勇者よ!英雄よ!私の前にひれ伏すのだ!
利根川藤代
プロローグ
あ・・・まただ・・・・・上履きが無い。
まぁいつものことだ。いまさら・・・
またあんなところで隠れて見てんだろうけど、解ってんのよ。
そこで見ていることくらいは。
今日は学級委員まで、その仲間にいるみたいだわ。
なにか頭の上から、水?がかけられているみたい・・・
「これでちょっとはキレイになるっしょ」
クラスカースト最上位のギャルがペットボトルの水を頭にかけてるな。
回りで笑い声が聞こえてくるのね。
でもここで何か言えば、そいつらの思う壺だし。
ずっと黙っているのがいちばん。
だれもあたしに同情してくれる人はいない。
可哀そうって思ってくれる人もいないのね・・・
担任に言っても何も改善される訳でもなく。
親やお姉ちゃんは同情してくれているけど、それだけ。
学校や教育委員会に何か声を上げようとするわけでもなく。
家族でさえそうなんだから、他人である担任や何かに言っても無駄よね。
現実は現実として受け止めるけれど、
さすがに一人ぼっちっていうのは心が折れてしまう。
だけど、その折れそうな心をなんとか保っていれるのは
いつかは、私にもいいことが有ると思い続けていることと、
マンガの主人公になりきって過ごしていること、ラブコメは好きなんだよ。
わたしもあんな風になれたらなぁって思うこともある。
でも私の心のよりどころは
あるオンラインゲームで、RPGでわたしはゲーム内で魔王として君臨してて。
討伐にやってくる勇者とか英雄とか呼ばれている連中を次々に殺していくんだけど
これが快感なんだよねぇ・・・
学校でもこんなふうに、いじめっ子をぶん殴りたい!出来ればね。
「さぁて今日は何人ぶっ殺してあげようかなぁ!!」
パソコンを立ち上げ・・・
あれっ?きょうはなんか変だわ。
えっ!
なにこれ・・・
わたしはいつの間にか光の環のようなものに包まれていた。
そして
目の前に・・・神様?天使?
「あーああーーテステス・・・マイクテスト中」
「えーようこそお出でくださいました!福田理子さま!
今日から一週間は特別サービスとしてレベル最高値で奉仕!!」
「はぁ?なに?あんた誰?」
「はい!私はこの世界の最高の神様であり天使でーす!」
どう見ても芸人の様にしか思えない喋り、だけど外見は私と同い年位の女の子。
「マジ?」
「マ」
「お疑いのようですね!ではこれを!」
その女の子が持っていた杖みたいなのを、エイッ!
杖を離れたところの星みたいなのに向けると・・・ドッカァーーーン!!!
一瞬で消えてなくなってしまったんだ。
「あらぁ・・・・」
「解って頂けました?そう私は神様、何でも出来るのです!!」
「なので特別にあなたのレベルを999にいたしました!この世界で思う存分
遊んでいただけますよ!さぁ!あなたはどんな種族を選びますか?」
「ねぇあんたの名前を教えてよ」
「わたしですか?リタと申します。以後お見知りおきを!と言いたいところですが
あなたとお会いするのは、今後一切ありませんので」
種族を選べか・・・
「人間、魔族、エルフ、ゴブリン、とまあいろいろと用意しております
あなたのお気に入りは、たぶん魔族ではありませんかな?
魔族となって仕返しをしたい。そうですよね。
現世でいじめを受けているあなたは、その憂さを晴らしたい!と思ってますね?」
そう、わたしは学校で受けているイジメから現実逃避したいがために
あのゲームをやっている。勇者と称する連中をありとあらゆる手段で虐殺し
そのうっぷんを晴らしているのだ。それまで虚勢を張って意気軒高と私の魔王城へ
攻めてくるけど、最後の部屋にいる私を殺そうとしてくるのは、100人中1人くらい
そんな奴は。それ以外は大体途中で、私の部下たちに殺されてしまうのがオチだ。
やはり種族を選べと言われれば、魔族を選ぶほかない。
でもほかに部下と呼べるのはいるのだろうか?
「教えて?リタ」
「何なりと」
「わたしのほか誰かいないの?部下とかさ?」
「いえいえ、ちゃんとご用意しておりますよ。
今回は特別サービスとしまして、この【初めての魔族パックA】をお付けします」
初めての魔族パックAってなんじゃ?真夜中の通販番組じゃねえっつーの!
「それって内容は?どんなん」
「まずあなたのレベルは最高値と申し上げました。
体力、魔力、生命力などなどは全て999、つまりMAXにしています。
また付属するものは、考えられるすべての魔物を召喚できる権利が与えられます」
「それだけ?まだ何かあるでしょ?」
「あとはあなたの参謀、護衛、メイドが一人づつつきます」
参謀がいるんだ・・・これは良いんじゃない?一人で考えるより、軍師的なやつが
一人は欲しいなとは思ってたし。護衛とメイドが一人づつ付く・・・
いないよりマシか
「リタ、わかったよ。魔族を選択するよ。そこまで言われちゃあね」
「解りました、では魔族として転生することになりますが後悔は無いですね」
「無い」
と言った瞬間、目の前からリタが消えた。そして周囲が暗闇に変化したのだった。
わたしは洞窟の中にポツンと・・・取り残されてしまった。
完
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