戦いの余波②王国軍との激戦の末に
アバンツオ州を制圧し【アバンツオ公国】と名を変え、
魔王軍は【アバンツオ公国軍】とすると、間髪入れず王国騎士団が攻めてくるとの
情報が入ってきた。
「クロエ!リナ!チェンバレン!国境検問所を封鎖し、防衛線を構築せよ!」
クロエ隊は北、リナ隊は西正面、チェンバレン隊は南にそれぞれ布陣、
公国首都であるアバンツオにはミチル・シャーロット隊が戦闘態勢を取り布陣中
防衛線を構築して4日後
王国騎士団が西正面に現れたが、100名程度の小部隊が進軍してきたのみ
「ほかの防衛線で王国騎士団の接近はあるか?」「ありません」「こちらも」
国境線を超えてアバンツオ公国領に侵入してきた小部隊をリナ隊が迎撃!
「アンドレア大尉!ミッチェル大尉!君たちの部隊だけで対応できるはずだ。
すぐに撃退せよ。生け捕りにできるものがあれば捕らえよ!」
「はっ!ではこれより!」
「たのむぞ!」
二人の大尉がそれぞれ部隊を率いて現地に向かうと・・・
王国騎士団が国境線を越え、100名程度の小部隊が野営しているのを発見した。
「あそこか。俺たちの実力を甘く見ているな・・・よし一気に踏みつぶせ!」
「突撃!」
鬨の声を上げて野営地に突進するアバンツオ軍。
野営していた侵略部隊とたちまち激しい白兵戦となったが・・・
ぎゃっ!
あっ!
うわぁぁぁぁぁ!!!!!
退却!下がれ!
「ったく!これが王国騎士団かよ!口ほどもない連中だ!」
激闘1時間ほどで侵略部隊を制圧し、二人の捕虜を確保し、陣地へ連行する。
「アバンツオ軍を甘く見ていたようだな!貴様たちは」
「ふっ・・・俺たちはまだ先遣隊だよ!この後強大な本隊が来ることになってる」
「その時まで首を洗って待っていろ!王国万歳!」
二人は舌を嚙み切って自決した。
「騎士団本隊がこちらへ向かっている?」
「そのようです。捕虜とした二人が証言しました。強大な本隊とか」
リナ・マツモト大佐は考えた。
いくらアバンツオ公国軍が強力といっても、苦しい戦いになることは必至だ。
(リコに知らせねば)
魔道具を使って連絡すると。
「わかった、戦略を練りなおす。十分に警戒するように」「心得た!」
リコは参謀長メレイとともに戦略を再検討していた。
「王国騎士団はどのくらいの戦力か?」「およそ全体で10万ほど」
「全部が来るとは思えない。半分としても5万・・・多いな・・・」
「サーミユとマルリーチと連携してみてはいかがかと」
「あちらも州内を安定化させるだけで手いっぱいだと思うぞ
そう簡単には援軍や連携はむつかしいと考えるが」
「まずは連絡だけでも」「わかったメレイ頼む」「心得ました」
「あとは索敵を十分行うように指示せよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アンドレア大尉が10名ほどの兵士をつれ、国境を越え、王国領内へ侵入し索敵中。
「大尉殿!あそこに小屋があります。そこから監視しましょう」
「お!いい具合に建っているな。よしそうしよう」
公国から王国首都へ向かう道は、この街道一本しかない。
小屋に潜むこと2日。
王国方面から10000人を超える大部隊が進んでくるのを発見した。
「早く連絡しろ!魔道具を使え!」
「王国軍の10000人近い大部隊がアバンツオに向かって進軍中!」
「ついに来たか!それでは迎撃だ!クロエ大佐の第2軍からも援軍が来ている。
だが戦いの主力は我々だ!公国軍は十分強力である!
ひと時たりとも気を抜くな!」
「おおおおお!!!!!」
「リコどのへ連絡だ!これより王国軍との戦闘に入ると!」「はっ!」
街道沿いの小高い丘の上に布陣したリナ・マツモト大佐率いる第1軍。
(来るなら来い!徹底的につぶしてやる!!)
次の日
街道沿いに伏せていた斥候部隊から、まもなく接触との通報が入ると
「全軍に告ぐ!いよいよ王国軍との戦闘に入る!正義は我々にこそある!
王国軍を一歩たりとも領内に入れるな!国境の外で撃破するのだ!」
リナは馬上で黒いマントをひるがえし漆黒の大剣を引き抜き、
「いざ!進め!アバンツオ公国軍の強さを見せつけよ!」
「おおおおおおーーーーーーーー!!!!!!」
王国軍が国境を越えた瞬間。
「全軍突撃!」と号令がかかると同時に、一斉に丘を駆け下り王国軍に襲い掛かる
不意を突かれた形の王国軍は、たちまち総崩れ。
だが屈強な一部隊が激しく抵抗している。
カンカン・・・キンカン・・ガン
白兵戦が展開される中、背後からは長弓が王国軍に降り注ぐ・・
ぎゃぁぁ
ドサッ!
ばさっ!
ぐわぁぁぁぁぁぁ
王国軍兵士の悲鳴が上がる戦場。
しかし公国軍にも戦死者が出るほどの激戦も終わりの時が来た。
「これまでだ・・・
私は王国軍アバンツオ派遣軍司令官アントン・フィッシャー大佐と申します。
私の命と引き換えに、残りの兵士たちをお救い下さいませんか?」
「承知しました。私はリナ・マツモト大佐、アバンツオ軍第1軍司令官です。
お話の向きはわかりました。残りの兵士は引き渡して頂きましょう。
フィッシャー大佐。あなたも同行していただきます」
「わたくしもですか?それは私の真意ではありません。ここで死を・・・」
「なりません。あなたは高い見識と博識をお持ちの方とお見受けします。
ぜひ我々の力になって頂きたいと考えます」
「それは・・・わかりました。とりあえず、部下の事もありますから同行します。
ですが・・・」
リナ・マツモト大佐の後ろを護衛兵とともに歩くアントン・フィッシャー大佐は
生き残った2名の兵士と連行されていった。
その後もクロエ・ルメール大佐率いる第2軍もトレントン・チェンバレン大佐率いる
第3軍にも若干の小競り合いがあったものの、すべて撃退しアバンツオ公国軍の
強さを見せつけた。
連行されたフィッシャー大佐は、
首都アバンツオの大公官邸でリコ大公に接見していた。
「これからあなたは私たちの国造りに働いていただきたい。
あなたの高い見識と博識は私たちに必要です。あなたを国家顧問として迎えたい
のですが如何でしょうか?」
「私は戦場で散ることこそ軍人の本望と考えておりました。
ですが今回、あなた様とお会いし、そのお気持ちをお伺いし私のような者でも
このような待遇を賜ることは身に余る光栄なこと。
老い先短い身ではありますが、このアントン・フィッシャー、この身を終生、
あなたさまに捧げましょうぞ!」
「かたじけなく存じますぞ!フィッシャー殿、今後はこのメレイをあなたのそばに
置きます。まだ若い身ですのでぶしつけな面もあろうと思いますが、ご容赦を
あなたの見識、博識をこのメレイに授けて下さらぬか」
「フィッシャー殿、私からもお願いいたします。どうかあなたさまの知識を
このわたしに授けてくださいませ!よろしくお願いいたします」
「承知しましたメレイ殿。これからあなたをわが子同様、お教えいたしましょう」
デレンマレーノ王国軍を撃退したアバンツオ公国。
それまで以上に人が集ま市場は活気に満ち、農業生産も大幅に向上し、職人たちは
持ち前の技術力で多彩な工芸品を王国や隣国に売りに出していた。
そこには隣の州から逃げてきたダハール族も加わり仕事に精を出していたのだ。
「いやぁここへ逃れてきて良かったよ。
こんな素晴らしい領主さまがいるんだしさ、あんたらは幸せ者だよ」
「いやいやあんた達が来てくれたおかげだって。ありがたいこったよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アバンツオ公国軍がデレンマレーノ王国軍を撃退した情報はすぐに
マルリーチ、サーミユ両州にも伝わったのだが・・・
「寝返った騎士団もいつ反旗を翻すかわかりませんね」
「それはそうなんだよね。どうしたらいい?キャンベル殿」
「困りましたね、我々の部隊にも騎士団から寝返った連中がいますんでね」
魔道具を使って連絡をしているが、魔力をついつい使いすぎて疲れ果ててしまう。
ドロシーのもとへ、ある知らせが入ってきた。
【王国軍が大部隊をサーミユ州へ差し向けて進軍中!】
「これはとんでもないことになった・・・」
「王国軍がどれくらいの規模かわからないけど、大部隊となれば1000人単位。
われらの部隊だけでは対処しきれない・・・」
サーミユ、マルリーチの反乱軍を合わせても500人に満たない小所帯では・・・
「これはまずいですぞ!ドロシー殿!」
「リコ殿に援軍を依頼しましょう」
「あちらも王国軍を撃退したばかり、それほどの余力があるかどうか・・・」
「聞くだけ聞いてみましょう」
リコ率いるアバンツオ公国へ援軍を頼むしかないと判断した二人の反乱軍指揮官
「わかりました、何とかしましょう」
「メレイ、クロエの第2軍を援軍として差し向けたいと思うがどうか?」
「リナ大佐殿の第1軍はさきの王国軍との激戦を制しておりますゆえ、今しばらくは
休息していただくことが肝要かと」
「私もそう思う。ではクロエ大佐へ援軍として出発するように指示せよ」
「は!心得ましてございます」
完
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