強大な新たな敵⑤反撃

数日後、

「ではグラモント砦へ向かい出発する!」

デレンマレーノ王国軍近衛師団を基幹とする

約10万の大軍、アバンツオ派遣軍が編成された

指揮するのは・・・

(いましばらくお待ちくだされ!かならずやお助けいたしますぞ!)

ゲルハルト国王の義弟にあたるフローリアン・レーグナー大将である。


「閣下、今回はアバンツオ軍の助太刀ですが・・・」

「それがどうした?われらは国王陛下直々の命により横暴な帝国軍を打ち破る

 そのためにアバンツオへ向かうのだぞ?何かあるのか?」

「いえアバンツオ軍は強力と聞いています。なのになぜ助太刀でしょう?」

「それはいくらアバンツオ軍が強力だとは言え、相手が帝国軍ではどうにも

 ならんのだよ。それが証拠にあの精強な第1軍をもってしても叶わないのだ」


やがて前方に・・・

「閣下、あれをご覧ください」

遠くに見える城塞のしたに雲霞の如く押し寄せる帝国軍が見えてきた。

「あれが帝国軍か・・・よしここで停止する。帝国軍に分からないように野営せよ

 それとすぐに斥候をだせ!砦の指揮官に連絡するように!」「はっ!」



帝国軍に悟られぬように分散して駐屯していると

アバンツオ軍から使者がやってきた。

「私はアバンツオ軍親衛隊長ミチル・ヤマモト少将、こちらは」

「副隊長のリンジー・マリア・シャーロット少将です。よろしく!」

女性士官の来訪に驚くデレンマレーノ王国軍参謀たち。

「これはこれは・・・アバンツオ軍は女性士官もいらっしゃるのですね?」

「はい!私たちは女王陛下の親衛隊です。軍は女性でもやる気がある人を重用

 してくれます。だから私たちでも少将にもなれるんです」

「女性兵士もいらっしゃるのですか?」

「はい!軍の3分の1は女性です」


1時間ほどの打ち合わせを終え。

「解りました。では戻って司令官に伝えます」

「よろしく頼みます!」




帝国軍に悟られるぬ様にグラモント砦へもどり軍司令官であるリナ・マツモトと

「10万もの大軍を率いているレーグナーって・・・イケメン!!」

「あんな彼氏がいればなぁ・・・」

「こらこら、ここは戦場だぞ!そういう話は帝国軍に勝ってからな」

「はいはい・・・」


「やつらは正面の砦を落とすことしか考えていない。

 デレンマレーノ王国軍は背後と西側から帝国軍を攻めることになっているが、

 砦正面は私たちがやる」

「人数はデレンマレーノ王国軍の方がはるかに大きい。

 ただ・・・実力のほどは分らない。でもやるしかないのだ」

「戦闘開始は明日朝、夜明けとともに決行する。良いな!」

ミチル、シャーロット、アメルの顔に緊張の色が走った。


「では明日夜明けとともに帝国軍を襲撃する。

 キミたちの部隊はあの山の麓へ向かえ。そこから帝国軍の横腹を突くのだ!」

指示を受けた、ワイズベッカー大佐とフリッツ中佐の部隊が行動を開始する。

2万の大部隊が深い森の中をしずしずと進軍していく・・・


「よし!ここで停止。おおおおこれは良く見えるな」

森の中から眼下の帝国軍が見える。そのほとんどは正面の砦を向いていて

こちらには監視兵さえおいていないし、後背地にもそれらしい兵は見当たらない。

「ずいぶんアバンツオも舐められたものだな・・・」

「女性指揮官が指揮しているからでしょうか?」

「それもあるだろうなぁ・・・男女の差なんてないんだがな」

「夜明けはまだか?全員に休息をとらせろ!食事も。あすは忙しくなるからな」

「解りました」


ワイズベッカー大佐とフリッツ中佐は焚火をしながら話し合っている。

「大佐殿、アバンツオはわれわれの国から独立したわけですし、本来はこちらを

 さきに叩き、そののちコレルハウト帝国との決戦に挑むのが筋の様な・・・」

「その気持ちは分らんでもない。 

 コレルハウト帝国との戦いの前に強力なアバンツオと戦って手傷を増やすのは

 得策ではないとおもうが?」

「確かにそれはあります。しかし・・・」

「この大陸で強大な軍事力のコレルハウト帝国の存在は我々にとっても、

 周辺諸国も、そして今、強力な圧迫を受けているアバンツオも非常に厄介だ。

 これを排除、もしくは帝国を崩壊させることが出来れば、この大陸も安定した

 平和が訪れる。国王陛下はこの様にお考えなのだ」

「なるほど分りました。国王陛下のお考えに従うのがわれら軍人の本望ですね」

「その通りだ。あすは存分に働くのだ!よいな?」



リナたちも同じころ。

「明日は我々にとっても重要な一日だ。

 負けることは許されない。勝つことのみが我らの残された道だ。

 みなしっかり頼むぞ!」

「はっ!」

「アメル、キミは大変だと思うが私と共に正面から突入してくれ」

「解りました」

「ミチルとシャーロットは西の砦を襲撃し再奪還するのだ」

「うぃーっす」

「任せてください!ぜったいやり遂げるし」

「それが出来たら、デレンマレーノ軍と連携して西側から帝国軍を襲うのだ」

「よぉーしやってやるぞ!待ってろ帝国軍の奴らめ!」

「それな、あたしらが一番強い!ってのを見せなきゃね」



王宮でマルティーヌ・シャリエ女王は案じていた。

(リナ、アメル、ミチル、シャーロット・・・キミたちに王国の命運がかかっている・・・)


「陛下、クロエ殿から連絡が」

「なにごと?」

「目の前の帝国軍が撤退したとのことです」

「・・・・もしかするとグラモント砦へ向かったのかもしれないな。

 メレイすぐに知らせるのだ!」

「はっ」

「陛下」

「この老いぼれを現地へ向かわせてはもらえませぬか?」

「元帥殿、あなたは私のそばにいてほしい。魔道具を使えば砦の様子はすぐ分る」

「しかしながら・・・」

「大丈夫、あの者たちがいる限り砦は安泰だ。安心していよう」

とはいうものの、心の中は不安なのだが、それを知られてはならない。





やがて夜が白々と明けてきた。

前方に展開している帝国軍はまだ、

これから自らに降りかかる災難を予想していないようだ。


その一方

デレンマレーノ王国軍もアバンツオ側も幕僚も下士官兵も一様に緊張している。


「よし!行くぞ!」

まずはデレンマレーノ王国軍の近衛師団が動き出した。

師団をリヒテンベルグ大佐が先陣を切り帝国軍第5軍の背後を襲撃開始!


「突撃!!!!」

「おおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


騎兵隊が進発すると重装歩兵が続く、背後から長弓の雨が帝国軍に降り注ぐ。


混乱の極致という言葉がぴったりだ。

帝国軍第5軍は背後から正体不明の軍隊の襲撃を受け混乱しているようだ。


デレンマレーノ王国軍はいままでの帝国軍の横暴に我慢に我慢していた。

だが「いままでの鬱憤を晴らすのだ!帝国軍に死を!進めぇぇぇ!!!!!」



突進を続ける王国軍。

帝国軍も激しく抵抗し始める。


勢いに乗った王国軍は帝国軍第5軍をほぼ殲滅するところまで来ていた。


「ここまでだ!お前たちはよくやった。だがここから先は進ません!」

立ちはだかったのは第5軍の精鋭部隊、鉄血騎士団だ。


随所で白兵戦が展開される。


王国軍の重装歩兵が一人、また一人と斃されていく。

「・・・・くそお!!!!・・・・・うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

アンドー少尉が騎士団長へ突進していく!


キンカンカンキン


どさっ!

「威勢のいい若者だ!これをくらえ!」

倒れこむアンドー少尉に長剣を突き刺そうとした団長へ、背後から槍が!


ドッ!!!

「な、な・・・・・きさまぁ!!!!!」.

振り返る団長に、起き上がったアンドー少尉が剣で足を切る

たまらず馬上から転落する団長へ、もう一人の兵が再び槍を突き刺す。


動きの止まった団長に周囲の兵たちが槍が突き刺さる。


「ぐ・・・ううううう・・・・・・・」


バタッ!


「大変だ!団長がやられた!逃げろ!」

さしもの鉄血部隊も団長がやられて指揮系統が混乱してしまい・・・


そこへ西の丘から駆け下りてきたワイズベッカー大佐とフリッツ中佐の部隊が

襲撃してきたからたまらない・・・


わずかな捕虜を残して帝国軍第5軍は殲滅された。


のこるは第7軍のみ。




「第5軍が殲滅されただと?何かの間違えではないのか?」

「いえ、デレンマレーノ王国軍によって・・・」

「ということは、我々は包囲されたのか?」


そう、背後と西側はデレンマレーノ王国軍が正面は砦を介してアバンツオ第1軍に

それぞれ包囲されてしまったのだった。





そのころミチルとシャーロットは

「おっ!始まったぞ!じゃあうちらもそろそろ行くか!」

「そうね、ミチル!たのむよ!」

「おう!任せろって!うちらの強さを見せてやろうじゃん!」


「じゃあお前ら!うちらは十分強い!だけど帝国軍はもっと強い! 

 そんな奴らを相手にできるなんて、この上ない光栄なことだ!行くぞ!」

「おおおおおおお!!!!!!」

ミチルとシャーロットが率いる親衛隊が西側の砦に襲い掛かる。


深紅の鎧と真っ赤なマントをひるがえし、敵陣に突っ込んでいくミチル、

シャーロットも負けじと敵をつぎつぎと斬り倒していく。

二人に率いられた親衛隊は鬼神の如く、砦の中を蹂躙していく。

激しい抵抗にも、全く動じない二人の姿は部隊を鼓舞するのに十分だ!


それと同時に

正面からアメルとリナが率いる第1軍主力が正門を突破し内部へ突入。

ここには帝国軍第7軍の主力部隊がいた、しかしそんなことは判明すみだ。


「敵将を探せ!雑魚どもは斬り倒せ!」

「おおおおお!!!!!!!!」


巨大な砦の中は帝国軍とアバンツオ王国軍が入り乱れ、カオスと化している。


徐々に押されていく帝国軍、

「進め!進めぇ!!!!!!」


その中から屈強な兵士に守られた第7軍団長が姿を現した!

「お前か?アバンツオの指揮官は?ふん!小娘ごときにはやられんぞ!」

「帝国軍の横暴さは目に余る。いまこそ目にものを言わせてくれる!」

リナとの体格差は大きい。だがひるむ様子は見られない「怯んだら負けだ!」


「お前たちは下がっていろ、こんな小娘は俺一人で十分だ!来い!」


軍団長とリナの一騎打ちが始まった。






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