Episode7
王国の野望①欲深い男たち
デレンマレーノ王国ゲルハルト国王。
即位しアバンツオとの連合軍により宿敵ともいえるコレルハウト帝国を滅亡させ
国内経済を活性化させた彼は、いまや代わりの利かない人物となっていた。
「ミンタシアとの交渉はどうなっている?」
「はぁ、なかなか進んでいません。向こうの要求が大きいのです」
「併合するのであれば、賠償金を出せという、あれだな」
「はい。自分たちで獲得した領土を差し出すんだから賠償金は当然だと言って
聞きません」
(らちが明かないのであれば軍事力で屈服させるか・・・いやそれは・・・)
「陛下、向こうがわのトップと直接会談を持っては如何かと」
「それもいいのだが・・・」
彼、ゲルハルト国王はミンタシア独立軍のトップがイスマエル、否ウルリック、
つまり実の兄であることは、いまだ知らないのだ。
「今少し交渉を進めよ。なんとか向こうの譲歩を引き出すのだ」
「かしこまりました」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「昨日もさ、あのデレンマレーノ王国から連絡あったぞ。併合のはなし」
「ウチらがやっと帝国を排除できたと思ったら、これかよ・・だから王族ってさ」
「なぁイスマエル、どうしたらいい?」
「どうすっかなぁ・・・」
「アバンツオ王国にアポ取ってみない?」
「なんでまた?」
「あそこも、ウチらと同じ。王国から独立したじゃんよ。だからさ」
「そうだなぁ・・・じゃあ、誰か使者に行ってくれないか?」
イスマエルとユリア、シャルロット、ステファン、ジャンの5人が使者として
アバンツオ王国へ向かうことになったのだが・・・
「じゃあ馬車で行こう。結構距離があるしさ」
路線馬車に乗ること2日間。
「歩いたら4日以上はかかるかもな」
「だね。やっぱ馬車は楽だわ・・・」
馬車は王都アバンツオの中心にある大教会の前で止まった。
「やっと着いたか。すごい街だなぁ・・・」
壮麗な教会、豪壮を絵にかいたかのような王宮。
緑の並木が美しい大通りには多数の商店が軒を連ね、
老若男女がきちっとした衣装をきて歩いている。
「ミンタシアとは別世界だな・・・」
「そうだね・・・こんなところに住みたいわ」
「そう言えば国王に会えるのかな?アポとか取った?」
「無い!」
「無いじゃねえよ!どうすんの、ここ来てさ」
「まぁまぁとにかく、王宮行ってみようや」
壮麗かつ豪壮な王宮に着く一行。
「イスマエル、お前行って来いよ。あそこに詰所あるじゃん。なんか分るだろ?」
「そうだな。行ってくるわ」
「すみません、国王さまに会えませんかね」
「ではこの書類を書いてください。すぐ会えるとは限りません。
国王陛下はお忙しいのですよ。ではこれを」
「行ってきた」
「どうだった?」
「何か書類書いてくれって。会えるかどうかは分らないけどってさ」
「でも会えないわけではないんでしょ?」「そう」
なんだかこまごました書類だなぁと思いつつ
近くのカフェで無い頭をフル稼働させ書類を書く5人。
「これでいいかなぁ・・・」
「じゃ、行ってみるわ」
「あの、この書類を・・・」
「ここに書いてある5人の方は?」
「あ、この人たちです」
詰所の衛兵は、じっと5人の顔を見て「身分を証明するものありますか?」
「身分証明?」
「あなたが本当に申請した人かどうか確認するのですが?」
「おい、どうする?そんなものあるか?」
「無いなぁ・・・あ!シャルロットはギルドメンバーだったよな?」
「そうだけど。あれか?ギルド登録証のこと?ならステファンも持ってるよな?」
「ああ」
「あの、これでいいですかね?」
二人のギルド登録証を見せると
「ああミンタシアから来たんですか?どういう理由で?他国の方は国王さまに
会うことはできません」
「ええーーー」
「それがこの国の法律で決まってますんで」
「そ、そうですか・・・」がっくりうなだれる一行。
「ただ御用の内容如何によっては会えなくもありません。とりあえず、こちらへ」
詰所に隣接する応接間に通された5人。
やがて
金髪のロングヘアで黒い軍服を着用した女性士官がやって来た。
「私は王宮警護隊のアンナ・クラフトと申します。
ミンタシアから来られたとのことですが、どういったご用件で陛下に面会を?」
「おい、これ言っていいのか?」
「いいよ。そのために来たんだし」
「そうだよ。イスマエルは弁が立つからさ、さぁ話してみ」
揉める5人
「どうされました?」
王宮護衛隊のアンナ・クラフト隊長が重ねて聞く。
「えーっと。あの私たちはミンタシア独立軍の者でして・・・」
「ああ、噂はかねがね聞いています。色々大変でしたよね?」
「はぁ、ええ、まぁそうなんですが」
「ちょっとイスマエル、もうすこしはっきり喋りなよ」
「だって・・・」
「あの私、ユリア・シューマンといいます。
ミンタシアに対してデレンマレーノ王国の国王から、嫌がらせされています」
「ええ、それで」
「デレンマレーノ王国に合併?併合されろっていうことを・・・」
「それは聞き捨てならないですね。すぐに国王陛下へお伝えしますが
しばらくお時間を頂きますので、一度王宮の外にあるホテルのロビーで
お待ちいただきたい。よろしいですか?」
「はい」
「アンナ・クラフト少尉入ります」
「どうしました?」
「ただいま、詰所へミンタシア独立軍のメンバーが来られまして」
「え?ミンタシアの方が?」
「はっ!それが・・・・」
「そうだったのですね。デレンマレーノが併合を強要していると言う事ですか?」
かねがねそのような噂があるとは聞いていたし、コレルハウト帝国を滅亡させた
戦いの時も、クロエ率いる第2軍を救援に差し向けたのはクララ率いる第7軍が
参戦しているからに他ならない。
「それでミンタシア側はどうしたいのです?」
「はい、コレルハウト帝国は滅亡し、我々のミンタシアとデレンマレーノ王国が
その遺領を引き継ぎました。私たちは11の州を実効支配しています。
デレンマレーノは自分たちの父祖伝来の地を取り戻しました。
それについては何も問題はないと思っています」
「はい。それで」
「彼らは帝国領でも実入りのいいところをすべてわが領土にしてしまいました。
父祖伝来の地だけならまだしも、まったく無関係の土地まで強欲に奪い取り
それにもかかわらず、我々の領土欲しさに併合、合併を強要するように
なりました」
「元帥殿、このような場合どうすれば良いですか?」
「デレンマレーノの国王と、畏れ多いことながら女王陛下、ミンタシアのトップで
会談を持っては如何でしょう?その結果次第で次を考えては?」
「あの・・・よろしいですか?」
「はい」
「私はミンタシア独立軍のトップを務めますイスマエル・チャップマンです
その会談が行われるのであれば、私とここにいる5人が出席するのは
いけませんか?」
「いいと思いますよ。私たちも随行者がいますからね」
「あなた方としては、デレンマレーノ王国に併合されるのは無理な相談?ですか」
「はい。われわれは独力で地域から帝国軍を排除し、領土としました。
だからもし併合を強要するのであれば賠償金を取りたい」
「まぁそう考えるのは当然と言えば当然」
「メレイもそう思うか?」
「はい、元帥殿。やっと実力で獲得した土地を、俺たちと一緒になれと言われても
はいそうですか。一緒にやりましょうとはなりません」
「解りました。
ではデレンマレーノ王国の国王に会いましょう。その時は来てくれますね」
シャリエ女王がミンタシアの5人に問いかけると「もちろん行きます」
「私が手紙を書きます。
その間、元帥殿、メレイはかの王国との交渉が決裂した場合のことを
考えておいてください。平穏にすめば越したことはありませんが」
「ミンタシアの方々は、しばらくアバンツオに留まってください。
いつデレンマレーノ王国へ行くか、今のところは分りませんので」
美しく聡明な女王の言葉に、「解りました。お任せします」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あーヒマね」
「それな。ヒマだねぇ・・・なんかないかな?」
一軍を率いる身にもかかわらず、のんびりした毎日を送っている
ミチルとシャーロットのもとへ「おお!クラッちじゃん!」
クララがナライ公国からやってきていた。女王の二人の子女を連れて。
「マリレーヌとジョルダンもいっしょかよ!」
「はい!教官殿!」
「ここでは教官はなしよwww」
「実はね・・・」
「ん?どうしたん?」
「デレンマレーノに不穏な動きがあるらしいんよね」
「誰に聞いたの?クララ」
「それは言えない。言えばその人に危険が及ぶから」
「解った、それは聞かない。で具体的なことは分るのかい?」
「今の国王を排除して自ら国王の座に着こうとする一派がいるらしいんだよね」
「おやおや。。。そんな事になってたんだ・・・」
「まだ噂の段階だからね。誰にも言っちゃだめよ」
「おう、任せとけ。口の堅さはこの大陸一だし」
「そんなの聞いたことないんだけどなぁ~~~」
「シャルは黙って!」
王宮の中の広場で二人の子女を遊ばせている教官二人。
「でもさ、そんなことになったら、こっちも被害があるんじゃね?」
「だね。あり得るよ。巻き込まれてとかさ」
「なんか、嫌な予感がしてんだけど」
「まぁね、ミチルの予感は当たるし」
「当たんない方に賭けようや」
「ここで賭けかよwww」
二人の予感は悪い方に動き始めていた。
完
勇者よ!英雄よ!私の前にひれ伏すのだ! 利根川藤代 @83012086
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