強大な新たな敵④連合軍
グラモント砦のかなりの部分を占領した帝国軍。
北側の陣地にはまだ多くの帝国軍が駐屯している。
そこへ第5軍が合流してきた。
「3万近い大軍になっています。これが攻め寄せてきたら一溜りもありません!」
斥候の言うように、第7軍に第5軍が加わり、その兵力は3万近い。
「非常にまずいことになった。帝国軍は大幅に増強されたが臆することはない!
我々はこのグラモント砦を死守し王国に安寧をもたらすのだ!」
「おおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
そうは言うものの、リナ・マツモトは常に緊張を強いられている。
砦の城壁を挟んで帝国軍と王国軍は、その後もしばらく対峙を続けていた。
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「リナ!どうだ?戦況は?」
「これは女王陛下!なぜこちらに?」
「国王として状況を常に把握しておきたいのだ」
「しかしながら、ここは大変危険です。このままお帰りを」
「いや。私には国民と国土を守る義務がある。そのためには常に状況を見て
判断をしたい。国王であると同時にアバンツオ王国軍最高指揮官である私がだ」
マルティーヌ・シャリエ女王の美しい横顔が引き締まって見えたのは、
リナだけではない、軍幹部も兵士も皆一様に、国を守る崇高な任務を感じていた。
「では陛下にはこちらでお休みください。
フリーマン殿はいるか?呼んできてくれ!」「はっ!」
公会堂に行くとフリーマン以下街の人たちが王国軍の兵士たちに食事や寝床を
提供している。
「フリーマン殿。軍司令官殿がお呼びです」
「ん?司令官殿が?何事だろう」と伝令兵に連れられて駐屯している部隊へ向かう
「なにか有ったのですか?」
「はい」と一言だけ。
どうしたのか分からぬまま駐屯地を訪れたフリーマン
「おおフリーマン殿、よく来てくれた。こちらへ」リナに連れられたのは・・・
「そなたがフリーマンか?」
銀の鎧と赤いマントの長身女性がいた(どちらのかた?)いぶかしむフリーマン
リナが「女王陛下です」と耳元でささやくと驚くフリーマン
「じょ、じょう、まさか女王陛下にここでお会いするとは思いませんでした」
「そなたは王国軍の兵士を休ませてくれているそうだな。
最高指揮官として礼を言う」
「もったいないお言葉。痛み入ります。寒さで凍えていては作戦行動に支障が
出ると思いまして」
「いやいや、そなたの行為、まったくもって有難い。これからも頼むぞ」
「はっ!」
「リナ、あすにでも敵の様子を見ておきたいのだが?」
「はっ!ではこれから準備をいたします。ですが大変危険ですので・・・」
「大丈夫だ、私の後ろには多くの国民がいるのだ。問題ない」
「かしこまりました」
女王に同行して来たミチル・ヤマモト大尉、リンジー・マリア・シャーロット大尉
「お!アメルっち!元気?」
「二人ともどうしてここへ?」
「女王さまの護衛だよ」
「そうアメルっちにも会えると思ってさ」
「明日女王さまに付いて敵陣を視察するっていうからさ、アメルっちも行くっしょ?」「行くよ、あたしの砦だもの」「だよねぇ」
「リナ。キミはよくここまでやってくれた。あらためて礼を言う」
「もったいないお言葉。しかしながら砦の半分以上は敵に制圧されています
これを奪還せねば、陛下のご安寧は・・・」
「まだまだ私たちにはチャンスがある。いつでも敵を粉砕し王国が安全である
そのことを内外に示す必要があるのだ。そのためにはこの砦を奪還し、
敵に王国軍の強靭さを見せつけるのだ。そのためにはリナ。キミには
もうひと働きしてもらう。よいか?」
「はい、軍司令官に任命されてから私は、女王陛下の安寧と国家の安全を常に
考えて行動してきたつもりです。この砦を奪い返し必ずや女王陛下に安心して
頂くよう、一層奮励努力する所存にございます」
「その言葉を聞いて安心した。これから敵陣を視察する。護衛を頼むぞ」
「はっ!」
グラモント砦で唯一王国軍が維持している東のタウリク砦に向かう
女王一行にはリナ、ミチル、シャーロット、そして砦の守備隊長アメルが同行。
さらに親衛隊の屈強な兵士が付いてきている。
「これは・・・」シャリエ女王も思わず絶句するほどの大軍が前方の丘陵に
着陣し野営している様子が見えた。(思っていたよりも多い・・・)
「数日前に帝国軍第5軍が合流した模様で、
このような大規模な軍勢に包囲されております。西の2か所の砦は一度奪還に
成功したのですが、大規模攻勢によって再び帝国軍の手に落ちましてございます
申し訳ありません・・・」
「いや大丈夫だ。これからもチャンスはいくらでもある!勝利は我々のものだ!」
「とにかく今は、このタウリクを死守せよ。ここから反転攻勢に出るために」
「はっ!承知しました!」
「フリーマンとやら、今宵はここに泊まる。準備をしてくれ」
「かしこまりました。ただ高貴なお方がお休みになるような場所では・・・」.
「何を言っているのだ。兵士たちと一緒に休むだけだぞ。特別なものはいらない」
「そう申されましても・・・」
「構わん。ただ男女分けだけ頼む」
シャリエ女王は女性用に区分された休息場所で、女性兵士と共に休んだのだった。
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そのころ
デレンマレーノ王国のゲルハルト国王は悩んでいた。
「オスカー。キミならこの状態をどうしたいと思う?」
「は・・・わが領土でありながら独立したアバンツオは真っ先に打倒すべきと
考えますが・・・さりながらあの国の軍隊とわが軍では実力が違いすぎ、
到底太刀打ちできるものではありません」
「ではどうするのだ?」
「この際、アバンツオ王国と連携してコレルハウト帝国を打ち破ることを
お考えなされませ。かの帝国はわが領土である、サバーナ、ドレンミング、
ハッタ、サマミーナの4州を強欲にも併合しております故、これを
アバンツオと協力して奪還する。アバンツオのことはそのあとでも・・・」
「もとはといえば、アバンツオが独立しほかの2州も反乱軍に制圧されている事も
すべては兄である前国王の施政に問題があったからに他ならない」
「御意」
「そのことを詫びて協力体制を構築する。さすればアバンツオ側も嫌な顔は
しないだろうと思うがどうだ?」
「少々甘いかとはおもいますが、一度提案だけでもしてみるのも手かと」
ゲルハルト国王はアバンツオ王国マルティーヌ・シャリエ女王へ宛てて手紙を
したためた。今までを詫び、連携してコレルハウト帝国を打倒したい。
さすれば一度お会いしてお話したいのだが、如何だろうか。
送られてきた手紙を読んだシャリエ女王
「皆も知っておろう。デレンマレーノ王国のゲルハルト国王のことは」
「彼から私たちと連携したいとの申し出があったのだ。如何するか?」
家臣たちのほとんどはいい顔をしていなかった中で、一人だけ賛成した者がいた。
内務卿に若くして抜擢された、ヴァレリアン・ミカエル・マレ。
「陛下に申し上げます。私はこの際、デレンマレーノ王国と連携して
いま目の間にある脅威であるコレルハウト帝国を撃退すべきかと存じます」
(やはりそうなのだな。私と同じ考えだ)
「いまの王国軍は強大ではありますが、帝国軍にはまだ戦力の差が大きいと存じます。であれば、この際デレンマレーノ王国と連携して帝国軍と対峙する方が得策か
と考えます」
「なるほど、その方はデレンマレーノ王国とともに帝国軍と戦うというのだな。
わたしも考え方は同じだ。皆はどうだ?」「陛下のおっしゃる通り」「賛成にございます!」
「ではデレンマレーノ王国との連携を基本に帝国軍と戦い勝利するのだ!」
「マレ、キミはこれから私の書状を持ち、デレンマレーノ王国のゲルハルト国王に
会い、こちらと連携することを承認すると伝えてほしい。すぐに出立してくれ」
「かしこまりました」
数日後
その間もグラモント砦ではリナ率いる第1軍が帝国軍の強烈な圧迫に必死に耐え、
砦の一部を掌握していた。
(まだか・・・これ以上は・・・)
女王が帰還した後もその場に残っていたミチルとシャーロット、
「これさぁ、ちょっとマズくね?」
「あーね、ヤバいっしょ・・・隊長はどうかんがえてんだろな」
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「陛下!ただいま戻りましてございます」
「マレ、ご苦労だった、返事はどうだったのだ?」
「はっ!ゲルハルト国王も同意されました。早速デレンマレーノ王国軍幹部の方が
こちらへお見えになることになっております」
ヴァレリアン・ミカエル・マレはわずか1日の間にデレンマレーノ王国軍との
打ち合わせも済ませ、早急にデレンマレーノ王国軍がグラモント砦への救援に
向かうことまで決めてきていた。
「キミは、なかなかやるな。これからも王国のために尽くせ!」
「もったいないお言葉を賜り、感激しております!!この身を国に捧げる所存!」
翌日には早くもデレンマレーノ王国軍参謀総長が数名の部下と共に
早馬で王宮に到着していた。
「私は参謀総長のマックス・へスラー。これに控えるはマール・ヘルベルト。
国王陛下の命により、まかり越しましてございます。早速ではありますが貴軍と
連携について作戦を練りたいと考えますが如何でしょう?」
「ありがたいお話を承り、この老人。感謝申し上げます。
では早々に私どもとの作戦会議に移りたいと存じます故、こちらへ」
王宮の隣にあるアバンツオ王国軍参謀本部大会議室へ移動し作戦会議が始まった。
「なるほどヘルベルト殿はなかなか素晴らしい案をお持ちですな。
大変参考になります。では、私どもの案とすり合わせることにしましょう」
二日間を要した作戦会議も終わり、参謀たちはシャリエ女王との会見する事に。
「みな、大儀である。
特にデレンマレーノ王国の方々には遠路にもかかわらず、いち早くお出で頂き
感謝する。これを」
マルティーヌ・シャリエ女王からデレンマレーノ王国軍参謀たちには
「これは当地で最高級のワインです。お帰りになりましたら、みなさまでどうぞ」
「それと国王陛下にはこれをお持ちください」
【親愛なるゲルハルト国王陛下】と書かれた手紙と共に最高級ワインを贈られた。
「これは・・・まったくもってもったいなき手土産まで頂き感謝いたします
このご厚情はかならずや国王に伝えましょう。それではこれにて」
「国境までわが軍が護衛いたします」
デレンマレーノ王国に帰還した一行、
「女王陛下からこれを殿下にと」
「おお!これはあの地は高品質のブドウが盛んに作られている。それを使ったワインなら相当美味であろう。勝利の暁には必ずやこのワインで祝杯をあげようぞ!」
「はっ!かしこまってございます!」
そしてデレンマレーノとアバンツオの連合軍が動き出す。
完
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