらしいのだ」
「おそらく突入口となる城門の傍か、その近い場所にあるのでは?」
「さすがだな、キミ。名は何という」
「はっ今年参謀部に加わりましたウィンストン・アメルです」
「アメルか。覚えておくぞ」
「有難き幸せに存じます!」
ニンジャたちを再び潜入させ、魔王軍が近づいていること、総督は贅沢の限りを
つくし、民衆を愚弄していることなど、悪政のかずかずを住民たちに吹き込む
そうすれば総督に反感を持つし、その部下である騎士団に協力する事は無くなる。
リコやメレイたちはそう考えた。
「あなた方には悪いが、もう一度アバンツオに潜入してもらう。
そして総督の悪政を住民たちに吹き込むのだ。騎士団が手先であることもな」
「心得ました。では行ってまいります」
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「ねぇチェルシー?」
「あんた誰?」
「ボクだよ、シェルドンだよ」
「・・・うううーーーーん思いだ・・・・あ!あのときの」
「やっと思い出してくれた?」
「そうあの時の子だよね」
魔術師のチェルシーが幼い子供の頃、
魔術が使えることから、イジメを受けていて、その日もそうだった。
「あいつ魔法が使えるんだってさ!怖いから近寄るなよ!」
「そうだ!悪魔の子だ!」
泣き出すチェルシーを庇ってくれたのがシェルドンだったのだ。
「そんなイジメやめなよ」
「なんだ?お前、こいつの仲間か?」
「俺は違うけど、こういうのは良くないよ」
「なんだと!やっちまえ!!」
ボコボコにされるシェルドン。
「ったくよ。身の程を知れや!」その不良たちは帰っていった。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ、キミは?」
「ありがとう・・・」
倒れたシェルドンに手を差し伸べるチェルシー
「わたしのために・・・こんなになって・・・」泣いているチェルシーを
抱きしめて「イジメられたらボクを呼んで!いつでも助けに行くよ」
その時から二人仲良く遊ぶようになった。
ただシェルドンは成長したのち王立士官学校に入るため故郷を離れた。
「元気でね!シェルドン。手紙書くよ」
「ありがとうチェルシー、キミもね」
それ以来の再会。
「元気そうだね?チェルシー」
「あなたも」
「いまはリナ隊長の部隊にいるよ。今度の戦いは手ごわい相手だし、
どうなるか解らない。でも無事に終わったら、また会おうよ」
「そうだね、そうしよう!」
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そして魔王リコの魔道具による指令が下った。
「これより州都アバンツオを攻略占領する。
各部隊長はアバンツオから2キロの地点まで接近するように。
クロエ隊は北から、チェンバレン隊は南から、そしてリナ隊は大変だが正面から。
ミチル隊は西側の門を固めよ。全軍合流したのち、一気に城内へ突入する!
「私はリナ隊と共に行動する。常に皆の先頭に立つ!」
州都アバンツオを制圧する戦いが始まった。
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