アバンツオ州侵攻作戦⑦州都へ突入す
「おい、聞いたか?この街が魔王軍に制圧されるとよ」
「ホントか?俺たちどうなるんだ?」
「来る前に逃げた方がよかんべ」
「だな、家族ともどもにげっぺよ」
「でもよ、ここの総督って奴はとんでもねぇよなぁ」
「ああそいつらいなくなって欲しいんだよなぁ・・・街の恥だもの」
「んだよなぁ・・・おいらもそう思うだ。借金のかたに子供を売り飛ばすとか
ひでぇ奴がいるもんだよなぁ」
魔王軍のニンジャたちが広めたデマが相当広がっていたから。
数日後から4カ所の城門には荷物をまとめた住民たちが殺到し始めた。
みな、この街から逃げ出そうというのだ。
「おい!そこのお前、これからどこへ行くのだ?」
「はい近郷の親類の家へ避難します」
「避難?」
「はい魔王軍が接近していると言うことで」
徐々に街から人の姿が減って来、通りを歩く人も目に見えて減っていた。
「魔王さま、そろそろ機は熟したかと」ニンジャの一人、シンイチ・チバ。
「魔王さま!こちらミチル隊。
ただいま西門から3キロ地点に接近!まもなく2キロの指示地点に到着予定!」
「リナ隊はただいま正門から2キロ地点に着陣しております!」
「クロエ隊も北門から2キロ地点を目前にしております」
州都アバンツオを魔王軍が着実に包囲中。
「遅くなりました魔王さま!ただいま南門2キロ地点に着陣いたしました」
チェンバレン隊が予定よりも若干遅れて到着。
「全軍に告ぐ!
明日の夜明けを期して州都アバンツオ攻略作戦を決行する!
一般住民には手を出すな!しかし刃向かうものは斬って捨てよ!
騎士団は全員殲滅せよ!総督とその家族は生け捕りにするのだ!」
「正義は我々にある!住民の為!我らの名誉のため!死に物狂いで戦うのだ!!」
「おおおおおおおーーーーーーーー!!!!!!!!」
夜の闇でも、その黒々とした威容を誇る州都アバンツオ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「閣下、なにも臆することはありません。
我々騎士団が魔王軍など一蹴して、ご覧に入れましょうぞ!」
「たのむぞ!」
と言いつつ総督閣下とその家族、取り巻き連中はいつ脱出するかを考えていたのだ。
「1階にある井戸。ここは外への連絡通路の入り口になっていて、西門へ出るように
作られていますから、問題はありません」
「騎士団なぞ見捨てればよいのです」ひどい連中がいたものだ・・・
自分たちを守ろうという騎士団まで見殺しにするなど鬼畜の所業である。
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東の空がしらじらと明るくなってきた。
となりに立っているシャーロットを共に夜の明けるのを見つめているミチル。
「きれいだね」
「だね、夜明けってこんなにきれいなんだね」
「明日はこの光景が見られるのかな?」
「どういうこと?」
「もし私が死んだら・・・」
「そんなことねぇって!あたしがいるだろ?絶対お前を守る!安心しろ!」
「ミチル・・・ありがとう」
「解ったら泣くな!きれいなお顔が台無しだぜ!」
深紅の鎧とマントを着用した二人。
魔道具を通じ「全軍突入!」を知らせてきた。
「行くぞ!みんな!ウチらに付いて来い!」「おー!」
馬を駆って西門へ殺到するミチル隊。
ドン!ドン!バキッ・・・バキバキバキ・・・
大槌を持った兵士が西門を破り「お前たちに教えたことを覆う存分発揮せよ!」
わぁぁぁぁぁ~~~~っと鬨の声を上げて西門から城内へ突入。
若干の守備隊がいるだけだったが、思いのほか激しく抵抗してきた。
新隊員の何人かが腕を足を斬られるケガをしているのを、
従軍している看護兵が直ちに駆け付け手当をしている。
1時間ほど戦うと、その場は完全に魔王軍のものとなった。
「西門は制圧した!次の指示を待つ!」
「よくやったミチル大尉!シャーロット大尉!その場を離れるな!
出てくる者が居れば斬れ!総督と思われる者がいたら捕獲せよ!」「了解!」
「お前たち、よく頑張ったぞ!でも戦いは始まったばかりだ。
次の指示があるまでこの場で待機せよ!」「了解」
すると・・・
王宮の方から、でっぷりと肥えた男が貧乏くさい恰好で歩いてきた。
「なぁアイツなんか、怪しくね?」
「だよねぇ。怪しいよね・・・おい!そこの男、止まれ!」
「へぇわたしですかい?」
「お前だ?何者?どこへ行く!」
「この近くの畑に行くところでございます」
怪しい・・・ジェルヴェと言う新兵が、
「隊長!この男の手を見てください。畑仕事をするような手じゃないっす。これは」
「マジで?そう言われればそうね・・・レアンドル!ちょっと来て!」
「はい!隊長。なんでしょう」
「このおっさんを透視してくれる?レアンドルは透視魔術出来るっしょ?」「ええ」
「とりま頼むよ」
「OKです!」
レアンドルが両の手をかざし、「この男の真の姿を見せよ!」と唱えると
彼の頭の中に男が短剣を隠し持っていることが浮かんできた。
さらに、総督の紋章入りの上半身だけの鎧まで着ていたのだ。
「隊長!この男こそ!あの我らが憎むべき総督です!」
「マジ?じゃあやるしかないんじゃね?」
「だね、やっちゃおうよ!」
男へ剣を向け正対する二人に、
「バレちゃあしょうがねえな。俺も舐められたもんだな女の子の相手をするとかよ」
「ちょっと静かにしてくんね?」
「うるさいんだけど!」
ジリジリと間を詰めるシャーロット。
総督とシャーロットの一騎打ちが始まった。カンカンキンキンと剣がぶつかり合う音
一瞬のスキを突かれたシャーロットの右わき腹を男の剣が切り裂いた!
うっ・・・赤い血が勢いよく流れ出る。
「シャーロット・・・!
この野郎!てめぇ許さねぇ!看護兵!シャーロット大尉の手当てを!」
「はっ!お任せください!」
「許さない?どうしてくれんのかな?お嬢ちゃん」
「バカにしてんのか?ぜってー許さねぇからな!くらえ!」
逆に総督が突っ込んでくるところ・・・一瞬交わして背後から斬りつけた。
ぎゃっ!
死に物狂いで剣を振り回す総督だが、ミチルはヒラリヒラリと交わしていき、
上段に構えて剣を振り下ろそうとした瞬間、
(今だ!)
剣で左足を斬りつける
うっ・・・男はドッと斃れた。
「くそ!煮るなり焼くなり好きにしろ!」
「こいつを縄でぐるぐる巻きに!あの大木に括りつけろ!」「はっ!」
「総督を生け捕った!」
その知らせはすぐに魔王リコにも届いた。
「メレイ!総督を確保したぞ!」
「そうですか?さすがミチル隊長ですね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
正門の前ではリナ隊が待機している。
「ではこれより、正門から城内へ突入する。
住民の為、われらの名誉のため、一人一人が全力を尽くすことを希望する!!」
「おおおおおおおーーーーーーーー!!!!!!!!」
正門の上からは守備隊騎士団の矢が雨の様に降ってくるのを盾で防ぎ、門を破壊する
ようやく門が開けられると、騎士団が待ってました!とばかりにリナ隊に襲い掛かる
「進め!怯むな!蹴散らせ!」馬上で叱咤激励のリナ。
魔王軍のアタッカー、ゴブリンナイトが騎士団と激闘を繰り広げている。
だが魔王軍最強のリナ隊の猛攻のまえに、さしもの騎士団も徐々に後退していく・・
「まずい!退却!退却だ!」
退却していく騎士団を、ゴブリンナイトが追撃。
その背後からはアーチャーの【アローレイン】大量の矢が降り注ぐ。
ドッ!
グサッ!
ぎゃぁぁぁ
正門守備隊が半減し、魔王軍にもけが人が続出する激戦。
だがそれにも負けず前進していくリナ隊。
下馬し、みずから漆黒の大剣をふるって騎士たちを斬り伏せていく・・・
「リナ!キミは指揮官だ。馬上から指揮すればよい!」
「申し訳ありません!でもこの様子を見ておりますと血が騒ぎます・・・」
突入半日で州都アバンツオの東半分を制圧した魔王軍。
クロエ隊は北から侵入し、政庁横の州騎士団の目の前まで攻め込んでいた。
騎士団陥落は時間の問題だったが、この時、すでに総督は政庁から逃げ出していた。
その一方、南門から侵入を開始したチェンバレン隊。
ここの守備隊はなかなか屈強の者どもが集まっていた。
「おい!魔王軍に人間がいるぞ!やっちまえ!」
激しく抵抗する守備隊のまえに、進まない。
「ええい!何をしているのだ先陣は!俺が行く!付いて来い!」
チェンバレンは少数の精鋭を率いて自ら先頭へ。
「おまえか?人間なのに魔王軍にいるって奴は!裏切り者!この俺が相手だ!」
チェンバレンの前に立つのは、彼よりも大柄な男だった。「行くぞ!」
ガン!
くっ・・・・くそっ!・・・・・・こいつは・・・・・・・・・
大きな剣を振り下ろす男。
それを自身の剣で食い止めるものの、じりじり追いつめられるチェンバレン。
「隊長!」
「来るな!お前らの相手になる奴じゃない!」
「しかし!」部下たちは、ただ黙って見つめるしかない。
一騎打ちはしばらく続く・・・
その結末は・・・
完
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