騎士隊分遣隊襲撃

闇夜に紛れて移動していく一行。

「クロエ殿、ジャミー殿、集落の手前で打ち合わせを行おうと思う」

「承知した!すべてリナさんに任せます」「頼みます」


先頭に立つリナ配下のゴブリンファイターが松明を持ち先頭を歩く。


やがて

集落の入り口近くに到着した。

「クロエ殿、ジャミー殿。ではこれからの行動だが。

 私たちがまず先陣として騎士分遣隊を襲撃する、

 騒ぎを聞きつけた住民が出てくる筈だ。それらをクロエ殿の部隊で一カ所に収容し

 ダークエルフたちに囲ませ何時でも射撃できる体制と取ってくれ」「了解」

「ジャミー殿はそのあと、住民たちを洗脳魔王を仕掛けて欲しい」「解りました」

「それと大事なことだが、この道は集落の中を通っている。もしも逃げ出すような

 住民が居れば、容赦なく殺して構わない。この騒ぎが外へは絶対漏れないこと」

「対応は?リナ殿」

「私の部隊から2名、クロエ殿から2名、4名で対応しよう」「承知した」

「クロエ殿、ジャミー殿は自分の配下に作戦内容を指示してほしい。細かいところは

 お二人に任せるが、よろしいか?」

「お任せくださいリナ殿」

「リナさん、あなたを心から尊敬します」


「では作戦開始は小休止のあと午前0時とする」


木にもたれて休むリナのもとへ、ゴブリンファイターがやって来た。

「隊長、おらぁ緊張してるっす。無事に帰れるでしょうか?」

「お前がそんなことを言ってはダメだ。私が一番頼りにしているのだ」

「おらをですか?」

「そうだ、お前が戦闘訓練では一番優秀だ。だからこそお前に先陣を任せるのだ」

「そうっすか!わかりやした!隊長がそうおっしゃるなら。おら頑張るっす!」

「そうだ、その意気込みだ。しっかりやってくれよ」


リコと行動を共にすると決意した瞬間から、自分は現世には戻らないと決めた。

戻ったところで居場所は無いのだから。ならばこの世界でリコと共にトップを

目指す。それまでは精一杯全力で戦い抜くと決めたのだ。


「よし!それでは行動開始!」

黒いマントに黒い鎧を付けたリナが先陣を切って集落に侵入する。

暗い集落だが所々に家には明かりが点いている。その灯りに照らされないように

分遣隊へ向かうリナ一行。集落の外にはクロエ指揮のダークエルフたちが

いつでも射撃できる体勢を取りつつ集落に近づいていた。


集落の反対側にはすでに封鎖部隊が待ち構えていた。

集落から脱出することは最早不可能な状態になっていたし、流れの早い川が背後にあるから尚更だ。


「ここだな」


ゆっくりドアを開ける。


机に突っ伏して寝ている騎士が一人いた。

ゴブリンファイターが後ろから近づき、口をふさぎ、背後から剣を一突き。

一人目を殺した。


どうやら建物は2階建てのようだ。


1階部分をくまなく捜索すると、奥に二つの部屋がある。

一つ目の部屋のドアのカギ穴から中を見ると、ひとりの騎士がランプの明かりで読書をしている様子が見える。「次はこいつだ」

もう一人のファイターがドアを静かに開け、忍び寄りこれまた背後から槍で刺殺。


部屋を出て反対側の部屋は真っ暗だ。

だが、寝息が聞こえてくるのが解った。誰かいる・・・

二人のゴブリンナイトに指示し「ってこい」

指示通り、その部屋に侵入するゴブリンナイト。姿かたちは人と変わらないが皮膚の色が違うだけの二人が、寝ている男を布団の上から長剣で突き刺す。

血があっという間に布団に染み出してくる。



そして階段を上ると、ひときわ大きな部屋がある。どうやら分遣隊長の部屋らしい。

「ここは私がる」

鍵穴から部屋の中を見ると、大柄な男の騎士がランプを付けた机に向かい事務仕事を

しているようだ。

リナが「おい!」と声をかけると、おびえたような顔をした隊長が振り向く。

「なんだ貴様は!」

「言う必要はない!だまってわたしの話を聞け!お前の部下はすべて殺した。

 お前も殺されたくなければ、私と一緒に来るんだ。拒否するなら。解ってるな?」

「解らん!」「死ぬだけだ」

椅子から立ち上がった男はリナよりもはるかに大きい。

だがリナに怯むような表情はうかがえない。黒いフードをかぶり、黒いマスクをしているからだ。赤い瞳だけがランランと輝いているだけだ・・・


やぁぁぁぁぁぁ

掛け声とともに突っ込んでくる騎士の剣を、やすやすと交わすリナ。

じりじりと下がりながらも落ち着いた戦いぶりだ。


このアマ!と言いつつ再度突っ込んでくる男を一瞬で交わすと、


どったぁーーーんと大きな音を立てて壁に激突しひっくり返った男の喉元に剣を突き

「どうした?もう終わりか?それともわたしたちと一緒に来るか?悪い様にはせん」

「くそ!帝国騎士たるものそんな脅しには屈しない!」

と立ち上がる男だが、


バサッ!

と男の右腕を切り落とす。

ぎゃっ!と倒れ込む男。

「来るか?来ないか?」

「解った・・・行く!連れていけ!」

「よし」「こいつに縄をかけろ!」「はっ」と配下のゴブリンに命じて縄をかけ

さるぐつわをさせ、喋らないように舌を切らないようにし、護送の準備は整った。


集落の中央には、騒ぎを聞きつけた村人たちが一カ所に集められ

弓矢を目いっぱい引いたダークエルフたちに囲まれ、おびえた表情をしている。


「お前たちよく聞け!この村は私たち魔王軍のものとなった。

 反抗するものはこいつと同じ目に会うと思え!」

片腕を切り落とされた騎士を目の前にした村人は恐れおののき、静かになった。

「その魔王さまはどちらにいらっしゃるのですか?」

「そのうちお目にかかるだろう。それまではこの男の言うとおりにするのだ!」

すでに洗脳魔法をかけられた村のリーダーが現れた「あ!パンチェッタが!」


「お前たち、この方々の言うとおりにするのだ。そうすればこの通り!

 何も心配することは無いぞ!」


集められた村人たちは凡そ100人。

ジャミーの魔術師隊によって洗脳魔法をかけられている。


「ではこれで良いでしょう。もはや逆らうものはおりません」

「よくやってくれたジャミー殿」


「では引き上げる!」

片腕を切り落とされた騎士を先頭に、リナたち襲撃部隊は若干の見張りを置いて

村を離れたのだった。


「リナさんが帰ってきました!」

「魔王さま、戻りました」

「よくやってくれた!リナ!クロエ、ジャミー!そして配下の者ども!

 今夜はゆっくり休んでくれ!ミリア食事の用意を!」

「解りました魔王さま」


かすり傷一つ追っていないリナをみて

「よくやってくれたねリナ」

「リコのために頑張ったよ!」二人きりになると学校にいたときの様な会話が出来る

「私うれしいよ」「泣かないでリコ」

二人でしばらく話し込んでいるのだった。


その二人を遠巻きにしてダークエルフたちやゴブリンたちも、

食事を取ったり、休んだり、ゆっくりとした時間が流れていたのだった。


だが戦いは終わらない。


ブーランジュ村に残してきた見張りからは無事平穏だとの連絡があるだけ。

しかしだ・・・


「次の戦いはもっと大変だろう。みな、今のうちに十分休んでくれ!」




「魔王さま?」

「どうしたメレイ」

「リナ殿をもうすこしレベルアップさせては如何でしょう」

「どうすればよい?」

「今回の戦闘で彼女も派遣部隊のメンバーもすべてがレベルアップできるはずです

 明日か明後日にでもリナ殿のステータスを確認された方が良いと思われます」

「解った、ではその様に伝えてくれミリアたのむ」

「承知いたしました魔王さま」


メレイはリナには隠れた才能があると見込んでいた。


それは









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