Episode 2

新しい世界で

「メレイ、リナ、ミリア。あなた達に相談したいんだ」

「何でしょうか魔王さま」

ここまでクラスメイトを何人も殺してきている以上、現世に帰っても犯罪者として

殺人鬼として逮捕され、死刑、良くても終身刑となるのは目に見えている。


ならば


「この世界で最強の魔王を目指したいと思う」

「魔王さまに従います」「わたしも同じです」

「リナは?」

「わたしは・・・出来る事なら現世に戻りたいと思う。だけど・・・」

彼女もすでに幾人も殺しているし、戻ったところで刑務所行きは確定。

メレイやミリアと違って、彼女は理子と同じ人類だし・・・でも彼女は


「魔王とともに・・・」

その表情はある種の悲壮感、決意が見えていたのを理子は見逃さなかった。

「理子。あなたももう戻る気はないのね」

「ない」

「よく言ってくれたリナ!では私と一緒に最強を目指そうではないか!」

「私はもう身も心も魔王にすべてを捧げた。

 であるならば魔王の目指す道を進みたい。それが部下としての心構えだと考える」

「リナさん、あなたはすごい!現世に帰ろうと思えば帰れるのに、

 この世界でトップ を目指すんですね」


さしあたってやるべき事は。

「まずはこの洞窟を出て外の世界を見てみませんか?」

「そうだね、メレイは外に出た事あるの?」

「ないです」

「ミリアは?」

「私もございません」

「リナも私もないとなれば、様子を見に行かないとダメね」

ダークエルフに行ってもらおうかと考えたけれど

「彼女たちは人間に敵愾心を持っています。見つけたら殺してしまうかもしれません

 ならば召喚しましょう」

と言ってメレイが召喚したのがゴブリンだった。

「あ、でもこのゴブリンは結構知能が有るんですよ。知らないと思いますが」

「そうなの?」

現われた10人のゴブリンは、皮膚の色こそ緑色だが、人間とあまり変わりがない。

「お前たち、これから外の世界を偵察に行ってもらう」

「はい」普通に返事をしたのだ。

「万が一の事もあるから、模擬戦闘訓練を行う。一人づつ、このダンピールと戦え!

 ただし殺してはならない。いいか!」「解りました!」


10人のゴブリンがダンピールと戦闘訓練を行っている間。


「ゴブリンがもたらした情報をもとに、戦略を練って行こう。

 その情報とメレイの頭脳がカギだ。たのむぞメレイ」

「承知いたしました魔王さま」


「理子、私は何をすればいい」

「リナは戦闘隊長を命ずる」

「承知した。出来る限りの力を尽くそう!」

近接戦闘部隊として訓練中のゴブリンを率いる部隊長としてリナを

遠距離射撃部隊に8人のダークエルフに。部隊長としてクロエを

それぞれ任命した理子はリコと名を変えた。


「あと、例えば我々の手に落ちた人間たちを洗脳して

 力になるように洗脳するために魔術師たちを召喚しても良いですか?」

「メレイに任せる」

「有難き幸せ。では」


メレイが召喚した魔術師たち黒魔術を駆使するジャミーをトップに据えた。



戦闘訓練を終えたゴブリンたち。

「魔王さま、この者どもの戦闘力はなかなか高いと存ずる」

ダンピールのマリーナが報告する。

「解った。ではマリーナはゴブリンたちを率いて近隣の様子を探ってくれ」

「承知しました魔王さま。では行ってまいります」

「くれぐれも気を付けてくれよ」

「有難きお言葉痛み入ります」


マリーナが5人のゴブリンを率いて出発していった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


洞窟を出る偵察隊


「眩しいくらい明るいな。では行くぞ」「はっ」

見渡す限り、緑の大地。遠くには山々がそびえ、大地の中には青く澄んだ川が見え

長閑な光景が広がっている。

「あの集落へ行ってみよう」

前方左手に小さな集落があるのが見えた。


森の中の小道を降りていくと・・・小さな集落がある。

遠目に観察していると「人数はどの位だと思う?」「100人くらいですかね?」

「いやもう少しいそうに見えますよ」

ところが

甲冑を身に着けた騎士の姿があった。

「もうすこし近寄ってみよう。気づかれるなよ」「解りました」


「騎士団の分遣隊みたいなのがあるようだな」

「そのようですね。私が近くに行ってみてみましょうか?」

「気を付けろよ」「了解!」


一人のゴブリンが分遣隊のような建物に近寄ってみている。

集落の様子をもう少し近寄ってみてみると・・・

「この集落はやはり100人ぐらいだな、そうすると分遣隊は多くて5名か」

クロエが思った通り、戻ってきたゴブリンは騎士は4名いるとのことだ。

「やはり・・・」

「では戻るぞ!」「はっ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ただいま戻りました」

「ご苦労だったクロエ。で、どうだったのだ?」

「はっ!ここから5キロほど離れたところに4名の騎士が駐屯する集落が有ります

 人数はおよそ100人。この規模ならすぐに制圧できるかと思われます」

「わかったクロエ、下がって休め!」

「はっ!」


「メレイどう思う?」

「まずは腕試しに、その集落を制圧してみては如何でしょう」

「解った。ではメレイは制圧作戦を策定してくれるか?」

「承知しました。魔王さま。早速取り掛かります」

「頼む」


現世に戻れたとしても、身の置き所が無い自分にとって、この世界はとてつもなく

居心地が良いところに思われた。それはリナも同じようだった・


「リコはこの世界をどうしたいと思うのだ?」

「出来る限り自分の思うままに出来る世界にしたいと思う」

「なるほど、具体的には」

「魔族、人間、エルフ、など、どの種族であれ互いを尊重し合う世界にしたい

 イジメや他人への差別のない世界をと思っているが、リナは」

「まったく同感だ。差別は一番人間の悪いところが出るものだ。それが無ければ

 どんなに住みよい環境になるか。この世界も出来る限りそうしたいものだ」


やがて

「魔王さま、これを」

メレイが持って来たのは【ブーランジュ村制圧作戦】と書かれた書類。

「あの集落はブーランジュ村って言うのかい?メレイ」

「そうだよ?名前も知らないで行ったの?クロエ」


チッとクロエが口を鳴らす。構わず話を進めるメレイ。

「今回は夜襲をかけます」

「白昼堂々、その集落を制圧することは出来ないのか?」

「今の戦力を総合的に考えれば不可能ではありませんし、むしろ100%成功です」

「ならばなぜ夜襲なのだ?」

メレイは絶対勝てるのは明白だから、今のうちにいろいろなシチュエーションを

体験させておきたいというのだ。

「確かに一理あるな。リナ・クロエ。キミたちはどうだ?夜襲出来ると思うか?」

「魔王さまの指示に従います」

「リナは」

「命じられれば全力で戦うのみ」

リナの力強い言葉に勇気づけられた近接戦闘部隊は皆、顔つきが変わった。


「ジャミーは?」

「はっ!私共には異論はございません。魔王さまのご指示に従います」

「よし!では今夜、ブーランジュ村を制圧する。出来る限り騎士団は生け捕りに。

 住民は一カ所に集めて魔法をかけ、私たちの配下になるように仕向けるのだ!」



「はっ!魔王さまのために!皆のために!全力を尽くすことを誓います!」


「リナ。死なないでくれよ」

「有難きお言葉!痛み入る」


リナの号令一下、全部隊が出動していった。


「メレイ、大丈夫だな?」

「まったく問題ありません。すぐに良き知らせが入りましょう」

「ミリアは?」

「リナさんとクロエさんが居れば直ぐに片付くと思います。吉報を待ちましょう」


そして・・・







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